25. 決闘(2/3)
第四界樹木魔法 大樹縛」
先に仕掛けたのはヴァイトだった。
素早く魔法を詠唱すると幾多もの大樹がまるで生きてるかの様にうねりながらケイターに迫る。
「第五界風魔法 鎌鼬」
腰を落とし両手に魔力を蓄え、腕を振ると風の刃が発生し、迫りくる大樹を次々に切り裂いていく。
「どうしたこんなもんか!ジジイ!」
ヴァイトの魔法を凌ぎ切り、余裕を浮かべたケイターであったが、魔法が激突している隙に樹木を足場に高く飛び上がったヴァイトが上空から現れる。
「クソ!」
「血操魔術 創刀
第一界支援魔法 自己強化」
予想外の強襲に辛うじて横に飛ふ事で一撃を避けるもケイターのいた場所には大きなクレーターが生まれる。
「流石ヴァンパイヤ、パワーだけはあるみたいだな」
戦う前に浮かべていた見下す様な表情が消える。
「黙れ、お前からの賞賛などいらん」
再びケイターの顔に血管が浮かび上がる。
「奇襲すらも失敗したくせに偉そうに、、
第五界風魔法 風塵の羽衣
第五界風魔法 風塵の刃」
ケイターの周りを風が舞い、羽衣を形作るとケイターの身体が宙に浮く。
そして右手には見るからに高価な剣を持ち、その刀身も風魔法で覆う。
「今度は俺様の番だ!」
3次元の不規則な動きで空中を高速で移動し、右手に携えた禍々しい剣でヴァイトに襲いかかる。
「オラッ!」
剣と刀が激しく交錯する。
ヴァイトに魔法を詠唱する隙を与えない様に、間髪入れずに360度様々な角度から切り掛かるケイターにヴァイトは一歩も動くことが出来ず一見防戦一方の様な展開になる。
沸き立つ兵士の歓声を超えてもはや怒号と化した声が村に響き渡り、袖を握るルルの手に力が籠るのがわかった。
「ルル、大丈夫、ヴァイトは絶対にあんなやつに負けない」
ヴァイトの勇姿を見つめながらそっとルルの手に触れると次第に力が抜けて行くのがわかった。
俯いていたルルの視線が戦う2人を捉えたその時、ヴァイトが動く。
僅かな動作で迫りくる幾多もの猛攻を凌ぎ切られている状況に痺れを切らしたケイターがほんの僅かに大振りに剣を振るう。
一見何の変哲もない斬撃であったがその一瞬の隙はことこの戦場において致命的であった。
「あまい」
迫りくる剣を受け流すと返す刀でケイターの胴体を切り裂く。
「グァッ」
噴き出る血飛沫と共に情けない声が口から漏れ出したケイターにさらに追い討ちをかける様に後ろ回し蹴りをお腹にクリーンヒットさせ大きく後方に吹っ飛ばすと、受け身を取ることもなく3回ほど地面をバウンドし5m程転がっていった。
「ケイター様!大丈夫ですか!」
取り巻き達が一斉に慌て出すも傷口を抑えながら、残った方の手でそれを制する。
「よくも、、よくも俺様に恥かかせてくれたな!ぶっ殺してやる」
顔が紅潮し怒りを露わにしたケイターがゆっくりと近づくヴァイト向かい魔法を唱える。
「第五界風魔法 双竜巻」
天井まで到達した竜巻が二つ左右から轟音を立てながらヴァイトに迫る。
「これを見ても余裕でいられるかな、
第六界風魔法 神弓」
弓を構えるポーズをとる。風が集まり、神々しいオーラを放つ風の弓が現れる。
「誇るがいい!俺様の最高魔法をくらってあの世に行ける事をな!」
威勢のいい言葉と同時に放たれた風の矢は手元を離れた瞬間ヒュッ、っとそよ風のが吹いたかの様な優しい音を出した。
しかし次の瞬間、音の壁を引き裂き、ソニックブームと轟音を放ち、地面を抉りながらヴァイトに襲いかかる。
「ヴァイト!!!」
「ヴァイトさん!!」
轟音の中絶叫する2人の声は隣にいてようやく微かに聞こえ、ヴァイトに届く事はない。
「あまい」
ヴァイトが何か呟いた気がした。
神々しい魔力を宿した矢がこめかみに迫る。
僅かな30cmの距離になった時ヴァイトの刀が上段から振り下ろされた。
両者が激突して激しい音を立てて何かが爆発する。
「……」
爆風は土煙を巻き上げ、アルとルルのいる場所にまで余波が押し寄せる。
声にならない不安や焦りや苛立ちが腹の底から吐き気の様にせり上がり、胸と食道、首の中を熱くする。
「ケイター様やりましたね!」
「流石ケイター様だ!」
「残りのガキ達もやっちまいましょう」
取り巻き達が騒ぎ出す中、ケイターは1人浮かない様子で土煙を見つめる。
体感にすると永遠に感じるほどの時間がだった後、次第に土煙は晴れていき、影が浮かび上がる。
「なに!?」
「バカな!!」
現れたヴァイトは全身の至る所に切り傷を残し、出血しているがどっしりと構えてと立っていた。
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