第5話
「ここがアジト、か」
この世界の首都モナンのはずれ、森林の中にそのアジトはあった。
貴族間の戦争もあり、首都付近では戦いは基本行われないので敢えて首都から近い場所にしているのだ。
「普通見つかってもおかしくはないが、魔物がこの世界にいるからわざわざ見つけに来ないってことですかねぇ」
「あ、団長!ルーク!おかえりなさい!無事だったんですね!心配していました。」
この女性はミュゼ、レオンが死んだ後に森羅旅団を継いだルークを支え、共にストーリー終盤主人公と戦い命を落とす人物だ。
「ただいま、ミュゼ。ここは変わらなかったか?」
「はい!団長が魔除けに置いている石のおかげで魔物も騎士団も寄りつかないので!」
石?そんなものが?レオンが?
ミュゼが指さす置かれた場所へ行き、レオンは石を取る。
これは、天使の涙じゃないか!
ある魔物から一定の低確率で排出されるかなりレアなアイテムだ。
普通に買うにしても高位の貴族でないと買えない。
ゲーム内での効果は、発動させると行動している間モンスターや野盗、騎士団等の認識を阻害する効果がある。
どうしてもエンカウントが面倒で回復しているうちにアイテムなどがなくなり、また街に戻り装備を整える、なんてことが多いこの世界では重宝されるものだろう。
そうか、これがあったから森羅旅団のアジトがストーリーの最後になってもわからなかったのか。冒頭退場のくせにやるじゃないかレオン、没落する前に家から持ってきたのかな?
「腹減っちまってもう動けねえよ、ミュゼ飯出してくれ。」
「わかったよ、ルーク。団長も食べますよね?」
「あぁ、頂こうか。食事しながら今後の話をしよう。」
「はい!では子供達も呼んできますね!」
森羅旅団は平民で構成されている。
戦争で家が無くなった、スラムでも生活ができなくなった、などの理由がある孤児を集め、ゆくゆくは旅団員として活動させるという結構ブラックな職場なのだ。
「まあ、今死ぬより生き繋いでる分いいのか、な。」
「どうしました?団長?」
「いや、いいんだ。食事の準備をしよう。」
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