第11話


「団長も一緒に遊んでくれるのー!?」

「一緒に旅団ごっこしよー!」


旅団ごっこ?

ルークが騎士団役で子供達が旅団員として成敗する遊びらしい。

なんて卑屈なチャンバラなんだ。


「遊びはまた今度な。それよりも今からミュゼが魔法を使うから皆危ないからこっちに来なさい。」


「え、ミュゼ魔法が使えるのか!?」


「団長に教えてって言ったら教えてくれるっていうんだけど、、、」


「ずるいな!団長!俺にも教えてくださいよ!」


ルークが袋叩きから解放されて、元気よく近くに来て懇願する。


「わかった、後でお前にも教えるからまずはミュゼだ。先程の私が使った魔法はファイアという火の魔法の基礎だ。私が先にイメージとして放つからよく見ておきなさい。」


「はい!どうすれば良いかわかりませんが取り敢えず見てます!」


物凄い勢いで私の手を凝視しているな。

それだけ魔法というのは平民には届かない、それこそ魔法のようなものなのだろう。


近くに焚き火の跡が残っていたので、そちらに向けて放つ。


『ファイア』


手のひらから射出された火の塊は焚き火の跡に向かって当たる。

木炭になっているようで一瞬軽く燃え盛った後、ジリジリと木炭が赤くなっていった。


「すごい…」


「ミュゼももうこの魔法を使えるおまじないをしておいたよ。さぁ、俺と同じような火の塊を出せるようにイメージしてファイアと唱えるんだ。」


「は、はい!さっきの団長の魔法をイメージして…」


ミュゼが呟きながら目を閉じて、集中する。


決心がついたのか目を開き手を前に出す。


「いきます!」『ファイア!!』


ミュゼの手のひらから私と同じような大きさの火の玉が宙を巻い、焚き火に当たる。


「や、やった!わ、私にも魔法が使えました!団長!!」


とても興奮気味のミュゼの頭を撫で、落ち着いてから言葉を発する。


「おめでとう、火の魔道士として最初の一歩だね。毎日使い続けると練度が高まるし、新しい魔法も覚えれると思うから頑張ってみなさい。ただし、ミュゼは大丈夫だと思うが火魔法は危険だからしっかりイメージを調整するのと、場所を考えるように。魔法を使いすぎると体調が悪くなったりするはずだから、あまり使いすぎないようにね。」


全員が魔法を覚える事が出来たら、騎士団の人間にも十分対抗できるのではないだろうか?

少なくとも一方的にやられる、という事は無くなりそうなのでこれも生存過程で必要な項目だろう。


「はい!団長、ありがとうございます。私、頑張って団長や皆を守れるように頑張りますね!」


力強い言葉をミュゼから感じ、成功して良かったと考えているとルークから


「団長!次は俺です!いつも団長のそばにいるのは俺なんだから俺にも魔法を教えてくださいよ!」


「わかったわかった、ちょっと待っていろ。」


ルークをあやしながら、ルークのテキストを開いて思考にふけるレオン。


子供達にもっかいやってー!と言われてファイアを連発するミュゼ。


いや、夢のような魔法を手に入れたんだからわかるんだけどね?

MP切れにならないか心配だ。


ちなみにルークのステータスはというと


ルーク

レベル1

HP210/210

MP20

攻撃力68

守備力62

魔力18

魔防27


スキルコスト100


完全な脳筋ステータス。

そもそもルークは団長を引き継いで中盤から終盤にかけて主人公と戦うライバル的な立ち位置。

終盤ルークのレベルは50近くあったはずなので、戦士としては大成する武力を持っているなと実感した。


レベルが1なのはなんなのだろう。

何を持ってレベルが上がるのかも今後の課題だな。


「ルークは、、、まだ魔法を覚えられそうにないな。」


「えぇ!?ミュゼは出来て俺は出来ないんですか?」

残念そうに悔やむルークに優しく諭す。


「まだ、と言ったろう?しばらく色々と鍛えれば使えるようになるさ。それまでは自慢の剣の腕を磨いてくれ。」


「んー、わかりました!団長の剣として全力で頑張ります!」


単純だが良い子だ。

なるべく早くレベル上げの仕方を見出して魔法を覚えて欲しい。

簡単な魔法なら剣の戦いでの補助にもなるだろうし有利に戦闘を進められるだろう。

その分生存率も上がる。


聞き分けが良いのはレオンがそれなりに良く面倒を見ていたからだろう。

話を純粋に飲み込んでくれるのは非常に助かる。





その日はしばらくルークに剣を、ミュゼには魔法を教えながら日暮れまで過ごした。

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