隣の芝生
昔、弟のことで悩んでいた時期に、ネットで自分と同じような境遇の人の話を検索したことがあった。
そこで知ったのは、自分と同じような境遇の人が世の中にはたくさんいるということだ。
周りには相談できないから、知恵袋に質問して解決策を見つけ出そうとする人もいた。
そんな人の話を聞いてると、考えさせられるものがある。
特に印象に残っているのは、障がいを持つ兄弟に暴力を振るわれている人の話。
彼女はそのことに悩み、兄弟に死んでほしいと感じていると話していた。
自分には理解し難いハードな悩みだった。
同じような境遇でも、僕は彼女のように弟から暴力は受けていない。
衝動的に憎みはしても、本気で殺してやりたいと思ったことは一度もない。
だけど考えさせられてしまう。
もしも、自分が彼女の立場ならどう感じていただろうかと。
今のように弟を好きでいられただろうかと。
その当時僕の世界はまだ狭くて、学校でも兄弟の話題を聞いて羨ましく思う機会しかなかった。
そう、隣の芝生の色は常に青かったんだ。
だから衝撃的だった。
自分と同じような境遇でも、自分より苦労している人がいることを知って。
彼女が現在、どのような暮らしをしているかは分からない。
ただ、彼女の経験談を聞いて僕の世界が広がったのは事実。
隣の芝生の色が必ずしも青いわけではないことを、幼い僕はその時初めて知った。
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