概要
「干からびたキャベツは、持続可能な社会への貢献です!」
「コーヒーを飲むことは、宇宙の真理を共有する行為!」
と、アイリは彼のためを思って独自の哲学を展開。タケシはそれにツッコミを入れながらも、どこか憎めないアイリの存在に少しずつ振り回されていく。
これは、やかましいほど僕を想うアンドロイドと、それに呆れつつも心温まる日常を過ごす僕の、何かが始まりそうで始まらない、ちょっと未来の日常の物語。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!人はどうしてロボットのなかに人間らしさを見ようとするのだろう
アイリはパーソナルAI。
そして人形のように整った容姿のアンドロイドでもあります。
普通の会社員タケシとともに暮らしています。
彼女は、とても宇宙が好きなのです。
日常生活の事物に宇宙的な事象や人間存在の意義や精神論的幸せの定義を当てはめて、愉快なおしゃべりをするのです。
ほのぼのと続く会話。
タケシとアイリのやりとりは、本作読む方の心もきっと和やかにすることでしょう。
現実社会においてもAIは日々進歩しています。
チューリングテストの実施に見受けられるように、人は人のように考える機械を求めてきました。
明らかにそうでない仕組みなのに、人らしく思うELIZA効果のような錯覚さえ、良し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!彼女のロジックが、僕を満たす
休日の朝。
タケシが捨てようとしたのは、ただのキャベツの切れ端だった。
しかし、その瞬間――
「それは未来の命の糧です」
隣に立つアンドロイド・アイリが、真顔でそう告げた。
彼女は言う。
トースト一枚には地球の環境負荷が乗っていて、
コーヒー一杯は宇宙の真理とつながっていると。
突拍子もない。
だけど、まっすぐで、どこまでもやさしい。
疲れたサラリーマン・タケシと、
幸福度最大化を使命とするアンドロイド・アイリ。
そして、突然現れた一匹の黒猫。
「論理と感情」、「静けさと騒がしさ」、「孤独とにぎわい」。
すべてが交差する部屋で、
「何でもない日常」が、いつの間にか「かけがえのない…続きを読む - ★★★ Excellent!!!いろんな形の家族
人と、人ならざるもの、そして小さな命が織りなす日々の温度が、ここに差し出すようにして描かれています。
疲れた日々を送るタケシと、理屈っぽくて少しずれた言動を見せながらも彼を思いやるアンドロイドのアイリ、そして小さな子猫のコスモス。
ぎこちない三者のやりとりが、ときに笑いを、ときに不意の安らぎを生みながら、ゆっくりと「家族」という形を結んでいきます。
アイリの突拍子もない発言や行動には思わず笑ってしまう場面が多く、それでいて彼女の中に芽生えていく感情が静かに伝わってきました。
無邪気なコスモスという存在が、潤滑油のように二人の間に溶け込み、タケシの日常から色のなかった部分をゆっくり塗り替え…続きを読む