以前からお世話になってる神絵師ろろろーる様に、
拙作のカグツチちゃんのイラストをいただきました!
彼女に思いを馳せてつらつら浮かんだ一幕をぺたり。
(カグツチ生存時空における、真夏の一日の出来事)
カグツチ「マサト、マサト!祇代マサト!」
マサト「……なんだいカグツチ」
カグツチ「難題ではない!貴様、今何時だと思ってる!」
マサト「午後四時になったところだけど」
カグツチ「忘れたのか!わたしの散歩の時間だ!早くわたしを散歩に連れて行け!」
マサト「…………行かないとダメか?」
カグツチ「あ!約束を違えるのか!貴様に従う条件として、一日一度の散歩は約束したはずだぞ!」
マサト「……そういう訳ではないけど」
カグツチ「ほら、散歩の時の手首に繋ぐ紐も用意してある!」
マサト「……夕方になって少し涼しくなってからでも……」
カグツチ「いやだ!今行きたい!」
マサト「流石に今は暑すぎるだろう」
カグツチ「わたしはこの程度の気温は平気だ!学習の機会を失したくない!散歩!散歩!」
ユウスケ「ちょっと失礼」
カグツチ「あ、まずっ……!」
マサト「おや戦部さん」
ユウスケ「……カグツチのバカが来ませんでしたか」
マサト「そこにいるけど!」
カグツチ「ああっ!裏切り者!」
マサト「別に裏切りも背信もしてないけど」
ユウスケ「お陰さんでアホは見つかったようです。……カグツチてめぇ、今日の分のひらがな書き取りドリル済ませたのか」
カグツチ「うう……ど……ドリルは……尖ってて怖いから……」
ユウスケ「読み書きは毎日やらねえと覚えねえんだよ、てめえはどうしていつもそうなんだ」
マサト「戦部さん、あまりそうキツイことは……」
ユウスケ「はぁ……あなたがいつもそうやって甘やかすから……」
マサト「カグツチ、戦部さん見て、まずって言ったよね」
カグツチ「言った気がする……」
マサト「ドリルやってないから怒られるって、わかってたってことだよね」
カグツチ「……ごめんなさい……」
マサト「ドリルは君が自分でやるって決めたことだよね?謝らなくていいからまず今日の分済ませよう」
マサト「書取り終わる頃には少しは涼しくなってるだろうから、そうしたら散歩に行こう、それでいいね」
カグツチ「!わ、わかった!約束だぞ!」
マサト「ああ、約束だ。……これでいいかい、戦部さん」
ユウスケ「まあ……あなたがそれでいいならよしとしときますがね、次やったら承知しねえからな」
かくして、「あなた」はマサトの代わりにカグツチの散歩に行くことになりました。
「あなた」に、既にげっっっそりした表情のちさとが穏やかに微笑みながら
ちさと「あの、それじゃあわたしがお散歩をお手伝いします。……その、多分大丈夫です、頑張ります」と言ってきます。
流石にカグツチの引き綱を握るのはちさとです。
南風原と犬飼は既に逃げました。
一歩外に出た瞬間から、ちさとの
「待って」「ダメ」「やめて」
「お願い」「危ない」「リードがもたない!」
という悲鳴が響き渡ります。
「おい、あれは何だ?」
「走らないで!」
「見ろ!アイス売ってる!」
「赤信号!止まって!」
「あ、あれは知ってるぞ!バスだな!」
「横断中に立ち止まらないで!」
「変わったタテモノだな?」
「そっちは人の家!入っちゃダメ!」
「何か落ちてるぞ!」
「落ちてるものやたら拾わないで!」
「うお、何だ貴様!やるかぁ!がおーっ!」
「よそのワンちゃんと喧嘩しないでー!」
やがて小一時間振り回されまくった挙句、曲がり角でカグツチの足が止まります。
「どうしたの?」
「その、この先は……」
「別の道がいいの?道順変えようか?」
「……いや、行く……」
「ここのお家、確か仲良しのワンちゃんがいたよね?いないみたい……散歩、かな?
(そっか……あのワンちゃん……もう随分お年寄りだったから……)」
「カグツチ……カグツチ?
どうしたの?かなしいの?」
「わたしは、かなしくなんか、ない」
「……ワン!」
「……おまえ、まだいたのか」
「……よかった、
……よかった。
……おまえ、しっかり栄養を摂取しろよ
飼い主にやさしくしてもらえ
できるだけ長く、健康でその命を全うしろ
……また会えると、わたしも、うれしい」
「帰ろう、ちさと。
わたしは気が済んだよ」
「それから、おまえも、散歩に付き合ってくれてありがとう
何かしてもらったら「ありがとう」だ
わたしは、知っているぞ」