妊娠37週 外回転術を受けた話

 35週で逆子が発覚し、37週で一泊二日で入院して外回転術を受けました。

 覚えている範囲ですが、外回転術のことを記録しておこうと思います。


 当日は朝8時に受診。

 胎児がちょっと移動していたように感じていたので、まずエコーで胎児の位置と向きを確認。もしも治っていれば、何もせずにそのまま帰宅できます。

 確かに移動はしていたけれど、相変わらず逆子のまま。自然分娩はできない位置でした。これで入院が決定。


 外回転術は胎盤が剥がれたり、へその緒が胎児の首に巻き付いたりする危険が伴います。他にも出血したり、胎児の心拍が落ちたりするなど、医師の判断で緊急帝王切開になる可能性があります。そのため処置は分娩室で行い。万全の準備を整えます。


 病室に通されると、すぐに帝王切開用の服に着替えます。マジックテープであちこち開閉出来るようになっていて、自然分娩用の服とは違いました。

 着てきた下着は全部脱いで、産褥パンツと産褥パッドを装備。事前に伺ってはいましたが、「ああ、本当に場合によっては今日出産になるかもしれないんだな」と、緊張したのを今でもよく覚えています。


 ちなみに。わたしがお世話になった病院では、外回転術での入院は特に選ばなくても個室でした。万が一、帝王切開になった場合は一旦大部屋に移動して、動けるようになったらまた個室に移って母子同室開始となるそうです。

 また、その病院ではそれまでに30人ほど外回転術をして、帝王切開に移行したのは一人だけとのこと。それって、多いのか少ないのか。質問したけど答えは無かった。


 着替えを終えると、胎児を動かしやすくするための準備と、胎児の状態のチェックを始めます。

 まずは張り止めの点滴。切迫流・早産の治療薬と同じ物です。お腹を柔らかくして、胎児を動かしやすくするためです。この薬は副作用血で糖値が上がります。そのせいか、やたら喉が渇いて大変でした。けれど、もしもの帝王切開に備えて、施術が終わるまでは一切飲食禁止です。

 次にベッドに横になり、モニターをつけます。お腹の張り具合や胎児の心拍を観察します。そのとき仰向けになっていたからか、一時的に胎児の心拍数が下がってしまいました。外回転の中止も検討されるほどだったそうで少し焦りましたが、仰向けから横向へ体勢を変えると直ぐに戻ったので予定通りに進みました。


 妊娠中はかなり早い段階から仰向けが苦しかった。特に、臨月に入ってからは横向きでないと本当に苦しかった。(だからモニターの時も横が良いと言ったのに、初めは聞き入れてもらえなかった。だから言うてるやん)わたしが苦しいと赤ちゃんもやっぱり苦しいんだな、と思った出来事です。


 モニターが終わったら布団を折り畳んで腰の下に入れ、下半身を高くします。このまま一時間ほど待機。呼ばれるのを待ちます。


 助産師さんが呼びにきてくれると移動開始。点滴をぶら下げたまま、歩いて分娩室に移動します。なんとも言えない緊張感。


 廊下で顔見知りの助産師さん達にすれ違う度に「頑張って!」と励ましてくだって、随分心強かった。その2ヶ月ほど前に1ヶ月も入院していると、お互いに顔と名前を覚えているものですね。


 いよいよ分娩室に到着すると、分娩台に上がります。人生初分娩台。乗るのも見るのも初めてです。

 しばらく入院していたために、全四回の母親教室のうち二回目は行けず仕舞いでした。本当ならその時に分娩室の見学をするはずだったのに、結局してない。産むときに初めて入るのかなと思っていたのですが、まさかこんな形で見ることになるとは。見学どころか利用です。


 午前11時 外回転術開始。

 仰向けになり、下半身を高い位置に来るように分娩台を設定します。医師がお腹の上から胎児をぐりぐり、手で回します。滑りが良くなるように、油やエコーで使うジェルをお腹に塗りながら回していきます。

 主な術者の他に、術中にエコーで確認する助手のドクター、助産師さん数人と見学の若いドクターに囲まれてスタート。

 雰囲気は明るく、おしゃべりしながら和気あいあいといった塩梅。すごくすごく緊張していましたが、そのおかげで気持ちは随分楽でした。

 ちなみに、術者は外回転術の専門医。エコーのドクターはわたしの主治医でした。


 先ずはわたしから見て左にくるくる。案外簡単に回りそうかと思いきや、お腹の左下辺りでどうも引っかかる感じ。赤さんはそれ以上動かない。仕方がないので反対回しを試みる。

 けれど、右側の下辺りには筋腫があります。押さえると痛いのなんの。子宮の外にできるタイプなので、モロに刺激がくる。これは無理。というわけで、もう一度左へくるくる。しかしやっぱり同じ場所で引っかかってしまいます。ここまでで開始からだいたい一時間くらい。


 痛い痛いとは聞いていましたが、思った程ではありませんでした。結構な力でお腹を押されるので、痛いことは痛い。けれど、筋腫が腫れて痛んだ時の方がよっぽど痛かった。痛みの種類は違いますが。

 これまでお腹を大事に大事にしてきましたが、こんなに押さえても意外と大丈夫なんだな、というのが正直な感想です。(わかってない人が闇雲に押すのとは違うけれど)

 とはいえ、結構な力で目一杯押されるので「運が悪ければ胎盤が剥がれる」というのもわかる気がします。


 先生は汗だく。もうお昼も過ぎたし、わたしも疲れてきたしで一旦休戦。午後からは別件で手術の予定があるとのことで、夕方に再開することになりました。病室に帰ってそれまで待機です。


 まだ処置が終わっていないので、お昼ご飯は食べられませんでした。変わりに栄養剤を点滴してもらいます。

 お水も飲んではいけないと言われましたが、さすがに渇きが限界。点滴に来てくださった助産師さんによると、次の施術まで時間があるので「口を潤すくらいならいい」とのこと。でも我慢できなくて少し飲んじゃった。

 それからは夕方にお呼びがかかるまで、ベッドの上でひたすら点滴が落ちるのを眺めて過ごしました。


 同日夕方。施術前にモニターを着けて、胎児の心拍やお腹の張り具合を観察してからいよいよ再チャレンジです。

 とりあえず左側にくるくる。けれど、やっぱりあと少しの所で引っかかって回りきらない。お腹の中で、何かが出っ張っているような感じ。力で押してみるけど、わたしが痛いだけで全く動かず。反対側は筋腫で触れない。

 さあ困った。ドキドキ。もう無理なのか? やだなあ。帝王切開したくないなー困ったなーと、内心オロオロしていると、先生が「布団取って。台下げて」と回りのスタッフの片に指示を出します。


 普通は腰を高くして行います。けれど、逆転の発想で、思い切って上半身よりも下げてみるということらしい。

 そして、台が下がったら再度ぐるぐる。


 ん?


 お腹の中で出っ張ったように感じる、いつも赤さんの頭が引っかかってそれ以上動かなかった何かを乗り越えて、赤さんがどんどん動いている!


 感覚でわかりました。本人はエコーを見るまでもなかった。(もちろんエコーでの確認はした)「お、入った!」と先生も仰い、思わず二人で顔を見合わせてニッコリ。

 それと同時に、肛門辺りにずっしりと重いものがスルッと入ってきます。これは赤さんの頭だったんでしょうね。汚い表現で申し訳ないですが、便秘の酷い感じとでも言おうか。そこまで来ているのに出ない、若しくは注腸検査のあの出したいけど出せなくて辛いあの感じ。重くて大きいのが直腸を圧迫していました。

 直ぐに慣れますが変な感覚。でも、あれは嬉しかったな。


 赤さんの向きをエコーで確認。バッチリ回ってました。あと10度くらい傾いていたらしいですが、許容範囲とのこと。外回転術はこれで完了です。

 赤さんの頭が下に来た事で胃の圧迫感が減り、胃の具合も多少楽になりました。


 今までの苦労はなんだったのかと思うくらいスムーズに動きました。きっと、わたしの子宮は平均よりも変な形をしていたのだな。そうでなければ変な方向を向いているのか。

 何にせよ、あの先生の腕は確かだ。


 その日の夜は一泊入院します。ベッドを半分くらい起こして、座って寝ました。なるべく長い間、赤さんの頭を下に向けて向きを定着させるためらしいです。

 そう言われて座って寝たのに、朝起きたら部屋担当の助産師さんにびっくりされた。そして、「ストイックですね」と言われる始末。なんでやねん。この病院はいろいろチグハグしてるな。


 回ってからは胎動が少し緩やかになりました。もしかして「回りたくても回れなくてもがいていたのかな? 」と思うほど。

 確かに何かに引っかかっていたような感じだったので、赤さんがいくらもがいても動けなかったのかも知れない。

 外回転術の後、助産師さんから「反り返らないようにしてね」と言われました。ちょうど反り返りるような体制で回ったからです。

 お腹が大きくなってからは手を伸ばしたり、反り返ったりしてはいけないと思って生活していましたが、反り返ってみても良かったのかもなあ。なんて、結果論ですが。


 切迫流・早産と診断されて以降、検診が怖くて仕方ありませんでした。検診の度に何かが起こっていたので、いつもヒヤヒヤドキドキしていました。

 逆子が治ったのは良かったけれど、今度はもしも知らない内に逆子に戻っていたらと思うとやっぱり怖かった。退院してからはさすがに横になって寝ていましたが、夜中にハッと目が覚めて寝ぼけて慌てて起き上がってみたり。

 あまり眠れなくなる時期ではありましたけれど、さらにおちおち寝ていられなくなりました。やっぱりストイックだったのかしらん。

 逆子になったときも分からなかったので、本当に毎日嫌な緊張をしていました。

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