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改稿2 あれ?なんか面白そう?

目を覚ましたクロは、見知らぬ天井を見上げていた。

少しずつ頭が回転を始める。身体を起こそうとすると、重たい感覚が両手首から伝わってきた。

鉄の枷。

手枷は冷たく、現実を否応なく突きつけてくる。

「ここは……どこだ?」

声は掠れていた。喉の奥が焼けるように渇いている。視線を巡らせると、同じように床に座り込んでいる子どもたちの姿が目に入る。

皆、一様に無表情だった。諦めきった目。希望を持つことを許されていない者たちの瞳。

その中に、ひときわ目立つ小さな少女がいた。

銀色の髪を短く刈り込んだ、赤い目の少女。目だけが、何かを訴えるように燃えていた。

彼女はこちらをじっと見つめていた。まるで、彼の心を見透かすように。

「……名前、ある?」

少女の言葉は唐突だった。

「クロ……だと思う」

「思う?」

クロは少し戸惑いながら、曖昧に答えた。名前を名乗るのはいつぶりだっただろう。もしかすると、本当に“クロ”という名前でさえ、今の彼には仮のものかもしれない。

「ふぅん。わたしは、名前なかった。でも、いま考えた。アイリスって、呼んで」

「……アイリス?」

「うん。なんとなく、そんな気がしたの」

そう言って、彼女――アイリスは微笑んだ。

小さな、小さな微笑みだったけれど、クロの中にひと筋の光を差し込んだ。

この世界に来てから、初めてのぬくもり。

それは、名前のない少女が名乗った“はじまり”の言葉だった。

「……ねぇ、クロ。ここから、出られると思う?」

「……わからない。でも、出たいと思ってる」

「うん。わたしも」

その瞬間、扉が乱暴に開け放たれ、男たちの足音が響いた。

「新入りはこいつか。……まぁ、売りもんになる顔してるな」

獣のような目をした男がクロを品定めするように眺める。

クロは拳を握った。怒りが喉元までこみ上げる。けれど、その怒りは何の力も持たない。

「……おい、こいつは“素直”か?」

「……さぁ、どうだろうな。けど、黙って売るだけだ」

男は笑いながら、クロの肩を叩いた。その手が、いやらしく身体を這った。

クロは無意識に振り払っていた。

「……触るな」

その一言に、空気が変わる。

男の目が、ギラリと光った。

「ああ……面白い。反抗的な目は、いい値で売れるんだ」

クロは何も言わず、ただ睨み返した。その視線に怯みもせず、男は笑いながら扉を閉めていった。

やがて静寂が戻る。

「……強いね、クロ」

「強くなんてないよ。怖かっただけだ」

「それでも言えたの、すごいと思う」

アイリスは、また微笑んだ。

その笑顔は、今度は少しだけあたたかかった。

この冷たい檻の中で、名前を持たない者たちが、ひとつずつ、自分の色を取り戻していく。

それは小さな始まり。

けれど確かに、ふたりの物語はここから始まっていた。

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