第2話 アンドロ家族


ある発明家の若い男がいた。男は独身だった。


男は寂しさを紛らわすため、恋人のアンドロイドを作った。


自分好みの可愛い容姿で、人間そっくりに完成した。


しかし、中身はただのアンドロイドだった。


ワンパターンな会話をしていてもすぐに飽きる。男は改良に改良を重ねた。


結果、人間と全く同じ思考回路を持った、女性アンドロイドを完成させた。


男は、その女性アンドロイドを、本当の恋人のように大事にし、そして愛した。


何年か過ぎ、男も歳をとってくると、恋人だけでは満たされなくなった。


子供が欲しい。家族が欲しい。妻になって欲しい。


男は、女性アンドロイドと結婚し、赤ちゃんアンドロイドを作った。


まわりの人々に怪しまれないよう、赤ちゃんアンドロイドを少しずつ大きく成長させた。


さらに数年後。少年まで大きくなった子供アンドロイド。思考回路も少年そのままだ。


生意気な言葉遣いになり、親である男に反抗するようにもなった。


男は、自分に従うよう、思考回路を書き換えようとしたが、それではただのアンドロイドだ。


子供は、ひとりの自立した立派な人間なのだ。男はそう納得する事にした。


やがて、子供アンドロイドは不良になり、家を出て行ってしまった。


やはり、アンドロイドであっても、子供を育てるのは難しいものだ。


だが、俺には愛する妻がいる。いつまでも若く歳をとらない美人の妻がいるのだ。


男は、妻である女性アンドロイドを、生涯愛し抜くと決意した。


中身はアンドロイドでも、心は人間そのものなのだ。


男は、自分の作ったアンドロイドに、絶対の自信を誇っていた。


俺は、こいつだけいれば他には何もいらない。こいつだけは俺を裏切らない、と。


人間そっくりの妻はウソをつくことができない。そんな所も愛していた。


しかし、ある日、妻がこう言った。


「わたしは、愛人が欲しい」


男の絶対の自信はくずれさった。

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