第14話 天才、現る!
俺は間違いなく天才だと思う。
いままで、誰もが俺を見て、うっとりと眺め、賞賛を浴びせてくれた。
体の美しいフォルム、どっしりと案定した足腰、そして、天を眺めるような高貴な指先。それは、男として、人としての価値が極めて高いという証なのだ。
今日も、俺の評価は高かった。
何人もの人が、俺に価値をつけ、高額な対価を支払っていく。
今のオーナーは、若い男でありながら、繊細な感覚を持っている、なかなか見所のある男だ。だから、俺は、しばらくこの男がオーナーでも良いかと思っている。
最近では、海外でも人気が高いらしく、俺という人間に高い評価をつけているようだ。やはり、わかる人にはわかる。価値のある男はどこへいっても注目されるのだ。
こんな最高の俺だが、ちょっと悩みもある。
それは、俺には到底およばないまでも、それなりに人気の出てきたヤツがいるようだ。当然、俺はそんなこと気にしちゃいないが、多少は、認めてやってもいいと思う。だって、心の器が小さくては、天才などと呼べないだろうから。
俺は自分では動けない。だから、俺の体を固定する器具によって、そのまま運ばれる。たまには自分で動いてみたい気もするが、天才であるこの俺には必要ないだろう。やはり、どっしりと座っているからこそ、俺の魅力が際立っているのだろう。
さて。今日も、俺の天才ぶりを発揮しなければならない。
それが、天才がゆえに、俺に与えられた使命なのだ。
皆が俺を見て、深いため息をつきながら賞賛するのを味わうとしよう。
それでこそ、俺は、天才な『盆栽』なのだから。 おわり
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