第15話夕食
(良かったじゃん、本格的にデートみたいになって)
と、倒置法だと?そんな強調しなくてもいいだろ!余計に意識してしまうじゃないか。
「何を食べます?」
「そ、そうだなぁ・・・・・・」
ソラのせいで頭が真っ白だ。マイに優柔不断で頼りないって思われたらどうしてくれるんだよ!
(いや、元から結構優柔不断じゃない?)
・・・・・・・・・聞かなかったことにしよう。
(あ、逃げた)
逃げてないわ!それよりも考えないといけない事があるだけだ。
周りを見渡し、手頃そうな飲食店を見つける。
「あそこなんか良いんじゃない?」
「そうですね。行きましょう」
良かった。とりあえずさっきの優柔不断で頼りないとは思われてないはずだ。
(今隠したところで後でバレるよ?)
・・・・・・とりあえず今回は乗りきれたということで良しとしておこう。
◆
入った店は誰もが気軽に食べに来ることが出来る比較的安価な店だったようだ。
この世界の料理についてはまだそこまで詳しくはないがとりあえず食べることの出来そうな定食を選んだ。
すると、マイも同じのを注文した。
「これ、好きなの?」
「はい、子供っぽいですかね?」
恥ずかしそうにそう問うマイはそれはそれは可愛かった。
「そんなことないよ。もしそうだとしても僕も頼んでるから僕も子供っぽい」
そう言って笑うとマイも一緒に笑ってくれる。
やっぱり可愛いなぁ。
(そう思うなら告白すれば良いのに)
だからそれには順序というものが・・・・・・
「そういえばカイさん、疲れてませんか?」
「え?どうして?」
「道中ずっと襲ってくる魔獣を討伐してたじゃないですか」
あ~そういえば確かにそう言われると疲れそうな仕事をしてるなとは思う。
だけど、
「体は動かしてないからそこまで疲れてないかな」
なんならマイが心配してくれているという事実に嬉しさを覚えている節がある。
「魔法を使うと疲れるじゃないですか」
確かにそういう疲れは以前は感じていた。しかし、
「僕は結構鍛えられてるからね、あれくらいだとほとんど疲れを感じないんだよね」
言ってて改めてソラに人体改造されているなぁ。
(人聞きの悪いように言わないでよ。普通に鍛えただけだよ)
100歩譲って人体改造は言い過ぎだったとしよう。
ただ、「普通に」鍛えただけは訂正してもらいたい。
・・・・・・あれ?反応が返ってこなくなった。
普通じゃない自覚はあったんだ。
「やっぱり、カイさんはすごいですね」
「そんなことないって」
(照れちゃって)
都合の良いときだけ話しかけてくるのやめようか。
そもそも人前ではあまり話しかけないようにするんじゃなかったっけ?
(ここから見てるだけはつまんないんだよ。カイさえ頑張ればバレることはないから、頑張れ!)
・・・・・・やっぱり基本無視の方針をとろう。
やっぱりまだ気まずい沈黙が流れる時間も多く、その時間に箸が進むため早く食べ終わった。
そして、お会計の時間になる。
やはり会計は自分が出すべきだと思い、お金を出そうとするが、
「私が出しますよ」
「いや、僕が」
「・・・・・・せめて私の分は」
「良いって、僕が巻き込んで連れてきたんだから僕が出すよ」
「・・・・・・・・・わかりました。ごちそうさまです」
店員さんの前ということもありすぐに引いてくれた。
(イチャイチャ出来て良かったね)
これはイチャイチャじゃないだろ。
(もし、店員さんだったらイチャイチャしやがってって思うんじゃないかな)
た、確かに。
意識してしまいそうになるのでこれを考えるのはやめておこう。
◆
少し時間は遡りカイ達と別れたレクスは緊張した面持ちでイレイス邸に向かっていた。
その足取りはやや遅くアゴットもやれやれといった感じで後ろからついていっている。
アゴットはもう少しレクスは堂々しても良いと思っているのだが、レクスはローゼと婚約して以来ローゼの父親つまり義理の父に会うときは必要以上にかしこまってしまっている。
そんな重い足取りでイレイス邸で向かっているとフードを被った怪しげな人物に腕をつかまれる。
何事かとすぐに振り向くレクスと警戒をするアゴット。
当然のごとくレクスは変装しているためレクスだと認識しての行為なのかそうでないのかわからない。
そんな二人の様子にレクスの腕をつかんだ人物が二人にだけ見えるようにフードをあげる。
その顔を見た瞬間アゴットは警戒を解き、レクスはその人物にバレないように小さくため息をつく。
「来ちゃった。アゴットさんお疲れさまです。驚かせてしまってすみません」
「いえ、私はお構い無く」
「なぜ迎えに来たんだ?」
「待ちきれなくて」
「バレないようにするためにそれはやめてくれと・・・・・・」
そう、これは極秘の旅。そのため知っているのはその街を統治している貴族だけとなっている。
この街の統治をしている貴族の娘ということもありローゼの顔は知られている可能性がある。
そのため迎えは不要と伝えていたのだ。
「バレなければ良いんでしょ?このフードで顔は隠れるからバレることはないよ」
そのやり取りを見たアゴットはやはりお似合いだなと思ったのであった。
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