文庫本の新刊コーナーで良く目にする
「黒髪の儚げで可憐なお嬢さんと目元涼やかな中性的なハンサムが寄り添って微笑んでるイラスト」が好きなんです、
ほらあの、「霊力」とか「異能」とかが存在する大正時代とかその辺の日本が舞台で、君は玄関のマットか何かか、ってくらいに、一族の中で冷遇されて虐げられて踏みつけにされてる女の子が、鬼だか龍神だか陸軍のエリートさんだかの実家も嫁ぎ先も口出しできないような相手に見初められて幸せになる……
やつ。
で、基本的には女性向けジャンルなんだけど、あれを自分なりに、自分の趣味だけでやってみたいなって思ってて。
(鬼と龍神はともかく陸軍のエリートさんという存在に対する関守乾の好感度は地を這ってるし
勿論関守乾が書くから関守乾が書いたなりのもんにしかならないんだけどそこはまあご容赦で)
じゃあはじめるよ
成り上がり金持ちの次男坊である19歳くらいの主人公。
父親が息子の自分よりも年下の後妻を取ることになったと聞いてげんなりしつつ、経緯を聞いてみれば、
自分の義母となる女性は、かつては権勢を誇った一族の生まれながら、その権勢の拠り所となっていた霊力が代を重ねるごとに徐々に弱体化して失墜。
そんな一族から、資金援助と引き換えに、成り上がり者の我が家がかの名家から娘を差し出させたという権力の誇示を目的の縁談と聞く。
……それはさぞ家柄と先祖の威光を鼻にかけた嫌な女であろう。
父もよくよく、ろくでもない縁談を受けたものだ……。と思いながら顔合わせの席で出会った「義母」は、
家族や身内全員から見捨てられ放り出されて差し出された彼女は、
拍子抜けするほどにか弱く、大人しげで、可憐な女性(ひと)だった。
何か力になれることがあれば、と申し出るも
「お気遣いありがとうございます」
と寂しげな、それでも精一杯、自分に気を使うような微笑みと行儀のよい一礼で返されて、
「自分だけは、このひとの味方でいよう」と心に誓う。
使用人たちに、くれぐれも彼女を冷遇することのないよういいつけ、ことあるごとに「母上」のもとに通い、困っていることはないですか、欲しいものはありませんか、何か力になれることがあれば言ってください……と言葉をかける。
初めのうちはやはり怖がられ警戒されているようであったものの、少しづつ打ち解け、
年下の母と年上の息子、という奇妙な縁を互いに認めて苦笑いしながらも微笑みあえるようになってゆく。
そんなある日、ジャンルとしては当然に、当人たちにとっては予想外の賓客が訪れる。
龍神の血を引く陸軍の若きエリートさん、階級は大佐、である。
その威光と権力、霊力とか神力はさあ大したもので、既に将来は政府の重要なポストにつくことは間違いないってくらいのイケメンだ。
彼はいう
「この家に後妻として入っている彼女を引き取らせてもらいたい」
その真意は計り知れないが、立場上、はっきりと断るのは、難しい。
まず成り上がりの当家では到底太刀打ちできない。
公然と歯向かえばどんな目に合わされるか……
主人公や使用人たちなど有象無象は視界にも入らないというかのようにつかつかと歩み寄り、
大佐どのは
「以前に見た時からあなたに心を惹かれていた。……あなたは、とても美しい魂の色をしている」
なんだよ魂の色って。
でもまあ言わんとしてることはわかるよ。
割と自分も義母上のことそう思うし
「これは貴女にはきっといい話だよ、義母上」
と思う。
「その機会はきっと今だけ、一度だけだ」
「ここでその手を取れば、あなたは幸せになれるんだよ」
ああ、どうしてちらりとこちらを困ったように見るんだ、まるで助けを求めてるみたいじゃないか。
違うよね、あなたは心ならずも成り上がりの家に差し出されて、脂ぎった金持ちの後妻にされたんだ。
自分はあなたを連れてここから逃げてあげることもできない、まぬけな「金持ちのバカ息子」だ。
助けを求めるなら今すぐその大佐さんの手を取るんだ。
大佐さんは見下しきった顔で主人公や使用人たちを眺めると
こういった。
「きみはわたしが美しいと認めた女性だ、このように、くだらぬ者が群れ成しているところにいてはならない」
だが
……そのひとことは、拙かった。
義母上は、
つかつかと大佐殿に歩み寄ると
差し伸べられたその手を取るかと思われた掌を振り上げて
力いっぱい、横面を打ち据えた。
ぱちーん。と。
「取り消せ!わたしの息子を侮辱したその言葉を、取り消せ!」
「……ばかにするな!わたしの……わたしの大切な息子を、侮辱するな!」
「魂のいろが美しい?だからなんだという!
髪や瞳の色を云々しているのとどれほど違う!
それで、わたしをどうしたいというのだ!
わたしはこの家の後妻だ!それをもののようにくれとかよこせとか!
ばかにするな!」
ここからどうしたらいいかわからない。