第6話護衛の仕事
レクスの護衛の仕事をすることになった僕は王城のしかも王城の一室で寝泊まりすることになった。
どうしてこんなに信用されているのやら。聞いても直感と返されそうなので聞いてない。
返されそうというかほぼ確実だ。それ以外で答えられたら逆に驚いてしまう。
僕が王城で寝泊まりすることは、周りに反対する人が多いだろうと思っていたのだが、王子様のことだから何か考えがあるのだろうという感じで反対されることはなかった。以外と王子様は信頼されているようだ。アゴットさんも同じようなこと言ってたし。何故勘を信じて動いている人が信頼されているのか気になった僕は城の人にレクスの印象を聞いてみた。
話からすると、普段は真面目で聡明なのだが時々突拍子のないことをする。しかし、なんだかんだ成功しているので今はそれを期待している人もいるのだとか。
やっぱり勘で動いているみたいだな。
しかし、勘が良く当たるのは凄いな。そんなに当たるのなら従う方が良いのかもしれない。
「勘ってこんな当たるもんなの?」
個室が用意されているためソラに話しかける。
(そうだな~、まあ、当たる人は当たるもんなんじゃない?)
答えになっているのかわからなかったがまあ気にしないことにしよう。
そんな評価の王子様レクスと今、謁見の間に入ろうとしている。理由は僕が護衛になることの報告と僕の紹介らしい。
それにしても最近会うメンツがおかしい。レクスに警備軍長のアゴットさんそれから今会おうとしている国王とその側近達だ。謁見の間の扉が開いたのでレクスの少し斜め後ろでレクスについて行く。
王座には30代くらいの国王にしては若く感じる人が座っている。レクスと同じ赤髪だが少し濃い。
レクスのチャラそうな要素を消して成長させた感じだ。性格はそこまでチャラくはないみたいだけど。
その王座の前でレクスは立ち止まる。僕もそれにならう。
「父上、この者が先日私が護衛にしたいと申した者です」
「カイ=マールスと申します」
自己紹介をしてると国王が近くの兵士に目で合図を送っていた。すると、数人の兵士達が僕だけでなくレクスを含めて囲もうと走ってきた。しかも、武器を持って。念のため防御の魔方陣をインベントリから透明化の魔法をかけた状態で取り出しておく。
案の定武器を振りかぶってきていたので用意していた魔方陣を起動させながら投げレクスを覆うように展開させる。すると兵士達はレクス向かっていたのを含めて全員で僕の方に来た。自分で防御の魔法を使っても良いのだが、それをすると自分は攻撃出来なくなる。そのため全ての攻撃を避けることにした。前後左右から攻撃が来るのだがその全てを避け、反撃にでようとした。
「そこまでだ」
国王から声がかかった。兵士達は何事もなかったかのように元の位置に戻った。
「いきなり悪かったな。レクスを頼める者かどうか試しておかねばと思っていたのだよ」
レクスも平然としている。これはこういうことが起きることを予測していたな。
一声かけてくれといても良いじゃん。
「父上、アゴットと模擬戦をさせるだけでは足りませんでしたか?」
「強さだけで見るならそれで充分なのだが、人を護るのは簡単ではない。強いからといっても、ようは足手まとい的な存在を抱えると負けてしまうことが多いのだ」
「それでは父上、カイは合格でしょうか?」
「ああ、ダメ出しのしようがない。どこでそのような子を見つけてきたのやら。貴重な存在だ。大切にするのだぞ」
「はい。心得ております」
「うむ、それではカイと言ったな。お主に我が息子レクスの護衛を任せる」
「ご期待に答えられるよう精進いたします」
「それでは公務に戻らなければならないので失礼する」
こんな感じで終わった。そして今はレクスの部屋に戻ってきている。
「はぁ~、緊張した~」
「なに、今さらだろう。王子である私とこうやって話しているのだからいずれ父上に会うことも分かっていただろう?」
「それはそうだけどさ~。」
「そうだ。明日お前に用意しているものの準備が整ったから見に行くぞ。」
「用意しているもの?」
「明日になれば分かる。そして、多分喜ぶだろう」
この日はそれ以降何事もなく寝ることになった。
◆
翌朝、準備が終わるとレクスについてこいと言われたので今、移動中だ。
レクスは王城から徒歩5分位の所にある家の前で止まり、
「ここだ」
家を指しながらそう言った。
「どういう事?」
「私が用意していたものはこの家だ」
・・・・・・えっとどういう事?
「だから、この家に住んで良いと言っている」
「・・・・・・え!?マジで!?」
王子様って凄いな。すると、笑いながら
「その反応を見るために用意したのだ。ちゃんとリヤクションをとってくれたから私も満足だ」
いや、リヤクション見るために家まで用意するやついるか?
さすが王族と言えば良いのか。
「中に入るぞ。」
「お、おう。」
家は平屋で部屋が5つに5~6人位が囲めるテーブルがあるリビング。その横に立派な台所がある。
一人で住むにしては広すぎないか?
一通り見回った僕たちはリビングにあった椅子に座った。
「気に入ってもらえたか?」
「一人で暮らすには広すぎないか?」
「いや、お前が愛人をかこうとなるとこれでは足りんだろう?」
「なんで愛人かこう前提で作ってんだよ。愛人なんてかこわないよ」
「ハハハ、冗談だ。やはりお前といると楽しいな。心配しなくても私が毎日来てやる」
「王子様って暇なのか?」
「そんなわけないだろう。だが、休憩は大事だし護衛のお前がいるのだから何も言われんだろう」
「そんなもんか」
この時、僕達が何者かに見張られていたことに気づいていなかった。
◆
ある小国の一室、その国の王と思われる人物と怪しげな人物が話している。
「して、ウェンテライウの王子の弱みは見つかったのか?」
そう聞くのは国王と思われる人物。
「ええ、明らかに平民の者と親しくしているらしく、婚約者を襲うよりリスクが低いでしょう」
そう返したのは怪しげな人物だ。この中の平民の者とはカイのことである。
カイが男か女か、そして護衛ということを言わなかったのは、意図してのことだろう。
婚約者というのは、レクスは次期国王なので次世代に繋ぐために早めに婚約者を決めているのだ。
「ほう、ではその者を攫うことが出来れば・・・・・・」
「大国を裏で牛耳ることも可能でしょう」
◆
どこかでそんな話が行われていることを知るよしもない僕とレクスは、入学試験のために学校まで向かっていた。徒歩で。理由はレクスが友人と徒歩で通学するのも学校の醍醐味だと言ったためである。
今回のを通学と言って良いのかは定かではない。
たとえ王族とはいえ実力がなければ入れないらしい。
ちなみに家をもらってから数ヵ月経っている。変わった事と言えば冒険者ギルドに入ったことで身分証明書が手に入ったくらいだ。
試験は実技のみだそうで筆記はない。この世界では魔法を使える者は頭が良い、もしくは良くなる見込みがあるという謎理論があるみたい。
これには本当に助かった。筆記がもしあった場合ソラ監視のもとサボれない勉強の日々が始まってしまうからである。それを避けられただけでも嬉しい。
学校は王城から僕の家とは反対方向で徒歩10分位の場所にある。いくら近いとはいえ王族が徒歩で行くなんて大丈夫なのか?今更不安になってきた。結局何ごともなく学校に着いた。
学校は至って普通の3階建ての校舎と体育館、それと魔法の練習場がある。結構丈夫に作られてそうだ。
試験は魔法の練習場でやるみたいだ。
レクスが現れたことで周りが多少ざわついているが気にせず試験会場に行く。
すると、試験官が駆け寄って来た。
「よくお越しくださいました。レクス様、さあこちらへ」
「ここでは特別扱いはなしではなかったか?私もしっかり列に並び試験を受ける」
「そうでございますか。失礼しました。それでは試験に戻ります」
試験官の人は走って帰って行った。
「よかったのか?」
「いや、周りの様子を見ておくのも大切だ。列に並ぶついでにそういうことをするつもりだ」
「なるほどな。本命は?」
「お前の魔法が見てみたい」
そういえばアゴットさんとの模擬戦で使った氷の魔法以外見せたことなかったかも。
向こうで微かに魔力の動きと詠唱みたいなのが聞こえてくる。恥ずかしいから聞かないようにしよう。
そろそろ、僕達の番だ。ちなみにレクスが先だ。
試験の内容は試験官が防御魔法をかけている木製の人形に魔法を放つというもの。僕からすると簡単に突破出来る防御魔法なのだがこれを破れない者が大半を占めているらしい。
この世界の魔法のレベル低いな。
それは良いとしてレクスの番がきた。そういえば僕もレクスの魔法は見たことがなかったな。
詠唱は聞き流して魔法だけ見ようと思っていたのだが、詠唱が聞こえる前に火の魔法が防御魔法を貫き、木製の人形を燃やしていた。
無詠唱派だったんだな。そう思っているとレクスに試験官が話かけていた。
「レクス様は無詠唱派でしたか。無詠唱であの威力さすがでございます。」
「いや、私の護衛には到底及ばん。」
レクスは僕を指しながらそう言った。
僕の攻撃魔法見たことないよね?勝手にハードル上げんなよ。
「ご謙遜を」
試験官はさすがにそれは信じられないとそんな様子だ。カイは知らないのだが、今のレクスの魔法は今年の生徒の中で断トツトップと言えるほどだった。その魔法で到底及ばないと言われても信じられないだろう。
「謙遜ではないのだがな。まあ見れば分かるだろう。」
そんな感じで僕の番だ。レクスが人形を燃やしたので新しい人形が用意された。
どの魔法を使おうかな?まあレクスと同じ火の魔法で良いかな。今回は速さとかは求められてないから魔方陣は使わず普通に魔法を使う。念のため防御魔法を人形の奥に作っておく。案の定一瞬で人形に使われている防御魔法と人形を貫き僕が用意していた防御魔法に一直線。
準備してなかったら試験会場を破壊してたかも。そんなことをしたら怒られてしまうだろう。
それを防いだため上出来だと思い周りを見る。ほとんどの人が口を開けたまま動いてない。
威力結構抑えたつもりだったんだけどな。やり過ぎたかもと思っていると、
「さすがだな。やはり護衛にして正解だったな」
レクスだけは笑いながらそう言ってきた。
「それでは帰ろう。」
「お、おう。」
あまりにも上機嫌のレクスに戸惑いながら家に帰るのだった。
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