第12話
あれから半年…
過ごしていくうちにこの世界で生きていく上での必要な情報、現在の旅団の動きなどを把握できた。
まずは暦と時間だが、黄道十二宮を一つの指標にし、一月30日で計算されている。
時間は基本的に時計が発達しているので前世の動きと何ら問題はなかった。
ゲーム同様に、大きな二つの貴族派閥が国を獲る為に戦争をしている。
一つは国王の7才の皇太子を神輿に担いでいるバース侯爵、首都を拠点に勢力を伸ばしている。
もう一つは北側の辺境に位置し、国王の隠し子の15歳の女性を擁立しているラグナ公爵。
こちらも正当なる後継者だということ、並びに現在の7才の皇太子に国をコントロール出来ないという建前で戦争に参加している。
ちなみに主人公の勢力はラグナ公爵側だ。
国王の隠し子の女性がヒロインなのだ。
言うなれば傀儡政治をどちらが手にするか
そんな大陸の情勢もあり、民は貧困化しているそうだ。
しかし、それでも各市町村では懸命に生活をしている民の姿もしっかりとある。
争いの中心部ではミュゼやルークのような戦争孤児、各地域のスラムの増加などはあるが、戦争から程遠い地域などは通常の生活は続いているそうだ。
旅団員達がこの半年の間で定期的に報告などで現在のアジトに来た。
二つの派閥の動きを監視する者。
庶民に紛れて働き、情報を集める者。
道中の輸送車などを襲撃して戦争を停滞させようとする者。
他、様々な内容の報告が私に上がってきていた。
私はこの中から庶民に紛れ、働く者以外の全ての行動を停止させた。
理由は、やっても無駄だからだ。
ストーリー通りでいけば必ず我々に未来はない。
あくまで大筋のストーリーに彩を与える為に我々はいるのだから、そもそもこの流れから居なくなっても問題ないと仮定していた。
勿論、貴族への憎悪が強く反発した団員もいたが、それは強めの魔法を目の前で見せて威嚇し、成長促進させた食材と魔物を倒して手に入れた食材で腹一杯になってもらい、とりあえずは納得してもらった。
飢えが深刻化しているので、先ずはその不安を解消すれば大人しくなるだろうとの狙いだった。
私の力だけでなく、ルークとミュゼも説得にあたってくれたのも大きいだろう。
彼等は本当に忠誠心が高くて助かる。
これから私は森羅旅団を新しくし、皆が安心して暮らせるような仕組みを作りたいと考えていた。
勿論、貴族間の憎しみや辛みなどが団員皆持っている。
それに関しては殺し殺されで解消するのではなく、別のやり方で攻めていこうと考えていた。
実際に知り合って半年しか満たない人達だが、皆仲間だと私は思っている。
前世でも社長以下社員、アルバイト、パートだって皆チームとして意識していたからこそ、逆境に打ち勝てていたのだ。
無駄なことで仲間を失うのは絶対に嫌だ。
レオンという旅団の団長というポジションに着いた私としては尚更であった。
という事で今、我々は何をしているかというと
森羅旅団員45名+孤児の子供十数名を連れて北側の辺境、ラグナ公爵側の街を目指して大移動をしていた。
「やはりすごい馬車ですね、疲れないし安定感が違います。子供達も移動中でも健やかに眠れてますよ、チーフ。」
「そうか、なら良かった。ミュゼも子供達を気にかけてくれて助かるよ。」
ガタガタとゆっくりワゴン車より少し広めのの大きさの馬車が6つ。
四足歩行のドラグーンと呼ばれる魔物で馬車を動かしている。
この世界で騎士が乗る馬はバイコーンと呼ばれる魔物で馬にツノが生えている飼育可能な魔物がいる。
このドラグーンという魔物も勿論飼育可能で物資の輸送や、こういった馬車での移動で重宝されている。
ちなみにミュゼだけでなく、私の事はこの半年の間でチーフと呼ばせるようになった。
団長と言われるのも何か腑に落ちない部分があり、支配人と言われるのも何を支配しているのだろうと感じたので、取り敢えずチーフと呼ぶようにお願いした。
森羅旅団だとバレるリスクもあるので呼び方自体を変えるのは元々考えていたが、この方が私にはしっくりきたのだ。
しばらく進んでいくとジェイクと呼ばれる森羅旅団の斥候チームのトップ、その他6名が私のいる馬車の前に現れた。
「チーフ、失礼いたします。3キロ先にある村がゴブリンの集団に襲われているようです。」
ゴブリンか。
アジトの周りの魔物を討伐していた時に何匹か見かけた事はあったが成人男性でもナイフを持てば殺せるくらいの強さだったな。
「自警団や騎士団はいないのか?」
「小さな村のようで自警団数人が対処しているようですが、ゴブリンの数が多く恐らく後10分もかからないくらいで村の柵を突破するかと。」
「そうか、我々のような人間を目の前で作ってしまうのは心が痛いな、、、ルーク。」
そう言って私のいる馬車で御者をしていたルークに声をかける。
「任せてください!俺が一走り行ってゴブリン共を瞬殺してきます!」
意気揚々に飛び出して騎乗用のバイコーンにまたがるルーク。
「待て、俺も行こう。」
そう私も声をかけてもう一匹のバイコーンに飛び乗る。
それを見たジェイクが慌てて
「チーフ自ら行かれるのですか?ルークと我々だけで制圧できますのでお待ちになってください。」
「ここ数日馬車に乗っているだけだったんだ。たまには体を動かさせてくれ。ジェイク達は馬車を頼む。」
「久しぶりのチーフとの共闘!燃えるぜ!日頃の修練の成果見ててくださいね!」
戦闘狂の気質があるルークは盛り上がっているようだ。確かに数ヶ月ぶりにルークの戦闘を見るのも面白いと考えていた。
「チーフ、ルーク。無理はせずに行ってきてくださいね。」
少し不安げに送り出そうとしているミュゼの頭を軽く撫でてあげた。
「問題ない、焦らないでゆっくりくるんだよ。子供達を頼んだ。」
そう言って私とルークは二人で村へ駆けていった。
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