24.決闘(1/3)
倒壊し燃え上がる家屋、動かなくなったルヴァン村の人達、重々しい重厚な鎧を纏った兵士にローブを纏った魔法師を率いる軍隊、そしてその中に1人一目置かれる様に真っ白なローブを羽織ったリーダーらしき男が軍人達の中心で四つん這いになった人の上に腰を掛け、足を組み、偉そうにふんぞりかえっていた。
「そんなコソコソしてないで姿を見せろ」
「……!」
リーダーらしき男の一声で一瞬隠蔽魔法の効果が切れたかと錯覚したが、その男の一言で周りの軍人達が慌て出した事で、その男だけが隠蔽魔法を看破したことがわかる。
「貴様らがこの村を、皆を殺したのか」
隠蔽魔法を解除しヴァイトが普段発することのないドスの効いた声で尋ねる。
「他に誰がいる?」
ヴァイトの問いかけに当然だろ、っと言わんばかりに男は憎たらしい笑みを浮かる。
「何故だ……!なぜそんな酷いことができる!!俺達がお前達人間に何かしたか!」
「何故?そんなのお前らが吸血鬼だと言う以外に理由が必要か?」
「……それだけの理由で罪なき者をお前達は殺したのか!」
こちらを馬鹿にした様子で立ち上がると男の羽織る真っ白なローブの胸元にきらりと光輝く黄金のバッチが姿を表した。
「お前…まさか!」
その見覚えのある黄金のバッチにアルの声が漏れる。
王国に属する魔法師は低級魔法師、中級魔法師、上級魔法師、に分類され、それぞれローブの色が赤、黒、白となっている。
そして上級魔法師の上位8人だけがそのさらに上の位である宮廷魔法師を名乗ることが許され、その者には黄金に輝く番号が刻印されたバッチが贈呈される。
「俺様は宮廷魔法師第8席ドナルド•ケイターだ。冥土の土産に覚えておけ」
「ドナルド…ケイター………」
その名はアルの記憶の奥底に沈澱していた昔の記憶を呼び覚ます。
ドナルド家は水の都であるポンガを統治する大貴族であり、数々の有名な魔法師を輩出してきた名家である。
そしてこの男もその名に恥じる事のない優秀な魔法師として昔からその名を国内に響かせていた。
不遜な態度で自身の身分と名前を名乗るケイターに怒りは頂点を超えヴァイトと共に奴に襲い掛かろうと魔法を詠唱しようとした時、ケイターが声を上げる。
「うごくな!」
ニヤニヤと不気味な笑を浮かべると先ほどまで四つん這いになりケイターに座られていた男が立ち上がりケイターと2人の間に姿を表す。
「レ…レオ……ンさん?」
身体中に拷問された後が惨たらしく残され、俯き目にに光が無く廃人の様だが間違いなく、それはレオンであった。
こちらの反応を面白がり盛大に笑いながらケイターが話し出す。
「やっと気づいたか、良かったな生き残ってる仲間に最後に会えて、まあこいつはうちの隊の副隊長によって精神魔法を受けて洗脳されてるがな、キャッハハハハ!」
ケイターにつられ周りの人間達も一斉に笑い出す。
「俺は優しいから特別に教えてやるが精神魔法は使い手が死んでも洗脳が解けることは無い。つまりうちの副隊長を殺そうとしても無駄だから、こいつの命が惜しければ下手な行動はするなよ」
王国軍のあまりの卑劣な行動に握ってる拳に力が入るあまり手のひらに爪が食い込み血が流れる。
俺達が怒り狂っても動けずにいる状況を面白がりケイターはさらに話を続ける。
「それにしても傑作だったぜこいつが捕まった時は、俺達と対面した時は威勢よく反撃してきたくせに、いざこいつのガキを人質にとった事を知らせるとすぐに戦意喪失して自分から土下座し始めてそんなことで助けるわけもないのに本当馬鹿だよな、それにこの村の奴らも全員人質をとってると分かるや否や反撃をやめて間抜けズラで赦しを乞うてきて、吸血鬼って聞いて身構えていたけど拍子抜けしちまったよ」
終始レオンさんやルヴァン村の皆んなを馬鹿にし、嘲笑し話姿に全身に虫唾が駆け巡る。
今にも奴の顔面をぶん殴りたくなる気持ちをほんの少し残った理性で踏みとどまらせている中、視線をレオンさんに向ける。
すると、未だに虚な目をしていて、廃人の様に俯いていたが、僅かに、だけれど、確かにレオンさんの瞳から小さな一粒の涙が静かにこぼれ落ちた。
「黙れ外道!!!」
奴の前に駆け出そうとした瞬間、意外にも先に動いたのはヴァイトだった。
「貴様らの様な下衆な人間が軽々しく我が誇り高きヴァンパイヤの名を口にするな!!」
ヴァイトの魂の叫びは村中にこだまする。
「下衆…だと…?!おいジジイ誰に向かって言ってんだ、まさか崇高なドナルド家の長男であり、宮廷魔法師8席である俺様のことじゃないよな?」
頭に青筋を浮かべたケイターが怒気のこもった声で尋ねるも、ヴァイトは態度を変えることなく、静かに一歩踏み出し、奴を鋭い眼光で捉える。
「ふざけたこと抜かしてくれるじゃねぇかジジイ、おいクリスやっぱりこいつは俺が直接駆逐する、他の奴らも手を出すなよ」
すると奴の後ろから先ほど副団長と呼ばれた男が飛び出してくる。
「ケイター様、それでは万が一のことが……」
「おい貴様、俺が負けるとでも思ってるのか?」
「め、滅相もございません!ケイター様が負けることなどあり得ません!」
眼光に気圧され、焦った様子でクリスは元いた場所に下がると、ケイターは満足そうにヴァイトに視線をおくる。
「良かったなジジイ、他の吸血鬼共と同様にリンチにする予定だったが気が変わった。お前は特別に俺の手で葬り去ってやる」
そう言うとケイターは真っ白な手袋を脱ぎ地面に叩きつける。
アルはその仕草を見てそれが貴族の一対一で行う決闘の際に用いられる宣戦布告の合図であることを思い出した。
「簡単には殺してやらねーから安心しろジジイ」
ケイターの気味の悪い視線がヴァイトを捉える。
「御託はもういい、どのみちお前らは1人残らず殺す」
両者から凄まじい殺気が放たれた。
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