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190話 幕間 ノース男爵5

「冒険者に転職するのか?」

シャロンのようにとバロックは続けるがレインは首を振る。

「ギルドカードを貰っているだろう?シャロンの話が本当なら金になるはずだ」
「これ売るんです?」

ソラが銅色のカードをポケットから取り出した。

「魔物を狩ればそこに金が貯まる仕組みらしい」
「それは凄いな」

バロックは銀色のカードを取り出すと不思議そうにそれを見つめる。

「ソラが一番稼いでるはずだ」
「確かに僕が一番殺してますねぇ」
「それは楽しみだな!」

そして、三人は兵士を連れて冒険者ギルドに入る。
広々とした室内には様々な格好の者達が思い思いに談笑していた。
 
そんな中、レインはカウンターへと進むと、

「更新と所持金の確認をしたいのだが」

とギルド職員に話しかけた。

「はいよ。見ない顔だが新入りか。ん?こっちは貴族様か」

差し出された三枚のギルドカードを受け取ると、慣れた手付きで魔道具へと差し込んでいった。

「大将、これってどれくらいの価値なんです?」

ギルドカードを返されたソラが所持金を表示するとバロックに問いかける。

「俺と桁が違うなぁ」
「三百万か。十分な金だな」
「…煙草は買いませんよ?」

ソラはレインを睨みつける。

「ふっ、それは自分で買うさ」

レインは銅のカードを眺めながら不敵に笑う。

「ソラすまないが、金を貸してもらえないか?俺の手持ちだとあいつらを食わせてやれないらしい」

兵士達もギルドカードを更新したのだが、魔物を狩ったわけもなく皆一様に肩をがっくりと落としていた。

「貸しませんよ。僕が稼ぐから任せて下さい」
「ソラすまん…」
「ふっ」
「あなたは自分で稼いで下さいね」
「…良いだろう」

ソラとレインは相変わらずの仲だった。

「おまえらなぁ…」

バロックはそんな見慣れた光景に呆れるように言葉を漏らす。

「金の問題は解決した。次は…」

レインはそれを無視して話を続けようと周囲を伺う。

「レイン?」
「補給の時に噂話を聞いてな。ゼロス同盟の傭兵団が全滅したらしい」
「傭兵団?」

首を傾げるバロック。

「ああ、有名な傭兵団だ。お伽噺に語られるほどな」
「ソラ、知ってるか?」

バロックは隣に並ぶソラに声をかけた。

「僕が知ってるのは傭兵の街って物語くらいですね」
「実在してたのさ。エルフが二人に数百の人と獣人の混合軍だ」
「それが全滅したのか?」

バロックの顔が少しだけ曇る。

「ほぼだ。生き残りがいるのだろう」
「まさか、その人達を探しているんです?」

ソラは怪訝そうな表情で問いかける。

「ああ、エルフなら確実に戦力になる」
「…見つかるんですかねぇ」

ソラはギルド内を見渡すが、それらしい気配はない。

「見つけるんだよ」
「確かにエルフっていうのはとんでもないらしいから、仲間に出来れば頼もしいな」

バロックもギルド内を見渡した。

「…エルフってあれですよね」

ソラは道中で出会ったルインズを思い出し苦笑いをする。
確かに底知れぬ力を感じた。
だが、それ以上に歪みを感じたのだ。

「ここにはいないようだな…」

傭兵なら冒険者ギルドで再起を図るとレインは考えていたのだったが、当てが外れたようだ。

「どうする?」
「少し考えるさ」

そして、三人は兵士を連れてギルドを出る。

「エルフは特徴的な髪色と耳をしている。名前も顔もわからないが探しやすいだろう」
「生きてるんです?ほぼ全滅なんですよね?」

「それは…」

確かにそうだがとレインが言葉を詰まらせた時、

「マキナ、ギルドで人集めかい?」
「軟弱な人族などいらん。情報を集めに行くだけだ」

遠くから男女の声が聞こえた。
ソラは声の聞こえた先に視線を向ける。

「そうだね。あの子達にここは厳しすぎるよねぇ」
「三ヶ月よく耐えたものだ」

特徴的な容姿の男女がこちらへと歩いてくる。
 
「大将、あれ」
「ああ」
「…エルフだな」

それがノース男爵一行と変人エルフの出会いだった。

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