16.最後の修行
翌日からも思い通りに動かすことのできない魔力に悪戦苦闘しながら修行を進めていく。
すると三週間ほど経った頃ようやく、ほんの僅かであるが高所から低所に向けて水を流す様に魔力を動かすことができると、その次の日には当初の目標だった胸の辺りまで持ってくることに成功した。
「よし!」
「予想より早かったな、一度動かせるようになれば身体中に循環させる事は難しいことじゃ無い。っと言うことで来週までに一周出来ようにしとけ、そしたらその後から高純度の魔力を練るため修行、練魔に移る」
「了解!」
魔術の習得に向けて進んでいることを強く実感し気合が入る。
一度動かすコツを掴むとヴァイトが言っていた通りスムーズに動かすことができるようになり、約束どうり1週間後には全身を一周させることが出来るようになった。
「ハァハァ、よし成功したぞヴァイト」
息もたえだえの中歓喜の思いを抑え込み、次の修行を急ぐ。
「相変わらずせっかちだな、今日は休め、と言いたいところだがまだ時間もあるし一時間ぐらい休憩したら練魔の修行に入るか」
軽食を食べ、休息を取ったのちヴァイトが練魔についての説明を始める。
「これから行う練魔は最初に話した高純度の魔力を抽出して練る魔術の基礎で、魔法の威力、効率共に上げることが出来る。その上で俺がお前に教える最後の魔術だ」
「練魔の説明は大丈夫だか、これで最後ってどう言うことだよ、まだ正直全然強くなれている実感がないぞ」
「これから先は実践できるレベルまで自分自身で今までとこれから行う修行を繰り返して練度を上げるしかない。後は俺が森に連れて行けると判断したら俺の狩に帯同させて実践訓練だ。分かったか?」
「そう言うことか、了解した。早速練魔のやり方について教えてくれ」
「まあ修行自体は今までと大きく変わるところはない。坐禅を組んで自分の中の魔力源にある魔力の属性を感じ取って、求めている属性魔力を抽出して練り固めるだけだ。これは探魔、周魔と違ってゴールが分かりやすいわけじゃないから感覚の話になるが集めた属性魔力のうち七割が求めている属性魔力だったらひとまず大丈夫だ。説明は以上だ。初めろ」
ヴァイトの指示を受け坐禅を組み数えきれない程見てきた禍々しい魔力の塊と体内で対峙する。
魔力を掬おうと試みても周魔の時と同様手からは簡単にすり抜けて捉える事はできない。
今度は体内で魔力の流れを作り少量の魔力を魔力源から離れた位置に移動させる。
その中から毒属性以外の魔力を探してみるも不純物の魔力はそこかしこに混ざりあっていて、泥水に混ざる砂を箸で一つ一つ排除していく様に一向になくなる気配がないまま時間が過ぎていく。
周魔の時と同様集中力、魔力共消費し、両方共に底を尽きると息も絶え絶えで後ろに大の字に倒れた。
「ハァハァ、なんだこれ、、途方もなさすぎる」
「これも周魔同様慣れだ。何か上手く行きそうなアイディアを実践し続けるしかない」
その後も途方もない作業続けつつ新しいアイディアを試して行うこと1ヶ月、遂に属性魔力と不純な魔力を水と油の様に分離させまとめて除去することに成功する。
「これで魔術の基礎は終了だ。後は実践で使えるまで訓練を続けていけ」
「ああ分かった。ヴァイトそれともう一つお願いなんだが俺に剣術を教えて欲しい」
珍しくアルが頭を下げた事に少し驚きの表情をのぞかせる
「もちろんいいがビシバシ指導するから覚悟しとけよアル、ハッハハハ」
ヴァイトの大きな笑い声が訓練場内を包み込む。
そうして周魔と練魔の訓練に剣術も加わりさらに過酷な修行行うこと3ヶ月。
季節は冬から春に移り変わりアルも14歳の誕生日を迎える。
そしてそれは即ちあの日から一年がすぎたことを意味した。
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