第9話 滅びる国

男は、アマゾンの秘境の奥地にいた。


男は、そこに住む原住民から、不思議な生物をわたされた。


その生物は、ボンレスハムぐらいの大きさで、手足や目はなく、口があるだけだった。


例えるなら、ミミズの巨大化した様な、気味の悪い生物だった。


この生物……あえて『ミミハム』と呼ぶ事にするが、このミミハムは、不思議な事に、体を半分に切られても死ぬ事は無く、さらに半分になった体が一日で再生し、二匹の生物となるのだった。


しかも、その肉の味は、牛ステーキとマグロの中トロを合わせたような美味さだった。


ミミハムのエサは雑草と土だけ。勝手に繁殖し、しかも美味い食料。


だから、ここの原住民は、めったに働かないし狩りもしない。争いごとも生まれない。


男は、このミミハムを使って、ある悪巧みを企てていた。それは金儲けではない。


男の職業はZ国のスパイ。敵国であるN国をおとしいれるのが目的だった。


「このミミハムをN国に大量に輸出すれば、食糧自給率の高いN国の経済は狂うだろう」


男はさっそくミミハムを大量に輸出した。それから3年が経った。


男の思惑通り、N国ではミミハムが主食となり、国民は働かなくなり、経済は悪化した。


「これでN国はZ国に歯向かう術はない。わが国の独裁が始まるのだ!」


その瞬間、地球規模の大地震が起こった。


首都は崩壊し、津波による被害は甚大だった。食糧難で大勢の人々が死んでいった。


その5年後。地球上で生き残ったのは、アマゾンの原住民とN国の人間だけだった。

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