第6話 ふたりの私

女には好きな男が二人いた。


どちらも大好きで、どちらかを選ぶことなどできない。


いっそ、二人の男を自分の物にしたいとも思った。


ある日、その二人の男から、念願のデートの誘いを受けた。


女は喜び有頂天だった。だが、どちらかを選ばないといけない。


女は悩んだ。悩みまくった。

そして、どうしようもなくなって、部屋の中をグルグルと狂ったように走り回った。


すると、不思議な事に、自分が二人に分裂していたのだった。


女は驚いたが、これは好都合。二人の女は瞬時にわかりあう事ができた。


女は、それぞれの男とデートに出掛け、楽しい夜を過ごした。


二人の女は、二人の男と交代しながらデートをしていった。


そして、その生活は続き、二人の男と、二人の女の恋愛は発展していった。


ここまでは何も問題がなかった。二人の女は仲良く生活していた。


だがしかし、女の頭の中には、二人の男を独占したいと思う気持ちが芽生えた。


女は、もうひとりの女を邪魔に思うようになった。それが憎しみに変わった。


二人の男も、女に自分以外の男がいると感づいた。


このままでは、いつかはバレてしまうかもしれない。


そう思った女は、ある夜、もうひとりの自分を殺そうと包丁を突き出す。


逃げ回る女と追い掛け回す女。逃げ回る女も負けじと包丁を持って応戦。

遂に、二人の女は、お互いを包丁で刺し合い、相打ちになった。

二人の女は、断末魔の叫び声をあげ絶命した。


次の日の朝、

警察の車が取り囲む中、女の部屋では、包丁が二本刺さった死体が一体あった。

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