第10話旅の始まり
「改めての説明になるが我々はまず王国内の主要な街を周りその後、近隣の同盟国へという流れで旅をしていく。カイとスタールは悪いが私が領主と会う際は別行動になる。カイだけならばなんとかなるがスタールは女性だ。こちらにそんな気がなくても根も葉もない噂が貴族の間で流れることになる。ということでカイ、ちゃんとエスコートしろよ?」
こいつ、絶対わざとだ。こうするためにマイを連れてきても良いと言ったな。
普通であれば護衛である僕はついていくべきだ。
かといって今そんなことを言えばマイを知らない街で一人にさせるのかという話になるためそう言うことも出来ない。分かってやってるな。
(そんなこと言って嬉しいくせに)
内心を読んで煽って来るソラはもっと性格が悪いと思う。
「その、よろしくお願いします」
「う、うん」
馬車に乗ってすぐその会話が行われていた。
その様子を見ながら馬車に乗っていたもう一人、アゴットはもしやと思いレクスの方を見る。
その視線でレクスも理解したらしく頷いた。
そのやり取りは気まずさを感じているカイとマイが気づくことは無かった。
◆
何時間か進んだ後、馬車が徐々に速度を落としていき止まった。
「そろそろ昼休憩に入ろうと思うのですが、よろしいですか」
もう一台の兵士が乗っている馬車から一人が走ってきてそう告げる。
確かにもうお昼だ。
「ああ、頼む」
レクスがそう答えると、
「昼休憩だ!準備を整えろ!」
先程の兵士が他の兵士に向けて大声でそう伝えた。
それ以降周りが騒がしくなる。
「私も何かした方が・・・」
その様子をただ馬車の中でじっとしながら見ているのが耐えられなかったのか立ち上がろうとするマイを僕が止めた。
「兵士の方も慣れてるだろうから入ると逆に邪魔になっちゃうかもしれないよ」
そう思えるほどの早さで準備が終わっていっているため入ってもほとんど何も出来ないか邪魔になるのは想像できた。
「でも、やっぱり座っているだけは」
「適材適所だよ。だから、もし手伝いたいなら調理が始まったときにいけば良いと思うよ」
「・・・わかりました」
その後少ししてマイは料理のお手伝いをするため馬車を降りていった。
なお、アゴットさんは全体の指揮をしているため馬車の中には僕とレクスしか残っていない。
「もう、手料理を食べたことがあったんだな。速いじゃないか」
「婚約者がいるお前に言われても嬉しくない」
「なら、早く婚約すれば良い」
「あのな、普通に考えてこの年で婚約してるやつなんてそうそういないだろ」
「それもそうだが、法律上は問題ないぞ。なんなら婚約なんて年齢制限なんてない。所詮は約束だからな」
所詮は約束って・・・・・・
「婚約者がいるお前がそれ言って良いの?」
「問題ない。私は王族だからな。何か問題がない限り婚約を取り消すことは難しい」
まあ、そりゃそうだろうけど。
「それをするにしても順序があるだろ?」
「スタールと同居しようとしていたじゃないか。それでダメなのか?」
「だから、それはマイのお母さんが勝手に・・・・・・」
「もう、お義母さんと呼んでるじゃないか?」
いや、名前を知らないだけです。それにマイのとつけているのでお義母さんとは言っていない。
それはそれでどうなんだと言われそうなので話を変える。
「もしかしたらもう好きな人がいるかもしれないだろ?」
(それはないと思うけどな~)
「そもそも好きな人がいる人間がその人以外の異性と同居すると本気で思っているのか?」
二人からの同時攻撃に言い返せない。
「とにかくまだ早いから」
「告るなら言えよ?」
「なんで?」
「影で見るのが一番面白いからな」
わかった。こいつには絶対教えないようにしよう。
◆
しばらくして、料理が出来たとの報告が兵士の方からはいった。
正直、任せっきりなのは申し訳ないが僕はレクスの護衛であるためもし、調理に加わっていたら護衛をせずに何をしているんだという話となる。
季節的に寒さも大分なくなってきているため外で食べるようだ。
気持ちのよい風が吹いている草原で桜に似た花を満開にさせている木から花びらが舞っている。
そこで食事をすることになっているため必然的にお花見を思い出させた。
案内された場所には土魔法で作られた円形のテーブルと椅子が4脚、4人分の料理がテーブルの上に並んでいた。
それを見て周りを見渡す。
アゴットさんは周りの警戒に当たっているようだ。
マイはと思い探すと他の席に料理を運んでいた。手伝いに行きたいけど護衛としてレクスから離れることは出来ない。もどかしいがそのまま席に座る。
レクスも座り他の二人を待つ。
先に来たのはアゴットさんだった。
「お待たせしました。カイ君ここは私に任せてスタールさんを手伝ってきてはいかがですか?」
「いえ、それは・・・・・・」
出来ない。何せこれでお金をもらっているから。
「いいから行きなさい」
「・・・・・・すみません。いってきます」
アゴットさんの有無を言わさない姿勢にもどかしい気持ちが後押しされ行くことにした。
◆
「面倒見が良いな」
「この程度誰にでも出来ますよ」
褒めるレクスと謙遜するアゴットがテーブルに残されたのだった。
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「元」面倒くさがりの異世界無双 改 空里 @riku4
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