「元」面倒くさがりの異世界無双 改

空里

第1話転生

僕は地球とは違う世界に転生し、生活している。色々あったが平和になった。

その報告に墓に来ていた。その墓の中は空だ。

その事実は悲しくもあるが、まだ僕の中で生きているのではないかと思えるものでもある。

同行者は数人いる。僕が先頭で手を合わせると皆手を合わせる。

「見てるか?平和になったよ」

それに応えるように爽やかな風が吹いた。



俺は真っ暗で痛みも暑さも寒さも何も感じることの出来ないこの状況から自らの死を自覚した。

何がどうなって死んだのか覚えていない。何もすることの出来ない状況だからか次第に自分の人生を思い返していた。

色々あったが一番輝いていたのは幼少の頃だろう。小さい頃は才能があったのかいろいろと自慢出来る特技を持っていた。しかし、俺は慢心からか面倒くさがりだからか努力をしなかった。成長していく中で徐々に皆に抜かれていく。それは悲しくもあったがいつしかそれも当然のように受け入れるようになった。

そんな中で入った中学の部活では運動部に入った。先生や親がいたのもあり、割と真面目に取り組んだ。そのおかげかその地域の大会で良い順位が取れたり、県大会に行けたりと本当に自分がやったのかと思えるような結果を残した。この頃も輝いていた時期といえるかもしれない。

調子にのった俺は高校でも続けた。しかし、思ったようにいくわけもなく成績を残すことはなかった。大学には行かないと決めていた俺はいたって普通の会社に就職。1年目は人付き合いも大切だと飲み会などにも参加していたのだが・・・・・・まあ、未成年だから飲み物はジュースだったが。

それも面倒くさくなり辞めてしまった。そんな俺の会社での評価は真面目だが飲み会などには来ない堅物だった。大人になってから努力していればと何度思ったことか。そう思っても行動を起こしたことはなかった。やり残したことこそあまりないが後悔が強い。その時ある変化が起こった。


誰かに呼ばれている?いや、気のせいだろう。気のせいじゃなかったとしたら・・・もしかしたらエンマ様に地獄行きを宣言されるのか?そんな悪いことはしてないような・・・・・・努力しなかったこと?才能の無駄使いだって怒られるのだろうか?こんなことを考えていると、

「お・・・・・・! お・・・て! 起きてってば!」

今度ははっきり聞こえた。もしかして死んでなかったのか?そう思い目を開ける。

そこは見た感じRPGに出て来る洞窟またはダンジョンのような場所だった。

ゲーム好きの俺からすると普通なら興奮するかもしれないが状況が把握しきれてないためそうすることはなかった。

どこだ?ここ。病院じゃないのか?もしかしてさらわれた?いつもと何か違う状況から思わず考え込んでしまった。取りあえず今の自分の状態を確認しようと首を動かし自分の体を見た時、気を失いそうになるほど驚いた。

なんてったって体が幼稚園児くらいの大きさになってるんだから。考え込んだり驚いたりしてると急に話しかけられた。

「おーい、大丈夫か?」

そこにいたのは、

「妖精!?」

そう、まさにアニメに出て来る妖精のようなやつがいた。

「う~ん、妖精とは違うんだけどまあいいや。君がここにいるのは他ならぬ僕が召喚?いや、転生させたんだ。名前は覚えてる?」

「名前は・・・・・・あれ?思い出せない」

「やっぱりか。最後の最後でミスっちゃったんだ。ごめんね」

ペロっと舌をだす妖精に思わず

「おい!」

と叫んでしまった。こいつ、人を転生させといてそれはないだろう。ミスるって何やってんだ。

この先がすっごく不安だ。

「そう怒らないでよ。君、僕が転生させないと死んでたんだよ?」

「だったらなおさらゆっくり眠らせようとかあるだろ!」

俺だって死にたいとは思ってなかったが死んだのなら潔く眠りにつきたい。努力しなかったことを後悔していたとはいえどうせしないことを自分で理解していたのもある。そう思い言ってみた。

「だって君、死に際に後悔したでしょ。もっと努力すれば良かったって。その願いを叶えてあげようと思って転生させたんだけど・・・・・・ダメだった?」

純粋な目でそう言われてしまうと勢いが止まってしまう。

「まあ、思ったけど・・・・・・って何でお前転生させること出来るんだ?」

さらっと聞き流してしまいそうだったが途中で結構とんでもないことを言っていたのを思い出した。

「・・・・・・そ、それはまあ後にしてまずは名前だね。僕が決めて良い?」

「お、おう、なんかはぐらかされた気がするけど」

「カイ=マールスってどう?」

思い付くの早すぎないか?人の名前そう簡単に決めるなよ!と思うけど自分では全くと言って良いほど思い付かない。そもそも、この世界での名前の標準が分からない。しょうがないしこれで良いか。

「それで良いよ。お前は?」

「僕は人間じゃないしあまり人前に出ないから名前なんてないよ」

もしかすると人間以外はあまり個別の名前がなかったりするのだろうか

「ふ~ん、ところでなんで俺を転生させたんだ?なんか目的でもあるのか?」

異世界転生の定番と言えば一番に思い付くのは転生して国の王に出会い魔王を倒してくれと言われるというものだろう。ライトノベルが好きだったこともありすぐにそういうことが思い付いた。

「話が早いね。まず、なんで君を選んだかと言うと才能があったこと。そして努力すればって後悔してたから強くなれると思ったから。目的は君が強くなって気が向いたら話そうかな」

そう言ったら大体話さないパターンだなと思いつつ目的を話さないってどういうことだとも思うが、今は絶対に教えてくれそうにないため話を進めることにする。

「なるほどな。転生させてあげたから強くなって手伝って欲しいってことか?」

「まあ、そうだね。ただ僕のお願いは絶対じゃない。君が断るのなら諦めるよ」

いかにも渋々といった感じの表情でそう言われる。

「そんなこと言われたら断れねえじゃねえか」

「ありがとう、そう言ってくれると思ったよ」

すぐに笑顔になった。表情豊かだな。


そんなこんなで強くなることを決めた俺はどうやって強くなるのか聞いてみた。ここが地球であれば筋トレなどだろうとある程度思い当たるものがあるのだが、ここはなにせ異世界だ。

「そうだね。まずは魔法からかな。その体だと鍛え過ぎて成長しなくなってもいけないし」

・・・・・・魔法ってあれか?詠唱とかして打ち出す厨二病全開のやつか?昔の黒歴史がよみがえってくる。

今後そうしないといけなくなるのかと思うと背筋が凍る。

「ふふん。今、詠唱嫌だなって思ったでしょ。しなくても大丈夫だよ。まあ、するのが一般的だけど」

よ、良かった。詠唱なんてしてたら俺の精神がもたない。相手の攻撃よりも先に精神的大ダメージをくらってしまうところだった。安心と同時にあることを思い出した。

「ていうかやっぱりお前の名前無いと不便だな」

妖精?的には良くても一緒にいるこちらが困ってしまう。

「そう?好きに呼んでくれて良いよ」

そういわれても妖精じゃないなら何て呼べば良いのか分からないため名前を考えることにする。

「そうだな。う~ん・・・・・・」

ダメだ。全く思い付かない。前世では彼女いない歴=年齢だったから当然子供もいないし名前を付けたこともない。そして、前世の物語に出て来る妖精の名前も覚えてない。

こうなるともう何かに関連付けて考えるしかない。俺の名前はカイだから・・・漢字にすると海か。となるとそれに並ぶのは空か陸のどちらかかな。色合い的に似ている空にするか。空の色を反射してるから海が青いって聞いたことがある気がする。まあ、いいかこれで。

「じゃあソラで良いか?」

「うん。そんなに考えてくれて嬉しいよ」

ごめん、途中まで真面目に考えてたけど面倒くさくなって途中から適当に付けた節がある。

そんなこと本人の前では言えないけど。俺の名前も結構適当に付けてそうだったし別に良いだろう。

「で、魔法ってどうやって使うんだ?」

話を元に戻す。実際結構気になっている。

小さい頃魔法が使えたら何て考えるのは皆が通る道だろう。

「その前にルールを作りたいんだけど良いかな?」

ちょっと焦らされている気分になる。

「良いけど・・・・・・」

そう言ってから鬼畜なルール付けないよな?と不安になる。

「簡単だよ。一つ目僕が言う訓練を毎日真面目にやること。二つ目僕が一緒の時以外ここを出ないこと。三つ目一人称を僕にして言葉使いを丁寧にすること。四つ目人前に出るときは僕のことを隠すこと。以上だよ」

納得できる内容と出来ない内容があった。

「一つ目と二つ目は分かったけど、三つ目と四つ目はなんでだ?」

一つ目は恐らく俺が面倒くさがりということを知っているためだろう。そして二つ目はここがダンジョンみたいだからこの外は危険な場所であってもおかしくないと思った。

「三つ目についてはその体で喋っていることを考えてよ。事情を知らない人が見たらどう思うかな?四つ目は僕は君にしか見えないと思うけど君が僕に話しかけると独り言みたいになるからかな。僕もできるだけ人前で声は掛けないようにするし」

うん?その体でって?そうか!今、幼稚園児くらいの体になってるんだった。確かにこの体で俺とか言ってるのを見たら引くわ。四つ目に関してはやっぱ妖精みたいな性質だな。妖精ではないって言ってたけど。

・・・・・・・・・

あれ?待てよ。この体どこから出て来たんだ?元の俺の体は死んでいるわけだし。体の時でも戻したのか?そう思って色々体を調べていると

「ああ、その体は僕が作ったんだ。今5歳かな。イケメンになるように作ったから将来モテモテになるかもね。なんなら僕がいい人紹介してあげようか?」

ソラは鏡を出して俺、いや僕に見せながらそう冗談めかしく言った。確かに顔立ちは整っているしこっから太ったりしなければ本当にモテモテになるかも知れない。

というか、人前に出ないやつがどう紹介するんだよ!


ちなみに、髪や目は黒色のままだ。正直他の色だと本当に自分なのかと疑ってしまう。前世では彼女なんて面倒くさいしいらないって見栄を張っていた。

・・・・・・・・・ただ単に相手がいなかっただけです。ごめんなさい。家に自分を支えてくれる人がいるなんて憧れるよ。もし、前世でいたらもしかすると僕も変われていたのかな?

・・・・・・ところでまだ魔法について聞いてない。

「魔法はどうやるの?」

「そうだね。まずは、魔法を使う時に使う魔力を感じて見ようか?魔力はこの世界に溢れているから感じようとするとすぐに分かるよ」

よく分からないが取りあえずやってみる。するとなんとも言えないけど力を帯びているものが周りに漂っているが分かった。

「感じ取れたならそれを自分の周囲に集めるように意識してみて」

そんなことが出来るのか?やってみるか。

意識すると何となく体に力が入ってしまう。

おお!?これは徐々に集まってくる。これは凄いな。イメージしただけで集まってきた。これはイメージすれば魔法も出るのか?試してみるか。

ボンッ

今イメージしたのは火。それはまるで水素が近付けられた火に反応したようにすぐ消えてしまった。

それを見ていたソラは

「えっ?もう火出せたの?魔法の説明してないのに」

驚きようからして凄いらしい。すぐ消えたんだけどな・・・・・・

「これで良いのか?」

「うん。上出来だよ。初めてで火まで出せるなんて思ってもみなかったよ。これから毎日魔力を集める練習をしてね。集められる量を増やすと魔法が安定するから無茶苦茶だと思う魔法も撃てるようになるよ」

「わ、分かった」

面倒くさいなんて思ってないぞ。今回は努力するって決めたんだ。こんな初めから諦めていたら前世と変わらない。そう思い毎日の訓練をする覚悟を決めたのだった。


とりあえず今日はもう寝て良いということなので寝ることにした。

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