第19話 絶対に手に入れる
ある科学者の男がいた。
男には好きな女がいた。
だが、彼女は、男のことなど見向きもしなかった。
男は、彼女に好いてもらうため、様々な努力をした。
高価なプレゼント、花束の山、ムードあるデートなどなど。
しかし、彼女は一向に振り向いてくれなかった。
男は考えた。研究などそっちのけで、彼女を手に入れることばかり考えた。
それから5年後。
地球上では正体不明のウィルスに汚染され、残された人口は10分の1まで減った。
生きのびた人々は地下に潜り、科学者たちは、ウィルスの駆除方法を研究していた。
しかし、何も解決策は生まれないまま時は経つ。このままでは人類は絶滅する。
何とかして、ウィルスを駆除する方法を、絶対に手に入れないといけない。
科学者の男は、ある提案をした。
ひとりの科学者だけで研究を続け、残った者は冷凍カプセルに入って冬眠する。
こうすることで、皆が無駄に時間を浪費して年老う事も防げる。
残された人類はウィルスに汚染されることなく、解決策を待てば良いのだ。
残った人々や、他の科学者も、それに同意せざるを得なかった。
それから。数10年、数100年の年月が過ぎた。
科学者の男は、冷凍カプセルから目覚めた。自分が目覚める順番が来たのだ。
もちろん、研究を続けるためではない。
最愛の彼女以外の冷凍装置の電源をすべて止めるためだ。
もうすぐ彼女が目覚める。その時は、男と彼女以外の人類は存在しない。
そして、世界を絶滅に導いたウィルスも、科学者の男の発明であった。 おわり
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