第14話
ミュゼ達がいる馬車も到着し、一旦村の中に入った。
私が壊した柵に関しては、現在騎士団と旅団員が補強に努めている。
結構大所帯なので騎士達は狼狽えていたが、女騎士のクレアが私の事を兄だと皆の前で明言した為、深く追求されず事なきを得ている。
そして、私はというと村の一番大きい集会場の様な所で女騎士クレアと二人きりで向かい合って椅子に座っている。
村長のラグから出された茶を飲み、クレアは笑顔で私に会話を投げかけてくる。
「本当に兄さんが生きてくれていて嬉しいです!後を追わず我慢して生きていて良かったです!」
後追うつもりだったのか。
そもそもレオンに妹がいたなんてのは初耳なので前世の接客トークを交えながら情報を抜き取る。
まず、レオンとクレアが名乗っていたグランド家はゲーム通り戦争によって家族を失い、没落した。
レオンはその後、戦争中に行方不明に。
クレアは近隣の貴族オークス家に養子として迎えられ、現在に至る。
今クレアは小さいながらもオークス家の一領主として生活しているそうだ。
前領主は体が悪く子もいなかったようでクレアを養子にしたのは僥倖だったのだとか。
ここで私の年齢が正確にわかった。
レオンは現在22歳で妹のクレアは5つ下の17歳だということだ。
そして、何故私がクレアをレオンの妹だと納得している理由は
クレア-オークス
レベル12
HP168/168
MP121/242
攻撃力62
守備力65
魔力75
魔防80
時空魔法
風魔法
と向かいのクレアの前にテキストが出ているからだ。
最近わかった事だが、私にはテキストを開けば敵味方問わずステータスが見える。
流石にスキルコストや魔法の取得熟練度などは見えないが、これだけでも十分に助かっている所だ。
それに時空魔法。
この魔法は冒頭でテレポートを使ったレオンとラスボスで時空魔法の一族の古代人しか使っていない。
こんなバランスブレイクするような魔法をホイホイと色んな貴族が持っているわけもなく、話の流れも加味して妹だと信じる事にした。
本当に真摯に話をしてくるのと、部下の騎士達に旅団員含め丁重に扱えと指示をしていたので半ば安心していた。
「それにしても兄さんは流石です。私が使えない重力魔法をいとも簡単に使用できるなんて。」
「クレアは使えないのか?時空魔法を取得したいるだろう。」
「いえ、私はアクセラレーションで速度を上がる魔法しか使えません。兄さんのようなグランド家一の天才ではありませんでしたから。」
レオン天才だったのか。
以上なMPと魔力値を見れば確かに英雄にでもなれる素質はあるんだろうけど。
物語冒頭で敵として出るレオン達のレベルが1なのは納得していたが、妹が12もあるのだから普通はもっとレオンも高いはずなんだろう。ゲームの設定都合なんだろうけど。
「そもそも私達グランド家の時空魔法は先代の頃より周りには強力すぎて秘匿するように伝えられていたし、基本の技しか伝わっておりませんでしたので、兄さんのようにテレポートなど独自で発現させた事自体素晴らしい功績なんですよ。」
そうなのか。確かに強すぎる魔法を持っているのが分かれば良いように利用されるか、処分されるのがオチだろうからな。
まぁ戦争で没落して家失って盗賊紛いの首領になってたんだけど。
「なので、私も先程この村に向かう時に兵達の馬にアクセラレーションをかけて急いできたのです。バレないよう取得している風魔法を使ったと周囲には説明しましたが。」
色々大変だなあ、と他人事のように考えていたレオン。
するとクレアは意を決して私にこう言う。
「兄様とお仲間の皆様を歓迎したいので是非私の治めている館へいらっしゃって頂けませんか?まだお話したい事が沢山ありますし、何より兄さんがこうしてまた生きて目の前にいらっしゃる事が嬉しすぎるので!」
犬のクゥーンという声が聞こえて来そうな様子で懇願するクレア。
辺境に移動してシナリオから脱し、平穏に生活基盤を整えようと考えていたが、勿論アテはなかった。
ゲームの知識と前世の知識、そしてこのレオンのスペックがあれば何とかなるかなという漠然としたものだったので、この提案はありがたかった。
この様子を見る限り、クレアにお願いすれば我々の移住区など設けてくれるかもしれない。
例えクレアが私の事を匿おうとしても、ルークやミュゼ、他の団員や子供達を捨ててそちらに行くなんて論外でしかない。
ここまで来て仲間を見捨てることなんて私には出来ない。
クレアも話した感じ良い子そうなので大丈夫だろう。
「わかった。では、少し私のメンバーに話す時間をくれないか?何せ元貴族とは皆に話していないし、いきなり平民が貴族の屋敷に上がるなんて事は基本的にないことだからね。」
「はい!わかりました。では私は村の補強の進捗を確認してまいりますのでこの場をお使いください!」
説明せねばなるまい。
貴族の都合によって様々な弊害を持って集まった、この森羅旅団のメンバーに。
私は元貴族だと。
君たちの居場所を奪ったかもしれない一貴族だったという事を。
外に出て、団の子供達の相手をしているミュゼに声をかける。
「ミュゼ、村を手伝ってくれているメンバーや、子供達も皆集めてこちらの建物に来てくれないか?」
何か説明があるのだろうと納得したミュゼは
「はい!では皆に声をかけてきますね!子供達は…」
「俺が預かろう、皆こっちに来て少し休憩しなさい。」
私が子供達に声をかけると皆わかりましたー!と元気よくこちらに移動してくる。
結構人気者なんだよなーレオンさん。
どう説明しよう、内輪揉めしたくないなあ、騙したなとか言われるのかな、と様々な事を考えながら天を仰いで考え込むレオンであった。
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