キニキス、その序章──空を見上げる猿

星を返せ、と叫ぶ少年。
その夜から、聖戦から、王の他界から、千年が過ぎた。
その長すぎる歳月は、芳醇だった土壌を腐敗させ、生命を蹂躙し、星を汚した。
今の地表は、星獣で溢れかえっている。
獣が跋扈する、瘴気に満ちた世界。
聖戦を免れ、辛うじて生き延びた人類は、結界を敷き、わずかに残った土地に拠点を築いた。
そして、千年もの間、星獣と戦い続けている。
全ては、奪われた土地を奪還するという決意のもと。
皆、同じ色を掲げて。

坊主頭の少年も、初めは同じだった。
日中己が身を叩き鍛え、夜中荒野を駆けずり回り、朝方泥のように床に就く。
傷ついた体を癒す間もなく、這いずりながら、前に進む日々。
少年の人生は地を這う猿のようであり、血に塗れた色をしていた。

そんな少年の日常は、とある少女との邂逅で、一…続きを読む