第17話天の声

「えっと、ごめんね。こんなことになっちゃって」

二人部屋に入りとりあえず謝ることにした。こうなったのもマイを連れてきた僕が悪い。

いや、レクスも悪いとは思うけど・・・・・・

今回に限ってはしょうがないとも考えられるため一人増える流れを作った僕が悪いだろう。

それにしてもマイが来るようになったのは旅に出る少し前だったのに何で僕に割り当てられる予定の部屋は二人部屋だったんだ?

いや、あの家の時に何か言ってた理由の可能性があるためそれ以上は考えないようにしよう。

「いや、私こそすみません。私がついてきちゃったから・・・・・・」

「マイは悪くないって」

(好きな子相手だからって甘くなってるんじゃないですか?)

ソラの声が聞こえてくる。

・・・・・・そういえば「そら」って漢字では「天」とも書くから天の声になってる。

今は関係ないから置いておこう。

別に甘くなっているわけじゃない・・・・・・と思う。

多分。

(多分がついてるじゃん。天の声の勝利ってことで)

がっつり僕の思考を読んでたのか。

天の声云々の話は別にソラに伝わるように考えていたわけではないのだが・・・・・・

「カイさんのせいでもないですから私を気にせず自由にしてくださいね」

やっぱり優しいなぁ。

(気にしないなんて無理でしょ?)

余計なことを言わないでくれるかな?

そんなことは自分でも分かってるけど今はマイの優しさに浸ってたかったのに。

「ありがとう」

脳内ではソラへの不満があったが、それを表に出さずマイに感謝を述べる。

「でも、マイも僕を気にせずに自由にして良いからね」

(それで無視されたら傷つくくせに)

ソラはいちいち余計なことを言わないでくれるかな?

「ありがとうございます」



それから思い思いに時間を過ごしていくが、いくら気にしないようにしても二人でいるのに無言の空間なのは居心地が悪くそわそわしていた。

(話しかけたら良いのに)

どんな話をすれば良いんだよ?

この世界については多分この世界の小学生にも負けるほどだと思っているというのに。

(前世の話とか?)

それはやめた方が良いだろ。ソラのことにも触れないといけなくなるし。

(へぇー将来の奥さんにまでそれを隠すつもりなんだぁ?)

おい!話が飛躍してるぞ!まだ付き合ってもないのに将来の奥さんって・・・・・・

そうであったら嬉しいけど、伝えるにしても勇気がいるものだ。

前世の記憶があることを告げると追放されたりしてしまうかもしれない。

まあ、これは僕が前世で読んでたラノベの設定だけど、追放まではされなくても距離をとられたりするかもしれない。

「カイさんって趣味とかあるんですか?」

(おおっとこれは気があるのではないですか?当事者のカイさんどう思います?)

おい!脳内で急に実況を始めるな!本当にこの状況を一番楽しんでやがる。

それにしても趣味か・・・・・・

この世界で趣味という趣味はないかもしれない。今までずっと魔法か、武術の訓練をしてたからな。

王都に出てからも休みの日は冒険者ギルドの依頼を受けたりしていた。

定期的に依頼を受けないとギルド証の効力が失われるようでランクが低ければ低いほどその期間は短くなるため一番低ランクの僕は結構さいさい依頼を受けなければいけなかった。

と言っても低ランクのため依頼はとても簡単なものばかりなのだが。

ランクが上がらないのはギルド証の効力を失わないように依頼を受けた場合はランクが上がらない仕組みのためである。

それだとルーキーがきついと思うかもしれないが、ギルド証は身分証になる分、最低限の仕事はしなければならないためしょうがないと思う。

今回は旅で2週間程度離れるためギルドに行けずギルド証の効力が失われるのだが、王家からの依頼として受けて来ているため大丈夫である。

それを受ける際、受付の人に訝しげな目で見られたけど、それはしょうがないことだ。

最低ランクの冒険者を王家が名指しで指名なんて普通はあり得ない。

ちなみにこれもギルド証の効力を維持するために受けているためこれでもランクは上がらない。

時間があるときに上げようとは思っているのだが、正直面倒くさい。

初めはゲーム感覚でと思っていたが、思っていたよりも雑用が多くやる気がおこらずギルド証の効力を失わないようにするだけでお腹いっぱいだった。

「もしかしてないですか?」

長い間考えすぎて不安にさせてしまったようだ。

「趣味と言える趣味はないかな」

正直に言うことにした。

「私は料理とファッションですかね」

「そうなんだ」

確かにマイの料理は美味しい。それに今まで触れないようにしていたが、服もとても似合っている。

なぜ触れにないようにしてたのかって?それはそのことを考えるとマイに話すべきか悩んでしまうからである。

どこまでその話題に触れて良いのかわからない。それが今まで触れてこなかった理由だ。

『・・・・・・・・・』

また沈黙に戻ってしまった。

これは明らかになるほどと言ってしまった僕のせいだ。

もう少し話が繋がるように返せば良かった。

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