第10話


「んめえ!!ジャガイモってこんなに美味いもんだったんですね!」

《んめー!!!!!》


「口に合って良かったよ。育ち盛りが豆だけのスープなんて腹膨れんだろう。」


「本当に美味しいです!魔法で作ったのもびっくりですけど、料理もどれも美味しい!」


厨房?というか簡素な調理器具等と森や市場から手に入れたであろう香辛料。

森で狩って保存食にしていたとミュゼが言っていた謎の干し肉。

ベーコンのような味がしたので、じゃがいもと炒めたものや、薄く切って油でサッと揚げ、塩を振ったポテトチップス、小麦粉などは少量あったので助かった。

この大陸では戦時中なので、貴族から高い徴税をされ、穀物などの食料は一定以上巻き上げられているようなので本当に全体的に生活苦なんだとか。

腹を肥やしているのは基本的に貴族、それも上の人間だけなんだろうなと思考を巡らせる。

なんせ昔やり込んだとはいえゲームの世界だ。

ボタンを押せば隣の街に移動できるし、コマンドを押せば仲間を動かして攻撃をする、という事はこのリアルな世界では出来ないのだ。

人間腹も減るし、一人一人独自の思考がある。

当たり前なのだが、魔法という存在を認知した時点で中々現実味が帯びない。

まあそれでも現実に生きている実感はあるのだから生きるためになんとかしないとはなと思っている。


ストーリー的にはシナリオが1から6まであり、冒頭のレオンが主人公から殺されてから森羅旅団はシナリオ3まで出てこない。

一つのシナリオは大体一年で切り替わるのでシナリオ通りに行けば三年の猶予があると考えよう。

今のうちに団員を集めて力を蓄え、結束を固めていかなければシナリオ通りに全員殺されてしまう。


今レオンとして生きている私だけでなく、ルークやミュゼ、周りの子供達だって懸命に生きている。

なんとかして生存ルートを見つけ出して、助けてやりたいとは思っている。


《ご馳走様でしたー!!!》

子供達は挨拶をし、ニコニコと外へ遊びに行くようだ。


「悪い人たちや魔物に襲われちゃうからいつも通り家の周りだけで遊びなさいよー!」


ミュゼが声をかける。

天使の涙の設置のおかげで基本的に周りから認識を阻害されるのでこのアジトに来れるのは正確に認識している旅団員のみだ。

しかし効果範囲はどのくらいの距離までレオン自身もわからなかったようで、ミュゼが言う通りに家の周りだけなら問題ないと伝えていたんだろう。


「ルークにいちゃんも遊ぼー」

子供達がルークに声をかけている。

日頃何日か家を空けて貴族の馬車や蔵などを襲撃したりするようでたまには一緒に遊びたいようだ。


そういえばエンカウントで森羅旅団が何人か普通に戦う事があったからそういう事なんだろう。


「ルーク、しばらく私から指示はないから子供達に付き合ってやれ」


「わかりました!んじゃあ外で遊ぼうなー」


子供達とルークは外でかけっこや木の棒を持って遊んでいる。

普通こうなんだよな、それで飯も満足に食べられないなんておかしい世界だよ本当。


「団長、魔法の事についてなんですが…」


「あぁ、そうだったね。洗い物だけ終わったら話そうか。」


そういって私とミュゼは食器を片付ける。


どうすればいいんだろうか。

メニューからテキストが出るのは私だけ。

感覚で教える知識など全くない私はどうしようか考えていた。


ふと、テキストを開いて眺めてミュゼの方を見る。


ミュゼ

レベル1

HP70/70

MP48/48

攻撃力20

守備力42

魔力62

魔防68


スキルコスト100



ミュゼのテキストが出てきた。

これならもしかしたらカスタムできるかもしれない。


やたら魔力と魔防が高いな。

ミュゼ自身はゲームでは戦闘に参加せず、瀕死のルークを庇うような形で死んでしまう描写しかなかった。

それを見たルークは激昂してドーピング薬を飲んで死ぬまで暴れるという感じだったような。


能力値は99がMAXである。

レベルが上がっても数値が上がる時もあれば上がらない時もある。


主人公のお仲間の魔導士なんかはレベルカンストしても魔法の数値は90を超えなかったはず。

初期レベルで62というのは主人公レベルだ。

これなのに貴族しか魔法が使えないという基本設定は何か裏があるのだろう。

実際ゲームでは平民を仲間にするイベントがあり、メニューで魔法を覚えさせる事が出来たので何か制限があると思う。


コスト100で取得できる項目にファイアという初期の火魔法がある。

先程私も残りのコストで取得して料理の際、ミュゼが火おこしを大変そうにしていたので威力を調節して使用したのだ。


ミュゼは子供達や帰ってくる団員たちの食事などを任されているので、ファイアなんかは重宝しそうだ。


「ミュゼ、先程俺が使った火の魔法が使えたら少しは仕事が楽になるか?」


「さっきの手から火が出る魔法ですか!?あれが出来たら火おこしで毎日手が荒れる事もなくなりますので嬉しいですね!」


目をキラキラしながらミュゼはそういうので、コストを支払いファイアを取得する。


「ミュゼ、一度外に出てみようか。魔法の使い方を教えよう。」


「え、そんなにすぐ魔法って覚えられるんですか?」


「いつも頑張っているミュゼには特別に使い方を教えてあげよう。」



そして二人はルークが子供達に袋叩きされている外へと足を運ぶ。




どんな遊びしてんだあいつら。

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