第二章
私 ~Here I am~
私は過去に呼ばれたあだ名を思い出す。「真面目ちゃん」「根暗」「普通」「フウカの癖に華がない」「地味」…………散々な呼ばれ方をされてきた。でも性格なんて変えようがないじゃないですか。性格というのは長い年月をかけて早ければ中学生、遅くとも大学生になってやっと形成されるもの。そして一度完成したら簡単には変えられない。人格形成には幼少期の思い出などが影響を受けると言いますが、この話が本当なら私は神様に頼んで今すぐ生まれ変わるかタイムマシーンで幼少期にタイムスリップして本ばかり読んでいた過去の自分を無理矢理外に連れ出すしかないでしょう。それか強い衝撃を脳に与えて不確実な奇跡に期待したり…………まぁ、その、長くなってしまいましたが何を言いたいのかと言いますと、今の私に出来ることは何もない、って事です。
中学時代、私には友達と言える人間はいませんでした。それもそうですよね。私といても面白くもなんともないんですから。でもこの時から私は変わりたい、という感情が芽生え始めて来ていたんだと思います。先程、出来ることは何もないと言いましたが実はあったんです。ええと何て言うんでしたっけ。吐故納新…………ちょっと違うな。クラスメイトが話してたやつ……あ、思い出しました。『高校デビュー』です。私はこの『高校デビュー』をするために、知り合いもいないであろう横浜の進学校を志望しました。親や先生には地元である東京の有名高校にしないかと説得もされましたが私は自分の意思を貫き通しました。幸いにも学校の成績は良かったのでちょっと勉強したらすぐにA判定が出ました。尚更もっとレベルの高い所に行け、と周りの大人に言われましたが、親に「成績上位者は入学金が免除されるから」と言ったら、泣きながら感謝してくれました。家はそれなりに裕福だったのでお金の心配をする必要はありませんでしたが親にとっては「子供が家庭を思ってくれている」という事実だけで充分だったのでしょう。泣きつく両親にちょっとだけ心が痛んだ私ですが、無事に試験もトップ通過して志望校に入学することができました。これで自分を変えられる。今まで被っていた醜い殻を脱ぎ捨て、新しい自分になって飛び立つのだ。そう思っていた私は手のつけようのない愚か者でした。
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