第11話これってまさか・・・・・・

マイが料理を運んでいるのが見えた。

その方に向かって走っていく。


「どうぞ」

「ありがとう。助かるよ」

声が聞こえるところまで近づいてきた。

「次も行かないといけないので失礼します」

「偉いね。頑張ってきな」

その声と共にまた別の場所に行こうとするマイにそれまでよりも走る速度を上げて追いつく。

「ハア、ハア・・・マイ、もう大分料理も並んできているし食べよう」

体力はソラに鍛えられたためこれだけ走っても若干息が上がる程度で済んだ。

「仕事は最後までやらないと」

責任感が強いなと思いつつ、でもそんなところも良いんだよなと思ってしまう。

「じゃあ、手伝うよ」

その結論は僕の中ですぐに出た。

「私よりも王子様の護衛をしないで良いんですか?」

「大丈夫だよ。今はアゴットさんがついてるから」

アゴットさんは模擬戦で僕に負けたとはいえ相当な実力者。そして、民衆にも警備軍長と知れ渡っており、強いということは周知の事実だった。

「・・・・・・それなら大丈夫ですね。あと少しですけど頑張りましょう」

「うん」


やってみて気付いたが、料理を運ぶのは結構大変だ。まず、料理をこぼさないようにし気を付けなければならず精神的にくる。

またそれをするのと同時に体幹を安定させなければならない。

それを平然とやってのけているマイは凄いと思う。やはり飲食店でお手伝いをして身に付けたのだろうか。

面倒くさがりな僕には到底習得しない技能である。

「これで最後ですね」

「それじゃあテーブルに行こっか」

「はい」

話す話題があれば結構話すことが出来るなと思いつつテーブルに向かう。



「お疲れ様です」

テーブルに着くとアゴットさんから労いの言葉をもらった。

「ありがとうございます」

「お待たせしてすみません」

マイがそういうのはテーブルに並んでいる料理が一切減っていなかったためだ。

「いや、少々込み入った話をしていてな」

待っていたとは言わないところがイケメンだなと思う。

今度機会があれば参考にしよう。



そんなこんなで昼食をとり始めた。

「そういえばお前が食べる前に言う「いただきます」とはなんなんだ?」

レクスからの質問にどう答えるべきか迷う。

「・・・・・・昔一緒に住んでいた人がよく口にしていたからそれで・・・まあ、食べ物や作ってってくれた人への感謝を表すものかな」

こういうことにしておこう。

「そうなのか。そういえば森の中で二人で住んでいたと言っていたな」

この世界のことをまだあまり知らないためそのように伝えていた。

「ああ、血も繋がってないのに良くしてくれたよ」

死んだことにしているためそう発言する。

実際は人間でもなければ僕の中にまだ生きているんだけどね。

「どこの森で暮らしてたんですか?」

・・・・・・そういえば森の名前は知らないな。

「えっと、王都の近くにある森だよ」

名前は分からなかったが位置を教える。

「ということはライウの森だな。あそこに人が住んでいると聞いたことはないが・・・・・・」

「僕も住んでいる人間は見たことはないかな」

「まあ、二人程度なら調査で見つからないこともあるかもな」

「そうですね。あの森の調査は魔獣こそそこまで強力ではありませんが何分広いため警備軍を全投入しても一週間はかかると思います。

そんなことは出来ませんし、したとしてもたった二人を見つけ出すのは限りなく不可能に近いですね」

アゴットさんがレクスの意見を補足する。

「・・・・・・しかし、なぜその森で暮らしていたんだ?」

・・・・・・どうしようか。

とりあえず何か設定を考えよう。

「多分自分の力を悪用させないためじゃないかな」

「どういうことですか?」

「その人は僕を鍛えてくれたんだけど本当にあり得ないぐらい強くて・・・・・・だから、その力を誰にも使わせないために森に住んでいたんじゃないかな」

「まあ、あの魔法を見せられているから納得出来なくもないが、そんな力を持った者がいなくなれば話題になるはずなのだがな」

「他国の可能性もあります」

「・・・・・・帝国か。ありえる話だな」

帝国という言葉が出た瞬間からレクス、アゴットさんの顔が暗くなる。

「僕も元々どこに住んでいたのかは知らないし、今は関係ないから食べよう」

その雰囲気を変えるため食事に誘導する。

「ああ、悪い食事中だったな」

「これは失礼しました」

暗い顔をしていた二人は切り替えたようで食事を再開し始めた。

それは良かったのだが、

「ま、マイちょっと寄ってきてない?」

明らかに椅子が初めの配置とは異なっており、マイの椅子が僕の椅子のすぐ隣辺りまで移動されていた。

気がつかなかったのは話していたのもあるが、マイがちょっとずつ椅子を動かしていたためだろう。

「あ、ごめんなさい」

「いや、別に良いんだけど、どうしたの?」

「頑張ってはいたんですけど私人見知りで・・・・・・」

・・・・・・あれ?それでなんで僕のところに?

「それでこうなったの?」

「・・・はい」

恥ずかしそうに返事をするマイ。

これって・・・・・・

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