「昼」と「夜」。太陽が昇ってから沈み、沈んでからまた昇るまでの時間。これだけで、住む場所も階級も、そして戦いも強いられてしまう世界の中で、懸命に生きるため仲間たちと共に奮闘し続けていた主人公。しかし、何の疑問も抱いていなかった日々は、突然現れた不思議な少女によって崩れ去り始めて……!
少女の記憶、謎の宗教、そして世界の真相……提示されていく様々なキーワードが絡み合う中、やがて物語は幾多もの「昼」も「夜」を抱えた途轍もない真相へと発展していきます。過酷な差別、偏見などのディストピアのような物語ですが、それを彩るのは様々な個性豊か……と言うより、一癖も二癖もありすぎる仲間たち。
果たして、主人公は真っ赤に燃える太陽の光の暖かさを感じる事が出来るのか……壮大なスケールと重厚なストーリーで彩られた、傑作長編です。
死獣とは何なのか、突如現れた少女は誰なのか、そもそも、なぜ夜うまれだけが死獣と戦わなくてはならないのか。
歯切れの良い文章と謎にひきこまれ、一気に読みました。
昼を生きられない不完全な存在として虐げられ迫害される夜生まれの人々。それでも彼らは生き続ける。
「自分で自分を殺すな」
このセリフがとても印象的でした。
登場人物それぞれ、昼と夜に別れた世界に抱く想いがあって、なぜ生きるのかという理由がある。
登場人物の心の糸が複雑に絡み合って、重厚感のある世界を組み上げて行く様は圧巻でした。
未来を物語にした、現代の国取り物語のような、不思議な物語。
希望は多分、使いこなすものなのでしょう。
最高の物語でした。
夜生まれの人間は夜にしか生きられず、昼の世界を渇望する。
外の世界を見てみたいという欲求は、割とよくあるものだと思います。身近なところであれば田舎からの上京とか、映画でも閉鎖社会から抜け出す話がありますよね。
しかしそれを昼と夜で造り上げたという発想と技術が、オリジナリティにあふれていて素晴らしい。
昼の世界に憧れるという少年の思いが、ものすごく共感できると同時に斬新なSF世界のおもしろさを味わうことができました。
でもこちらの作品、おもしろさは設定だけにとどまりません。
その世界に生きる登場人物たちの葛藤こそが、最大の魅力です。
負の集大成である夜の世界にいる自分たちに、生きる意味はあるのか。
悩みながらも魔物と戦い抜いて、全力で生き抜きます。
なぜ全力なのか。
諦めの中に、憧れが残っているからです。
少年はその憧れを、少女との出会いによってどのように形にしていくのか。SF世界、ミリタリーバトル、青春物語……多彩な面から読み応えのある作品だったと、僕は思いました。