第23話 ジョイント・フェチ
「どうして、誰も私の事を心から愛してくれないのだろう!?」
男は、悲痛な心で叫んだ。
目の前には、若くて美しい女性が何人も、彼を見つめているのに。
それなのに。彼には、自分を満足させる事の出来る女性はいないということなのだろうか? その光景は、男性視点から見ても、何とも羨ましい光景に違いはなかった。
普通、一般の男は、ひとりの女性と結婚し、愛を芽生えさせ子を授かり、慎ましい生活を送る。そして、幾年の年月のうちに、生活に翻弄され、金に縛られ、愛は枯れ、愚痴を連呼し、責任の擦り付け、最後に無常な終わりを迎える。
それに耐え切れなくなった物は、浮気や不倫をし、心の隙間を埋める事に翻弄する。
かろうじて、それを回避する男もいるが、それは所詮、不満で満ち溢れた夢のない希望。どうしたらその呪縛から逃げられるのかわからないまま、歳老いて死んでゆく男の末路。
だったら、男のように、若くて美しい女性をはべらかし、そのみずみずしい果実のような肢体を思うがまま堪能し、己の欲求のままそれをぶつけ、まさぐり、揉みしだき、吐き出し、頂点に達する。それが、どんなに他者から見て羨望に値する行為であるかは自明の理であることに間違いないだろう。
さて、そんな男は、どうして満足できないのだろうか?
いろいろ考えさせられるのだが、原因のひとつは『愛』だろう。
『愛』というのは、ひと言では片付けられない尊い言葉だ。
女への愛、子供への愛、親への愛、ペットへの愛、趣味への愛……
さまざまな形で『愛』は存在する。
男は悩んだ。その『愛』のかたちを。
自分の欲する愛に近づける為に、幾度も愛を探求した。
最終的に、男の愛は何だったのかは、一般人に知る由はない。
ただ、ひとつだけ。その男の前に並んでいる何人かの若くて美しい女性達の共通点。
その女性達に共通することは、体のパーツを強引に接合された死体であった。
男の性的な欲求は、顔、胸、お尻、足、腕と、切り刻まれた四肢をくっつけた物であった。それが、男の歪んだ欲求の正体であった。
しかし、ただの人形なのか? それとも本物の人間だったのか?
それはわからない。だれにもわからない。 終わり
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