第9話準備

説明が終わった後、また僕の家に帰ってきた。レクスは当然一緒なんだが、マイも一緒だ。

何故かというと明日は旅の準備をするため、その時に一緒の方が都合が良いだろうとマイの母親とレクスに言われたのだ。

なんで?別にそれぞれで良いじゃん。

そう思ったが2人に押し切られてしまった。

気まずいって。

・・・・・・・・・一緒にいれるのは嬉しいけど。

レクスは明日準備のために朝集合するということだけ決めてさっさと帰りやがった。

絶対気まずいのを分かってやっているな。これはいつか仕返しをしなければと心に決めた。

そう考えている今もマイとの沈黙の気まずい雰囲気を耐えている。

この沈黙に耐えきれないので

「もうそろそろ夕食にしようか。準備してくる。」

逃げるように台所に行く。

今日は家に置いてた材料を使って出来るだけおいしいものを作れるように頑張った。

好きな子にまずい料理なんて食べさせられない。最近自炊していて良かったと感じるのだった。

その結果おいしいという言葉を貰えた。お世辞かもしれないけど・・・・・・

僕としては普通という感じだった。

それよりも夕食中の会話はそれくらいだったので地獄だった。

僕はコミュ力が高くない。特に女性とは。

前世の職場では仕事の話以外で同僚と話したことはなかったし、休みに会うほど親しい男友達もいはしたのだが休みが合わず合わない事が多かった。

そんなわけでプライベートでは女性どころか人とあまり関わらない日の方が多かったのだ。


「お風呂ためて来るから先に入って良いよ」

気まずさを紛らすためお風呂を準備しにいく。

この家のお風呂は魔方陣等により前世のものをほぼ完全再現している。

湯船には自ら魔法を使いお湯を張る。じゃないと時間がかかる。

今回に限っては時間が掛かっても良かったんだが、待たせ過ぎるのもどうかと思ったのだ。

「お待たせ、お湯張ったからすぐにでも入れるよ」

「ありがとう御座います。あの、やっぱり後で良いですよ」

「気を遣わなくて良いよ。僕は部屋の準備しておくから先入ってて」

「・・・わかりました」

「あ、一応使い方教えとくよ。ついてきて」

そのままお風呂の方に引き返す。


「これ、魔力を流すだけでお湯が出てくるんだ。普段は魔法でしてるかもしれないけどこっちの方が簡単だから使ってみてね。それじゃあ、ごゆっくり」

そう言って、すぐにその部屋を出た。

さすがにお風呂で女性といるのは気まずい。

それからマイに言った通りマイが泊まるようの部屋の整理をする。

いくつも部屋があるけど、とりあえず僕の隣の部屋にした。


その後、リビングに帰ってからなんというかソワソワしつつマイが出てくるのを待った。

「あ、あの、すみません。何か服ありませんか?何も考えずに服も一緒に洗っちゃって」

「ん?あ、ごめん」

声の方向を見るとバスタオルを巻いたマイがいた。

それに気づきすぐに目を背け自分の部屋から服を持ってくる。

さすがに女性用の服はなかった。あっても引かれるだろうことが明らかのため出せない。

それを出来るだけ目を背けた状態でマイに手渡す。

「ど、どうぞ」

「あ、ありがとう御座います」

その後すぐにお風呂の方に走っていった。


それでようやく一息つけた。

心臓が速い。それを落ち着かせる用になぜこの状況になったのか考える。

服を洗ってしまった理由、それはシャワーの水が簡単に出せたからと考えるのが妥当だろう。

この世界では洗濯機なんてものはない。だから、魔法が使える人は魔法で水を作りながら洗うとことになる。それは意外と大変だ。だからこそ温かいシャワーの水で洗ったのだろう。

そういう用途もあったか。僕は服を一瞬で綺麗にする魔法を編み出しているためその用途は思い付かなかった。ちなみに僕もやってみたことがあるが、とても大変だった。

やはり服を洗うためゴシゴシとするのだが、早く終わらせようとてを動かす速度を速めると水の出る量も増え、ゆっくりやるとしても結局魔力の消費が激しくなる。

水を貯めてやれば良いじゃないかと考えるかもしれないがそれを維持するのにも魔力を消費するのだ。

それ先程の比じゃないほどに。

ちなみに今湯船に張っているお湯は湯船に設置している魔法陣により消えないようにしているためその魔法陣に魔力を流し込むだけで良くなっている。

そのため魔力の消費量は少ない。

「服、貸してもらってすみません。それと、良い湯加減でした」

マイは僕が渡した服を着てリビングに入ってきた。

「そ、それは良かった。これから入ってくるから自由にくつろいでて良いよ」

平静を装うのがやっとだった。これが彼シャツというやつなのか?

ちょっとダボっとしてるところがたまらない。

平静が崩れる前にその場を離れお風呂に入った。



その後お風呂から出てリビングでまたもや気まずい空気となっていた。


時間の流れを遅く感じるカイだったが、ようやく寝る時間帯になったのでマイを部屋に案内し自分は自室に入った。

ベッドに横になると疲れていたのかすぐ眠りについた。


翌朝、マイがいるため少し早めに起き朝食の準備をしようと台所に向かう。

すると、マイがそこで料理をしていた。

「お、おはよう。早いね」

「あ、お、おはようございます。その昨日は作っていただいたので今日は私が作ろうと思って」

もしかして口に合わなかったかな?と思ったが、そのような雰囲気ではないことにすぐに気づいた。

「ありがとう」

「いえ、私は泊めて貰っている身なので良いですよ」

良い子だな~。

こうしてマイが作ってくれた朝食を食べた。

僕が作ったのとは天と地の差があるほどおいしかった。

沈黙で気まずいのは相変わらずだったが。



そうして気まずい時間を過ごしているとレクスが来た。

「おはよう。カイ。昨晩は楽しめたか?」

「そんなことしてねぇよ!!てか王子様がそんなこと言っちゃダメだろ」

しかもマイの前で。

「ああ、心得ている。お前の前でしか言わん」

それは僕をイジる為か?そんなに楽しいか僕をイジるの。

(すっっっご~く楽しいよ!!)

ソラからの返答が来た。そんなに嬉しそうに言われたら言い返す気にもなれない。

「それはともかく旅の準備だ。買い出しに行くぞ」

「はぁ、分かったよ」

「あ、あの本当に私がご一緒しても良いのですか?」

「今さら何を言っている。ダメなら誘わん」

「そ、そうですか。失礼しました」

「では行くぞ」

そんなこんなで買い出しに出た。

レクスは前の時よりマシな変装をしていた。

買い出しは割愛させて貰う。特に珍しいものを買うこともなかったし、人混みから人を助けるなんてこともなく普通に終わったからだ。その間レクスにイジられ続けていたのは言うまでもない。

そうして家に帰ってきたのだが、レクスは早々に帰りやがった。

心の中で舌打ちをしてるとマイに話しかけられた。

「あの、私のこと迷惑とか思ってないですか?」

「えっ?そんなこと一切思ってないよ」

「本当ですか?」

「正直、こんな広い家に一人で住むのって結構寂しいんだよね。だからいてくれて助かってるくらいだよ」

これは本心である。レクスがあまりにも広い家をくれたから寂しさはそれなりに感じていた。

マイが家にいて嬉しい理由はもう一つあるが、それは言えない。

(だから、言えば良いのに好きだって)

ソラには相変わらずそう言われるが、これには順序と勇気が必要なのだ。

他にも色々あるかもしれないけど特にその二つは足りない。

「そうですか・・・・・・もし良ければ帰ってきたら魔法の練習を・・・」

「うん、約束したからね。レクスに休みをもらっておくよ」

「ありがとう御座います」



そして翌日を迎えた。

今日は旅に出る日。

レクスと合流するために王城に来た。

王城の前にはすでに準備が終わっているレクス、アゴットさんそして数人の兵士と馬車があった。

「よし、これで揃ったな。それで出発しよう」

こうして旅が始まるのだった。

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