交易都市クーヨンの片隅に、エリーの店は静かに佇んでいた。
店は石造りの二階建てで、扉の上に掲げられた金属製の看板には「錬金術師エリーの店」と書かれている。その看板の下に並ぶのは、ポーションやマジックポーションが入った瓶。赤や青の液体が、店内の棚を美しく彩っていた。透明竹という素材で作られたガラス瓶は、この土地の特産品であり、農村の収入源としても重要な役割を果たしている。外から見ても、精緻な装飾と洗練された雰囲気が感じられる店だ。
店の扉を開けると、金属製の鈴が鳴り、エリーが店の奥からゆっくりと現れる。彼女の表情は相変わらず無表情だが、その目にはどこか優しさが滲んでいる。
「ようこそ、いらっしゃい。」
エリーは静かに言うと、主人公に店の中を案内する。
店内には様々な薬品が並べられ、薬草や異世界で手に入る不思議なアイテムが所狭しと並んでいる。
「これがポーション、これがマジックポーション。」
エリーは指さしながら、ひとつずつ説明を始める。
主人公はその一つ一つを見ながら、今の自分がどうしてここにいるのか、改めて感じる。異世界に来てから数ヶ月、まだまだ分からないことだらけだ。しかし、この場所には何かしらの魅力がある。それが、主人公をここに引き寄せたのだろう。
「この店で働くことに決めたんだな?」
エリーが問いかける。主人公は少し戸惑いながらも頷く。
「そうだ。だが、まだいくつか気になることがある。」
主人公は少し気になっていたことを口にする。
「貨幣の価値についてだ。ここではどれだけの価値があるのか、どうやって物を交換すればいいのか、全くわからない。」
主人公は真剣に考えている様子だが、エリーはその質問に一瞬驚いたように見えた後、少し笑みを浮かべる。
「それは確かに大事なことだな。」
エリーはゆっくりと説明を始める。
「クーヨンでは、基本的に金貨が一般的な貨幣として流通している。でも、商人同士では物々交換が主流だ。たとえば、薬草とポーション、武器と食料など、物の交換でやり取りをすることもよくある。」
主人公はその言葉に頷きながらも、もう一つ気になることがあった。
「そして、生活環境だ。床で寝るのか?」
主人公は少し顔をしかめる。
エリーは少し考えた後、答える。
「ベッドは買うつもりだ。君にはしっかりとした部屋を用意するつもりだから安心してくれ。」
その言葉に、主人公は少し安心した。
店内をさらに見て回りながら、主人公は心の中で思う。
ここでの生活が、少しずつ形になりつつある。それでも、まだ不安や疑問は残っているが、少なくとも一歩踏み出すことができたのだと感じていた。
店の奥には、彼女が大切にしている薬草の棚が並んでいる。その棚に手を触れながら、主人公はまた新たな質問を投げかける。
「エリー、これらの薬草はどこから仕入れているんだ?」
エリーは少し考え、答える。
「大部分は外の農村からだ。クーヨンの周辺には、薬草やハーブを育てている農家が多くて、その人たちから仕入れている。」
主人公は納得しながらも、まだ疑問が残る。
「それと、これからのことだが、何か仕事はあるのか?」
主人公はエリーを見つめながら尋ねる。
「そうだな、まずは店の手伝いから始めるといい。何か新しいことを学びながら、慣れていってくれ。」
エリーはそう言って、主人公に微笑んだ。
「さて、これからどうしようか。君がどんな役割を果たすか楽しみにしているよ。」
主人公はその言葉に少し驚きながらも、心の中で決意を固める。
「俺も頑張ってみる。」
主人公は小さく呟き、エリーに向かって微笑んだ。
そして、その日から主人公はエリーの店で働き始め、少しずつ新しい世界に足を踏み入れるのだった。