19.外出

 翌日からは狩りと修行を並行して行い、その生活にも慣れ3ヶ月が経ち、夏の日差しが強くなってきた頃、図書館でルルと今後の事を話していた。

 「アルくんはいつまでこの村に居てくれるの?」

「ヴァイトとルルのおかげで魔術に魔法、剣術と成長できたからな、これからはアイツの情報を集めつつ今年中には出ていく予定だ」

ルルは机に目を落とし、悲しげな表情を浮かべる。

「そっか…そしたら一つだけわがまま言ってもいい?」

 ルルが初めて口にするお願いという言葉に驚きつつ、期待に応えるため体に力が入る。

「もちろん。今まで散々ルルにはお世話になってるし俺にできる事ならなんでもやらせてくれ」

 ルルの顔が綻ぶ。

「今度の7月7日私と七星祭に行ってくれない」

「七星祭?」

「そう七星祭!七星祭はね7年に一度、7月7日になった瞬間に夜空に揃う7つの流星を祝福したお祭りなんだ」

「そんなお祭りがあるなんて知らなかった。でも一緒に行くだけでいいのか?」

 「うん!昔本で読んでずっと行きたいと思ってたの。だからアルくんが良ければ一緒に行きたいな」

「そうだったのか。俺で良ければ是非行かせてくれ!」

 お願いを了承されたことに安堵した後、満面を笑みを浮かべるルルと誕生日の予定を決めると、その日は解散した。

 家に帰るとヴァイトがいつもの様に食事の用意をしていた。

「ヴァイトちょっと話があるんだけどいいか?」

「どうした?」

「今度七星祭っていうお祭りにルルと行ってもいいか?」

「ああ、いいぞ」

 こちらに背を向け食事の用意をしながら平然と答える。

「そんなあっさり決めていいのか?」

「別に街に行くことは禁止されてるわけじゃ無いからな、決まりだから一様街までは俺もついて行くがその後は2人で勝手にしろ」

「付き合わせて悪いな」

「そのぐらい大したことじゃねーよ、それより7月7日だけでいいのか?」

「え?」

「いや、ほらルルの誕生日祝いで街に行くならプレゼントの一つや二つ買っておいた方がいいだろ」

 ヴァイトからの思わぬ提案に困惑してしまう。

「確かにプレゼントのお返しはしようと思ってたけど、そんな頻繁に街に行っていいのか?」

「だからそんな事気にしてんじゃねーよ。そんなの幾らでも俺の方で話つけといてやるから大丈夫だ」

ヴァイトの気遣いに頭を下げお礼をいう。

「そしたら善は急げって言うし明日街に行くか!」

「そんな急遽行けるのか?」

「確か明日ちょうどレオンが子供連れて遠くの街に行くらしいからそれに帯同させてもらおう」

 あれよあれよと話は進み、明日は狩りを休止してプレゼント選びとお祭りの下見を兼ねて街に行くことになった。

 

 翌日はいつもより早くに起き、支度をして2人で村の入り口に行くと既にレオンさんとその息子のエドワード君が待っていた。

「いきなり押しかけて街に行くのに帯同させろなんて言い出しやがって、こっちにも準備ってもんがあるんだよ、全く、、」

「無茶言ってわりぃな。まあ今度なんかお礼するから許してくれよ」

出発前からご機嫌斜めのレオンさんにヴァイトが謝る。

「すいません俺の方が無理に頼み込んだんです」

「みんなでいる方が楽しいからいいじゃん!そうでしょパパ!」

 「ったくまあ子供の願いは叶えてやるのが大人の仕事だからな、今回は多めに見てやるよ。ほら、時間がないんださっさと行くぞ」

 なんだかんだで子供には甘いレオンさんに許しをもらい4人で洞窟内に作られた厩舎に向かい、馬を2頭拝借して村を出た。

 日が落ちて間もない薄暗い森の中を馬が北東方向に物凄い速度で疾走する。

 暗くて足元も不安定な地面でも平気な様子で走る馬に驚きながらヴァイトの背中に振り落とされない様必死で掴まる。

 走ること4時、森を熟知している2人のおかげで特に強力な魔獣と出会うこともなく無事に森を抜ける事ができ、抜けた先に広がる草原をさらに直走る。

「まさか何ヶ月も彷徨ってた森を4時間で抜けられるとは思ってなかった」

「ワッハハ、こいつらは一見ただの馬だがナイトホースっていう立派な魔獣だからな、これぐらいの距離ならすぐだ」

 「魔獣だったのか、、道理で早いわけだ」

「ちなみに名前はポロだ」

ヒヒーンと鳴いて走りながら返事をするポロに感心していると遠くに城壁が見えてきた。

「もうそろそろ街に着くぞ」

「了解」

 城壁は街全体を囲う様に出来ており高さも10m程ある為訪れるものに威圧感を与えている。

 城壁の前に着くと2人の門番による検問を受けるがレオンとヴァイトが慣れた様子で旅商人のフリをして偽りの身分証を提示すると、簡単に街に入る事ができた。

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