第12話「ぬっちゃぬっちゃタイム」

 パコにも獅子王と同じ格好をさせ、たかしは二人を完全に拘束した。


 女の子をひざまずかせるというのは、なかなか興奮するシチュエーションだ。しかもギャルというのが、さらにいい。スカートは短いし、顔もなかなかかわいいし。


「……で、どうするんだ?」


 たかしの問いに、ねとりが得意げにふんぞり返る。


「ここであたくしの出番でござーますよ」


 そのままパコの顎をくいっと、手で持ち上げる。


「ふっふー。いい顔。小生意気なとこがいい」

「私に何する気――」

「それじゃあ、いっただきまーす」

「ぬぐっ!」


 すべてを言い切る前に、ねとりがパコの唇を奪った。


「うわあ……」


 教室にぴちゃぴちゃという音が響く。これは深いのだ。完全に入っている。


「んっー! んー!」


 パコも最初は抵抗して、手をバタバタさせていたが、やがて生気を吸い取られたようにグッタリしていった。



 ぬっちゃぬっちゃと、こっちが引くほどの時間が過ぎる。



「ぷはっ」長い長いキスが終わると、途端にパコの身体が輝きだした。


「何をした?」と獅子王。


「これがあたしの能力、能力奪取(ねとりスタイル)。この子の所有権は、こっちに移動しました」


「つまり俺が主人ってこと?」


 たかしの問いに、ねとりは頷く。「なんでもいいから命令してみ?」


「じゃあ、パコ。ちょっと立ってみて」


 たかしが声をかけると、パコは静かにその場に立つ。


「三回まわって、にゃあって言って」


 パコはくるくる回った後、しぶしぶ「……にゃあ」と言い放った。


 確かに、たかしの言った通りに動いてくれた。


 獅子王はチッっと舌打ちをかわす。「勝手にしろ……」


「ついでにパコちゃんの唾液を通じて色々わかったよ。この子が抱えているもの……つまり、主人が抱えていた欲望や願望が」


 ねとりが語る。


「寂しかったんだよね。家では新しい家族に囲まれて居場所がない。学校でも孤独を気取ってたせいでスルーされがち。誰かに構ってほしかった。そんな自分の存在価値を保つのに、キャーキャー言ってくれる女の子が必要だったんだよね。イマジネがケータイを持っていたのも、きっと誰かと繋がりたいという願望が――」


「あ、そういうのはいいや」

 たかしはあっさり言う。正直、他人のトラウマに興味はない。


 そんなたかしを見て、獅子王は鼻で笑った。


「で、オレの力を持ってどうする? みんなが見てる前で、裸踊りでもさせるか?」


「そんなことをして何の意味がある。戦いは終わった」

 たかしは獅子王の肩をぽんと叩く。


「アンタ……」


「それに、男の裸なんか見ても誰も得しねえだろ」抑えていた笑みが、ついこぼれる。「一線は守る、守るけど、女の子に色々やってもらいたいことあるんだよね。膝枕とか、後ろから『だーれだ』ってやってもらうとか。あ、あ、耳舐めるくらいならギリギリセーフかな?」


「いや、アウトでしょ」ねとりのツッコミ。


 獅子王は呆れて、大口を開けている。「……アンタ、想像以上にゲスだな」


「欲望のまま生きる。それが俺の流儀だからな」


 たかしは決め顔でそう言った。


 獅子王は茫然とした後、やがてこらえきれないように笑いだす。


「ったく、そんなんだからモテねえんだよ」


 スカした笑顔ではない。それは子供みたいな無邪気な笑顔だった。

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