第21話


「チーフ!南方の大森林から大量の魔物がこちらの方に押し寄せてきているそうです!」


「来たか。」


レオンは村に作成した櫓に登って観察していた。


大量だなぁ。数なんて100、200以上いそうだ。ゲームだと最大敵が11くらいしか配置されないけど、実際この物量でアレらに来られたら確かにひとたまりもないな。


「弓部隊、構え。」


レオンの指示で配置に付き弓を構えるルーク含めたカーネ隊員10名プラス村人20名。

かなりの距離から土煙を放って来ているが普通には矢は届くはずもない。


「上空へ放ちなさい。」


30の矢が風を切り高々と進んでいく。

威力が弱まるどころか更に加速し3キロ程進んだ後緩やかに落ちる。


その後


魔物がいたであろう前線が大爆発した。


魔物の痕など残らず木っ端微塵。


練習の成果が出たな。


「まだまだ魔物は来ますよ、次の装填を。」


実はこの矢、ボマーという火属性の魔物から取れるコアをくくり付けている。


ボマーは基本そこまで強くはない魔物ではあるが、倒しきれずにHP一桁になると敵味方関係なく自爆し、大ダメージを与えてくる厄介な奴なのだ。


ボマーコア付矢を放ってもらい、風魔法を使い飛躍的に距離を伸ばし、落下の威力で実際の自爆と同じ効果をもたらした。


速度付与する魔法を物体にも出来るのか試した所可能だったので思いついたアイディアだ。

カーネ隊のこの10人は元々脳筋武闘派なので近くで魔物と対峙してもびびることはないが、村人は違う。

できるだけ遠くで、村人でも簡単に魔物討伐を手伝えるように施したのだ。


村には若い男性は徴兵で少ないが、壮年の男性、女性、子供達など200人ほどがいる。

いざ自分たちの身を守るために何も出来なかったじゃ可哀想だと思ったので、この討伐も参加させ自分達でも戦えるルーティーンを作ってもらおうと考えていた。


勿論きっかけは我々だろうが、これを機に自分たちで村を守っていくというメンタルと自信をつけて欲しかった。

ここまで大規模ではないにしろ、また魔物に襲われるかもしれない。せっかく悲劇から守ったのに帰った翌週に村壊滅しました、なんて報告は聞きたくないのだ。


「大方雑魚は削れたな。弓隊攻撃中止!カーネ隊10名誘導を開始しなさい。」


「はっ!」


すぐさま弓を下ろし、剣に持ち替え村の表へ出る団員達。


時空魔法のアクセラレーションを足にかけて颯爽と魔物の前に走り出す。


すると魔物達は激昂し、目標を目の前の人間達に変え襲いかかってくる。


団員達はすぐさま回れ右をし、目標の場所まで各々が誘導する。

目的地に着いた者たちはそこで止まり、アイテムを取り出す。


キマイラの羽


この羽の効果は直前までいた村や街まで一瞬で戻れる帰還アイテムだ。


これもボムのコアと同じく、魔物討伐がてら集めていたアイテムだ。

この羽を持つキマイラ自体強力な魔物なのだが、カーネ隊の奴らは5人一組になっていれば一体ずつ怪我もなく屠ってしまう実力がある。

実際に戦っている場を見たが、恐ろしくレベルが上がっていて攻撃力が皆70オーバーだったのでイジメにしか見えなかったほどだ。


10人全員が村に帰還したのを確認してから魔物達を見る。


落とし穴に落ちる者たち。


その先にある土堀に足をつっかえて雪崩のようになっている者たち。


ほとんどの魔物が地団駄を踏み、進行速度があからさまに遅延した。


もういいな、と高位魔法の詠唱に入る。


「古より来たれ、天からの災いを悉く降らせてみせよう。天と地、これは交わることのない絶対的な真理である。」


空が急に暗くなり、落雷が始まる。


先程までうるさいくらいな喧騒を出していた魔物達もしんとする。


「あぁ、神よ。この卑しき大地に天災を与えたまえ!」


上空から巨大な隕石が範囲内の魔物達に降り注ぐ。


《メテオレイン》



圧殺され、高熱によって溶け、全てを蹂躙する神の罰。


ゲームではラスボスが指定範囲に隕石が降り注ぎ、高ダメージを与える時空魔法だったが威力がやばすぎた。


村人達もカーネ隊の皆も唖然としていた。


初めて使ったんだもん。こんなに凄まじい威力だと思わないじゃない普通。


魔法のレベルは1から10まであるがメテオレインは10。


レベル8からは基本詠唱がないと発動しない仕様になっている。あの魔法を使って詠唱している際にごっそり魔力を持っていかれたから生半可な魔法ではない。



やがて隕石が落ち、空に青みがかかった頃、櫓から魔物達の様子を見る。


「すげぇ…ゴブリンの一匹も生き残ってませんよ。」


ルークが感動するように呟く。


増援は、ないな。

私がチート性能で助かった。

普通なら死んでた物量だ。

これでシナリオの最終章の悲劇は起こらず済んだな。


「おぉ、やはりまさしく…」


近くに待機していた村長が呟く。

まだ撃ち漏らしがあったかと振り向くと


「レオン様はこの地に降臨された神でありましたか…」


!?


急に何を言い出すんだ、村長。


おい、カーネ隊の者どもよ、跪くな。

ルーク、お前は誇らしげにふんぞりかえってんな。


え、村人の皆様も祈りを私に捧げないで。



「誠に、誠にありがとうございますレオン様。やはり貴方様はこの地に降臨された12神の人柱カーネ様だったのですね。」










え?誰?




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転生先が主人公サイドじゃなくシナリオ冒頭で死ぬ悪役の長 オーヴリオン @kirarirari

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