手帳
障がいをもつ方は『障がい者手帳』というものを発行できる。
これは障がいをもつ方が、不自由なく様々なサービスや割引、給付を受けることができるようになる、いわばパスポートのようなもの。
身体障がい者は『身体障がい者手帳』
知的障がい者は『療育手帳』
精神障がい者は『精神障がい者保健福祉手帳』
と、それぞれ名称が異なる。
因みに僕の弟は知的障がいなので『療育手帳』を発行している。
これを発行するには、簡単な診断のようなものを受けなければならない。
そして診断の結果、重度の障がいならA、軽度ならBなどの等級に振り分けられる。(県などによって名称は異なる)
そして汚い話、等級が重度である方が手厚いサービスが受けられる。
診断といっても面接試験のようなものらしく、我が家では診断前日に母親が
「できないことは無理してやらなくていいのよ。Aが取れた方が家計的には…ね」
などと冗談交じりに弟に言っていたのを覚えている。
しかし、当の弟は母親が言っていることの意味を全く理解できていない様子でボーッとしている。
普段はキビシイ母親のそんな様子が何だか滑稽で面白かった。
次の日、診断から帰ってきて母親は僕に
「あの子、結構頑張ってて、思ったより色々できちゃうから複雑な気持ちになっちゃったわよ笑。嬉しいんだけど、ここではそんなに頑張らなくてもぇ笑。」
などと自慢気に話してきた。
何だかんだいって等級より、我が子の成長の方を喜んでいる母親の様子は見ていて温かい気持ちにさせられた。
だが、学習能力もなく、他人と会話できない弟が軽度なはずもなく、弟は無事?重度の診断通知をもらってきた。
喜んでいいのかどうか何だか複雑だけど、まぁ何だかんだいって、普段苦労することの方が多いのだから、このぐらいの褒美があってもいいのではないか。
僕は軽い気持ちでそう思うことに決めた。
重度と診断された方がありがたい。
普段は感じないそんな矛盾が、不思議で滑稽に感じた昔の思い出の話。
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