第8話急な出来事
魔法の練習は僕が休みの時しか無理だと言って、また来ると約束し家に帰ってきた。
それにしても可愛いかったな~。
(さっさとくっついちまえよ・・・・・・その方が都合良いし)
なんか最近時々ボソボソと聞こえないように言っている言葉があるのがやはり気になる。
が、それよりも僕がマイに会ってからソラがいきいきしている気がする。水を得た魚みたいに。
この場合はいじるネタを見つけていきいきしているのだろう。
「そういうのはもっと交友を深めてからの方が良いんだよ」
(誰かにとられても良いなら別に良いけど)
「なっ!!」
(だって今日だって9人に狙われてたんだよ?)
「それは・・・・・・そうだけど・・・・・・」
(まあカイの好きなようにやると良いよ)
「お、おう。ありがとな。」
(ハハハ、面白いね。焦らなくても大丈夫だと思うよ。彼氏いなさそうだったしそれに・・・・・・)
「それに何だよ」
(いや、これはカイが自分で気づくべきだから僕からは言えないよ)
「何だよ。ていうかなんで彼氏いなさそうだって言えるんだ?」
(う~ん、直感かな)
実のところソラはマイもカイに恋心を抱いていそうなことを勘づいている。
だからこそ彼氏はいないだろうと言えたのだ。
ただその恋心を他人が当事者に教えるべきではないと判断しレクスと同じようにで判断したと言ったのである。
「お前も勘で動く奴か。はぁ。まあ良いか。明日レクスにどれくらい休みが増えるのか聞いてみよう。」
その後は何事もなく、変わったことといえばレクスが来なかったこと位だった。
翌日。再び護衛としてレクスの部屋に来たのだがそこには、疲れきって呆然としているレクスがいた。
「おい、大丈夫か?」
そう声をかけるが反応がない。
「おいって、大丈夫か?」
今度は肩を掴み揺らしながら問いかけた。
「うん?ああカイか大丈夫だ。いや、大丈夫ではないかもしれない。」
「何があったんだ?」
「ああ、それはな・・・・・・」
レクスが言うには初めに怒られてメンタルブレイクされてからの最近のことについて根掘り葉掘り聞かれ、挙げ句の果てには護衛の家によく行くならそこに住むと言い出したらしい。
それはいろいろと問題があるのでダメだと言ったらやましい事があるのではないかと疑われまた怒りそうになっているのを見てヒヤヒヤしながら話していたそうだ。
気が抜けない状況が昼食の後から夕食の前まで続いたらしい。
大分尻に敷かれているな。次期国王がこんなんで良いのか?まあ家族内では良いのか。
僕もマイと付き合うことが出来たらそうなるのだろうか・・・・・・
「それに懲りたら婚約者をないがしろにしないことだな」
「ただそうなるとお前の休みが増える。学校も後1カ月は始まらない。そうなると退屈じゃないか?」
「僕にだって用事はあるから別に良いよ」
「なるほど、用事か・・・・・・まさか彼女でも出来たか?」
こいつの勘はすごいな。
「まだ彼女じゃねぇよ!!」
「まだと言うことは・・・・・・よし、分かった。お前は今日から1週間休みだ。仲を深める良いチャンスだろ?」
なんかノリの良い上司みたいなことを言い出したな。
それにいつの間にか好きな人が出来たということがバレてるし。
ただここまでバレたら隠せない。
「その間レクスはどうするんだ?」
「私はローゼと過ごす。最近仕事をし過ぎだと言われていたからちょうど良い」
ローゼ?ああ婚約者の名前か。休むついでに機嫌とるってか。大変だな。
「とりあえず今日から1週間休みなんだな。ちょっと寄るとこあるから帰るよ」
「ああ、未来の彼女のとこに行くのか?せいぜい頑張って他の男にとられないようにな」
「お、おう」
つい返事してしまった。ソラと同じこと言いやがって。心配になるじゃないか。
用事と言うのはマイに魔法の練習がいつ出来るか教えるため。なのでレクスの勘は当たっている。
本当に侮れないな。ということでマイの実家である飲食店、スタール亭に行く。
中に入ると昨日と同じようにマイの母親が出迎えてくれた。
「まあ、マイに会いに来たんですか?」
「ええ、約束してましたので」
「そうですか。今後ともマイをよろしくお願いします」
うん?なんか娘の彼氏に言っている感じだな。
この人の中ではもう付き合っていることになっているのかもしれない。
そう思っていると、
「ちょ、ちょっと何言ってるの!!」
近くにいて話が聞こえたのか急いできたといった様子のマイ。
「あら、マイあなたに用事があるみたいよ」
そう言われたマイは少し顔を赤らめた。カイは気づいていないが。
「とりあえず私の部屋来て」
腕を掴まれ引っ張っていかれる。
その様子をマイの母親は微笑みながら見送っていた。
結局部屋まで引っ張っていかれた。
助けて貰ったとはいえ昨日会ったばかりの男を部屋に入れて良いのかと思ったがそれだけ信用して貰えたのだと思うことにした。
部屋に着くと腕を話してくれた。
部屋はさすが女子の部屋というかとてもきれいに整頓されている。
床に敷かれたカーペットの上に座るように促され、座るとマイは対面に座った。
「それでいつから練習出来るんですか?」
目をキラキラさせながら言われた。
「お、おう。それがな今日から1週間休みを貰ったから明日からでも出来るよ」
その勢いに押されながらも休みを貰えたことを伝える。
「本当に?今すぐ準備始めます。そういえばどこで練習するんですか?」
「それについては考えてる事があるんだ。だから大丈夫」
「お母さんにも言わないと」
そう言ってマイは母親のところまで行ってしまった。
女子の部屋に置いて行かれる僕の気持ちになって欲しい。
少しするとマイが母親を伴って帰ってきた。
「2人で魔法の練習をするんですって?」
「はい、ダメですか?」
「いえいえ、魔法の練習という名のデートなんでしょう?」
図星だ。顔が赤くなってる気がする。マイも同様に赤くなっているのだが今のカイに気づく余裕はない。
「あら、図星のようね。それならいっそ彼の家に泊まってきなさい、マイ」
「えっ、ちょっと何言ってるの!!」
マイも動揺している。
「だって彼レクス様の護衛なんでしょう?お金の心配はないし、強いんだから文句の付け所がないわ。
それに早くしないと他の子にとられるわよ?」
小声で言っているので僕には聞こえない。
何を話してるんだろう?
「あ、あの家に泊まっても良いですか?」
本当に何を言われたんだ。のり気になってるよ。
「あ、うん、良いよ。」
好きな子との同居イベントって。嬉しい以前に気まずい。
「じゃあこれから1週間マイをよろしくお願いします。」
「は、はい。」
そうして、嬉しいが心配な1週間が始まるのだった。
◆
初めは魔法の練習という名目で会えるということで引き受けたのだが、待っていたのは1週間の同居生活。
気まずいったらありゃしない。
まだ幼馴染みとか付き合ってるならまだ良いだろう。
ただ僕達は昨日会ったばかり。そんなに親しくなっているわけではないのだ。
マイの母親に文句を言いたいところだが、嬉しいという気持ちも少なからずあるので言えない。
そんなわけでマイを引き連れて家に帰ってきました。
「立派ですね」
それは家を見たマイの感想であった。
「レク・・・・・・王子様が用意したものだからね」
「そうなんですね」
ダメだ。会話が繋がらない。少しの間沈黙が流れる。
「とりあえず中に入ろうか」
「あ、はい」
こうして家に入ったんだけど、
「お、ようやく帰ってきたな、カイ。待っていたぞ。それと、彼女をもう家に連れて来たのか?」
そこには勝手に家に入ってくつろいでいたレクスがいた。
「おい、勝手に入るなよ。それとマイはマイの母親が勝手に・・・」
あ、これ言っちゃまずかったかも。レクスがニヤついてるよ。
「ほう、もう親に挨拶までしているのか。早いじゃないか」
「違うって!!」
「どこが違うのだ?女を家に連れ込んだ時点で怪しいだろう」
「ぐっ!」
「ハハハ、やはり面白いなお前。だが、今日ここに来たのはお前をイジる為じゃない」
「何かあったのか?」
レクスが勝手に家に入ってきたのは初めてだ。何かあったのだろう。
「ああ、前に言ったことがあるが王国内と友好国を巡る旅を明後日から行くことになってな。急だが当然お前もついてこないといけない」
「本当に急だな。ただそうなると魔法の練習は無理だな。ごめんな、マイ。また今度教えるわ」
残念ながら旅に行くなら魔法の練習は出来ない。そう思ってマイに謝ったのだが反応がない。
ていうか固まってる。そんなマイを気にせずレクスがとんでもない案を提案してきた。
「別に1人くらい同行者が増えても変わらん。連れていきたいなら連れてくれば良い」
これは本格的に彼女だと思ってやがるな。
そう思っているとやっとマイが動き出した。
「あ、あの・・・・・・えっと・・・マイ=スタールと申します」
なんか緊張でガチガチになってるな。
「そうかしこまるな。カイと同じように接してくれ」
「は、はい。かしこまりました」
いや、接し方変わってないよ?それは置いておこう。
「どれくらい掛かるんだ?」
「2週間弱だな。本来は2カ月間かけて旅をするんだが、魔法学校に通う事になっているため本来の時期に行くためには学校を休まなければならない。そこで二回に分け旅をすることになったんだ」
「後1回はどこで行くんだ?」
「予定通りにいけば2年の長期休暇中だな。」
なるほどな。学校を休まずに旅をするには2回に分ける方が都合が良いのか。
ただ2週間弱かかるとすると・・・・・・
「マイはどうする?一緒に行く?」
「えっ!!」
どうしようとマイは考える。着いていけば予定よりも長くカイといられる。
無意識にそう考えてしまうが、ただそれは王子様と一緒に過ごす事にもなる。
かといってついていかなければ次にカイと会えるのがいつか分からなくなる。
母親に誰かにとられるかもと言われ、それを想像したがそれは耐えられない。
「行きます。ただお母さんにも説明しないと」
「ふむ、なら私も行こう。元はと言えば私が旅をしないといけないのが原因だからな」
「じゃあまだ店やってるだろうから行くか?」
そういう流れでまたスタール亭に来た。
「いらっしゃい。あら、マイにカイ君と・・・・・・レ、レクス様!!」
レクスが来てびっくりしたのか声が大きくなったことで周りも気づき皆固まってる。
「皆楽にしてくれ。今日はどちらかというと私的に来ているからな」
それでもなかなか動き出さない。
「すまないが個室を準備してくれないか?」
「は、はい。分かりました」
「それと話があるのでついてきてくれ」
「わ、分かりました」
そして、個室が用意され、レクスと僕が横に座りその対面にマイとその母親が座っている。
「そ、それで話と言うのは?・・・・・・もしかしてもう結婚することになったんですか?」
これはやばい。レクスが勘違いするやつだ。
「やはり、そこまで進んでいたのか。さすがだな、カイ」
ニヤニヤしやがって!
「だから・・・・・・」
その言葉はレクスによってさえぎられる。
「残念ながらそのことではありません。ここに来たのは・・・・・・」
そしてレクスが来た理由を説明する。
「なるほど。つまり娘がカイ君といる時間が長くなるということですね?そういうことなら大歓迎です」
もっと身の心配とかしようよ。と思っていると
「カイ君がいたら身の危険もないでしょうし」
あ、ちゃんと考えてました。
「ええ、カイの強さは私が保証します。それと2週間も一緒にいたら仲が進展することでしょう」
「そうでしょうね。マイ、頑張りな」
「えっ、あ、うん」
なんというか話についていけてない感じでマイが返事をする。
こうして僕とマイはレクスの旅についていく事が確定した。
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