仲間意識
日本国内で知的障がい者の数は70万人以上もいるらしい。
そう考えると、僕の周りの友達にも知らないだけで、障がい者の家族を持っている人が他にもいるかもしれない。
ただ、わざわざ人に言うほどのことでもないし、黙っている人が多いと思う。
僕が小学生の時も友達で障がい者の妹を持っている子はいた。
その子の妹も自閉症だったみたいだけど、僕の弟とは違い話すことはできた。
ただ、やはり言動が普通の子とは少し違っていた。
その友達は学校で妹が話しかけてきても極力無視していたし、妹のことを毛嫌いしているのが何となく伝わってきていた。
まわりは「無視してやるなよ」「ひどい」などと言っていたけど、僕はそうは思わなかった。
なんとなく気持ちは分かるから。
でも、僕からしたら兄弟と普通の会話ができるというだけで羨ましく思えた。
もしも、僕が弟とそれなりに会話ができていたら、勉強の話とか、人生相談とかそういうのができなくても、同じテレビを見て「面白いね」と一緒に笑い、「あの子可愛いよな」とか男兄弟特有の話とかをして盛り上がりたかった。
その友達に弟の話を聞いてもらって、同じ悩みを共有したいと思ったこともあった。
だけど、その友達は妹の名前を出すだけで露骨に嫌な顔をしていたし、なんか傷のなめ合いみたいで恥ずかしくて、僕にはできなかった。
でも何となく、向こうも心の中で、障がい者の弟を持つ僕のことを意識していたような気はする。
前回の話でも言ったけど、なんか変な仲間意識みたいなものがあったのかもしれない。
道徳の授業で「障がい者」について取り上げられて、何だか肩身が狭くてやるせない気持ちになったとき、少し離れた席の彼を見ると、彼は机に顔を伏せて寝ていた。
でも僕には分かった。
『彼は寝たふりをしているんだな。』
『彼もまた僕と同じ気持ちになっているんだろうな。』
そんな一方的かもしれない変な仲間意識が、妙に心地よく感じられたのを僕は不思議と今でも鮮明に覚えている。
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