祖父の葬儀で幼馴染から聞かされた話は、祖父に纏わる秘密だった。かつて戦時下の中国で婚約までしていたという祖父。更に、この家には幽霊がいるという。紫陽花に彩られたしっとりした幽霊譚です。当時の中国の様子や用語等が読者を追いていかない程度にちりばめられていて、情景や当時の様子などを浮かび上がらせ、小説としてのストーリーに現実感を与えてくれます。しかし、前半部の辺りが少々冗長で、人によっては苦痛に感じてしまうかも。そこさえ乗り越えれば話が一気に展開し面白くなるので、途中で読み終えるのはもったいない一作です。
祖父の葬儀の夜、主人公の千夏は幼馴染の功から、祖父の秘密を打ち明けられる。それは若い頃の祖父が、戦時中の中国で美しい少女と婚約していたというものだった。そしてその夜、親戚の雛子から、この家には幽霊がいると告げられて……祖父の過去と不可思議な幽霊をめぐる、文学的なホラー小説。全体的にしっとりとした雰囲気が漂い、丁寧な文章に好感が持てます。作者様は戦時下の中国についてしっかりと調べられたのか、怪しくも煌びやかな上海の情景が鮮やかに浮かびました。詳細は伏せますが、今度こそ『彼女』が元気で、幸せであればいいと思います。
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