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改稿6-1

アイリスは、屋敷の窓から外を見つめていた。

それは、懐かしい風景だった。開拓村の静かな日常、父と母が笑いながら畑仕事をしていたあの頃。あの村が今もまだあるのか、わからない。家族の顔が、だんだんと遠く感じられる。

小さな頃から、アイリスは“才能”と呼ばれるものに恵まれていた。戦いの技術を学ぶことが、自然にできた。誰よりも早く覚え、誰よりも強くなった。でも、その才能が、家族を失うきっかけになった。

あの日、家族を守れなかった。村が焼かれ、親を失い、そして彼女は一人になった。

その後、アイリスはただ一つ、望みをかけた。強くなることで、生き延びること。それだけだった。

だが、ここで出会ったクロ。彼は、何も特別なものを持っていなかった。でも、彼には人々を魅了する“何か”があった。それは、ただの優しさだけではなかった。

クロと過ごす日々。最初はただの“同じような境遇の仲間”だと思っていた。それでも、時間が経つにつれて彼の存在が、アイリスの中で大きくなっていった。

今、目の前にいるクロの表情。模擬戦では、いつも冷静で、決して強くなれない自分を冷静に見つめていた。アイリスは心の中で彼に、自分にできなかったことをしてほしいと願っていた。

「もっと強くなりたい」

それが、彼女の全てだった。強さを持つことが、必ず生き残るための唯一の方法だと信じていた。

だが、クロにはその考え方が、どうしても理解できなかったのだろう。

別れの時、クロは何も言わなかった。ただ無言で見守るだけだった。その冷静な目に、何も言えなかった。

アイリスはその背中を見て、自分の内心を押し込めた。名前を呼ばれることを期待していたが、それは叶わなかった。代わりに、彼女自身が名を告げた。

「アイリス。覚えていてね」

あの瞬間、クロの目にはわずかな光が宿ったように見えた。しかし、それも一瞬だった。

彼女はその場を去るしかなかった。

「また、会えるかな」

心の中でそう呟きながら、アイリスは傭兵たちに連れられて屋敷を離れた。彼女の後ろ姿は、クロにはきっと見えなかっただろう。しかし、アイリスはそれでも、胸の中に希望を抱きながら前を向いた。

“また会えるその日まで、強くなりたい。”

それだけが、彼女の支えだった。

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