夜勤というとただ夜にやる仕事で朝になれば帰宅するものである。
この小説に置いての夜勤は生まれた時間でその後の生き方が決まってしまう世界から始まる。
主人公滝本一琉が日々の夜勤をこなす中現れる女性によって自分たちの存在理由などについて静かに明らかになっていく。
文章内にでてくる銃の描写や今ではあまり見かけない言葉の使い方などSFだけでない面白さが特徴的。
個人的な感想として少し読みにくいと思いながらも話の組み立ては面白いです。ただキャラクターそれぞれの魅力をもう少し出してほしかったという点と説明のような文章が長くなりだらだらしてしまっているのが気になってしまいました。
しかしながらもこの話を作り上げるまでに考えられたものはひしひしと感じました。表現として適切かわかりませんが、増改築をした家のようなそんな小説でした。
もっと友浦さんなりの描写などがでて魅力のある作品に期待して応援しています。
この世界には昼生まれと夜生まれが存在し、そしてその生まれた時間の差で大きく人生が変わる。
昼に生まれれば、楽しく未来の可能性なんて無限にあるような暮らしが待っている。
一方夜に生まれれば、たちまち人権などなくなり“夜勤”として死獣と戦う運命を背負わされる。
死獣は毎夜毎夜現れ、激しい戦闘で仲間を失うことなんて当たり前。かといって昼の太陽は有毒で、夜生まれは昼の世界で生きてはいけない。
夜生まれにとっては理不尽で、でもどうしようもない宿命がこの世界にはあった。
主人公はそうした世界に抗い、ある少女との出会いによって世界の謎にも向かっていく。
昼生まれ/夜生まれ という斬新な設定と世界観、その裏付けや戦闘シーンの描写も秀逸な作品だった。
半分の30話まで拝読しての感想です。――導入部、これだけ読者を惹きつける展開はなかなかないと思いました。出産という必死さが加算されており、衝撃的でした。また、昼に生まれるか夜に生まれるかで人生が決まってしまう世界というのも良い意味で強烈でした。使っているお金が違うことや、暮らしぶりそのものが違っており、その対比が忠実に描けていて非常に興味深い。夜生まれである主人公が『何の為に生きる?』と疑問に思うのは、読者も同じことでしょう。それだけ夜生まれは国よって凄惨な待遇を受けているのです。物語の中盤ではヒロインである野々原まひるの謎が次々と判明、くわえて死獣という生命体の正体が掴めます。……日常描写はもちろん、戦闘描写も大変丁寧で、読み応えがあるご作品です。気になられた方はぜひ覗いてみてください。私が自信をもってオススメします。
出産から始まる鮮烈な幕開け、八九式小銃の重み、夜に跋扈する死獣。
息をもつかせぬ展開に引き込まれました。
ある種デスゲームのような雰囲気が漂う序盤ですが、
その後には緻密な日常が描写されます。
夜に生まれた者は夜しか活動できません。
学校へ行っても窓の向こうは真っ暗闇。帰宅すれば、夜明けとともにベッドに潜り込まなければなりません。
どこか不健全な生活は、夜生まれである「夜勤」の歪さを象徴しています。
夜勤は死獣に対する防衛手段でしかなく、一般的な労働による生産性を備えることが出来ません。
ゆえに夜勤と昼生まれの間には埋めがたい格差が存在します。
文化レベルで隔絶しているといっても過言ではありません。
「夜勤」という突拍子もないアイデアを、これらの緻密な設定が後押ししリアリティを醸し出していました。
こうした描写から描き出されるのは主人公の抱く憤りとやるせなさ。
それは死獣への憎しみよりも強く滲み、理不尽な世界への怒りが読者にさえ牙を剥きます。
死獣との戦闘や夜勤の格差社会への怨嗟、或いは若者の群像劇としての魅力も備えた本作ですが、何より印象的なのは、閉塞感への憤りと打破だと感じました。
キャラクターではなく、設定とストーリーに語らせる骨太な作品です。
是非ご一読を。
同じ空間を共有しながら、格差社会や階級社会などというレベルではない、最早分断され二つの世界となった〈昼〉と〈夜〉。夜に生まれ兵役を課せられ〈死獣〉との戦いに明け暮れる若き主人公の鬱屈した視点から、そんな文字通り〈光〉と〈闇〉の世界のやるせない対比が、ある種の諦観を漂わせつつ描かれているのですが、その薄暗い雰囲気が堪らなくいいんです!
ロストテクノロジーの鍵を握る、とある少女との出会いを境に、主人公とその仲間たちは運命を大きく変えるような出来事に直面し、やがて事態は思わぬ方向へ転がっていくのですが、点在していた凡ての謎が一つの線で結ばれたときの衝撃たるや……! この瞬間を未読の方々にも是非味わってもらいたいですね。
因みに自分はずっと委員長推しでしたが、読み終えた今ではすっかり棟方推しであります。その理由は、是非とも最後まで読み進めていただきたく……。
出生した時間が昼か夜かで、人権もその後の人生も決められてしまう世界が舞台です。
夜生まれは制度上だけでなく、身体的にも太陽の下を歩めぬ運命なので、仕方がない部分もありますが、兵役で死獣という化物と戦わされ、命を危険に晒して生きるしかない。
それでも、人々の生活を脅かす化物との戦いや己の職務に誇りを持って生きる夜生まれたちは気高く美しいです。
が、彼らの決意を揺るがす事実が発覚し、夜生まれの少年少女たちは立ち上がる。
終盤の委員長の演説シーンがとにかくかっこいい。強く賢い女の子はそれだけで魅力的なものです。
そして、物語はある意味意外なラストを迎えます。
読みやすく、理不尽で不可思議な世界観に没頭できる良作です。
とにかく最初から最後まで面白い。
昼生まれと夜生まれの差異を端的に見せる冒頭から、夜勤と死獣とのぎりぎりの戦闘シーンへの流れは、悲壮感を感じさせつつひたすら格好いい。
もうこの時点で途中でやめるなんてできなくなりました。
設定が作り込んであり、語り口は説明的でなく、見せ方が非常に巧いです。
火薬の臭いまで漂ってきそうなリアリティがあります。
個人的にいいなと思ったのは、極限状態での戦闘の場面と、とても美味しそうな食事の場面との対比。
とても鮮やかに生と死というものが際立っていました。
夜に生まれたというだけで生き方を縛られる夜勤たち。
謎めいた少女。
ロストテクノロジー。
死獣の正体。
魅力的な要素が次々と登場して、気づいたらクライマックスへ。
どんなラストを迎えるのか終盤まで全く分かりませんでした。
主人公の一琉たちを待ち受ける結末を、ぜひ確かめてみて下さい。
産まれた時間が昼か夜かで、その後の人生が変わってしまう世界。
夜生まれの16歳・滝本一琉は、今日も「夜勤」として、街を襲う「死獣」と戦う。
夜生まれが昼の街で暮らせない理由がはっきり説明されており、その部分は疑問を持たずに読めます。
しかし、昼と夜とでは、文化も、通貨も、人命の価値さえも異なる。
昼の同世代が青春を謳歌しているのに、夜勤は命懸けで戦わねばならない理不尽。
今日は『「夜勤」』、今日は『逢魔が時』と、区切りのいい数話ずつ読み進めていましたが。
研究施設の謎が明かされる辺りから、最後まで一気読みでした。
委員長の演説はカッコいいですね。
日蝕の日のクライマックスシーン、ぜひとも映像で見たい。
昼生まれと夜生まれの、格差を理不尽だと思いながらも、わたしは読んでいても違和感がありませんでした。もし、わたしがこの作品の世界で昼に生まれたら、夜生まれを人間扱いしないだろうと、空恐ろしく思いました。
しっかり作りこまれている世界だからこそ、もしもと自分がと考えられるのだと思います。
タイトルの夜勤という単語にも、いい労働環境をイメージする人は少ないと思いますが、この作品はもっと理不尽で過酷でした。
一度読み出したら止まらなくなるほど、そんな過酷な環境に置かれている少年たちに魅せられます。
なので、まだ読んでいない方は、時間に余裕のあるときに読むことをおすすめします!
生まれる時間で、生きる世界も、空間も、時間も、人権さえも変わってしまう時代。
夜に生まれた主人公は、国の所有物とされ、夜に現れる神出鬼没な『死獣』の討伐のために徴兵され、仲間とともに命をかけさせられる日々。
そんな当たり前に思っていた日常が、ある少女との出会いで変わり始める。
その細部まで丁寧に作りこまれた世界観は、違和感なく読み手をその世界へ引き込みます。思わず、日の光を恐ろしいものだと読み手も感じてしまうほどに。
そして、昼と夜の格差、不平等、夜の住人たちのあまりに酷い環境に憤る主人公は、自ら世界の謎に挑むことを決意します。
クライマックスは、読んでいて度肝を抜かれる方も多いでしょう。
まるで昼間でも夜の闇にいるように鬱屈したものが溜まった現代社会にあって、この作品は胸のすくような希望と勇気を与えてくれる作品なのではないでしょうか。
冒頭、変えようのない残酷な運命の元に生まれる一人の赤子、滝本一琉。彼はその運命を受け入れるかのように『夜勤』の兵士として死獣と戦い続けるが……。
第一話から、その『夜勤』と呼ばれる手に汗握る戦闘が繰り広げられます。これが夜生まれの宿命なのだと叩きつけるシーンであり、第一話で丁寧に描写したのは正解だと思います。
このあとも夜に生まれたゆえの苦悩と劣等感などが、これでもかと描写されるのですが、そんな闇に差し込む光とも言うべき少女、『野々原まひる』が登場して物語は動き出します。
死と隣り合わせの『夜勤』の兵士達。彼らの行き着く未来はいかに――。
しかし、この設定は斬新としか言いようがない。それでいてその設定を生かし切れているところが本作の凄いところです。戦闘を全てひっくるめて『夜勤』と言わせるセンスも好きです。
皆さまも是非本作を読んで有意義な時を過ごしてみませんか(⌒∇⌒)
いや、これは面白かったです。
ベトナム戦争の映画やガンダム、ゲームのガンパレードマーチを思い出しました。少年たちが戦い、時に死を迎える中、何を考えるのかという描写が秀逸でした。特に、ただ夜に生まれただけでなぜ差別を受けるんだ、という設定は、多くの戦争映画で見られる人種差別や、今の日本の正社員と派遣社員の問題をより若い世代にも感じさせられる作りだなと思いました。
この手の設定は火の鳥太陽編などでも見られますが、こうしたタイプの話を現代ラノベ的なキャラを入れる事でうまいことリメイクしていると思います。そしてこうしたテーマはともすると左翼的な話に思われがちですが、人が人として尊重されるべきだという基本的な信念をベースとしていて思想的な偏りを感じさせず、さらに後半は爽快なアクションとしての側面もありました。ラストのあっと驚く展開も見事でした。
そして最後に。
タイトルが素晴らしいです。
私はタイトルは短いほど良いと思っているのですが、短すぎると作品の本質はなかなか伝えられない。そこでどうしても尻込みしてしまう。作品のややダークなイメージを二文字で叩きつけてきたこの度胸は特に絶讃したいです。
隙のない名作です。これはヒットするのではないでしょうか。