26.決闘(3/3)

「……バケモンが、、」

 先程までの威勢がケイターから消え去る。

「この程度の攻撃、レオンが受けた苦痛に比べれば屁でもない」

 そう吐き捨て、歩みを進めるヴァイト。

 ケイターの顔から噴き出る汗。

「ウォッーーーー!!」

 狂乱した様子でヴァイトに切り掛かるもケイターであったが最も簡単に受け流されてしまう。

「なに!?」

「くたばれ外道」

 真紅の刀が切り上げられ、ケイターの右腕が宙に舞う。

「お、俺様の、俺様の右手がー!」

 右肩を抑え、地面に伏せて絶叫するケイターの喉元に刃先がつけられてツーッと鮮血滴る。

「最後に言い残すことはあるか」

「や、やだ、、まだ死にたくない死にたくない死にたくない・・・」

頭から降り注ぐ死刑宣告に無様に震えながら必死に首を振り、呪文の様に死にたくないと唱える。

「そうか、、死ね」

「まっ、まった!」

 刀を引き首を刈ろうとした時、ケイターが叫ぶ。

「生かしてくれたらそこの吸血鬼の洗脳を解いてやる!」

ヴァイトの刀が寸前のところで静止する。

「それに、それに、、俺さま、、私が国王に直接今回の吸血鬼討伐の中止を申し出てやる、、申し出ます」

2人の視線が交錯する。

「ですからこの通り……命だけはどうか、どうか助けてください」

 震えた声で地面に頭を擦り付ける。

 

「…わかった。今すぐ洗脳を解け。話はそれからだ」

「あ、ありがとうございます。クリス、こっちにその方と一緒に来い!」

クリスがレオンを連れてヴァイトの前までやってきた。

「さっさと洗脳を解け!」

 「は、はい!

 第五界精神魔法 解除」

 レオンさんの目に光が灯る気がした。

「レ、レオン大丈夫か!」

 心配するヴァイトの近くまでゆっくり近づくレオンさんを見ながらどこか違和感を感じる。

「ヴァ…イト、離れ…ろ」

「…え?」

 レオンさんがそう呟くと、再び目から光が消え、ヴァイトに襲いかかる。

「ぬかったなバカが!!

 第五界風魔法 風神の突牙」

 レオンさんに気を取られている一瞬の隙に後ろに飛び退くとケイターのでから放たれた風の槍が2人ごと貫く。

「グァッ」

 レオンさんの胴体には大きな穴が空き、ヴァイトもら右肩先が抉られなくなる。

「屑が!」

「そういきがっていられるのも今のうちだ」

 再びケイターの腕の前に先ほどの魔法が構える。

 「同じ技を2度もくらうか!」

 ケイターの顔に不気味な笑みが浮かぶ

 「まさか、だがこっちはどうかな」

 すると構えていた左手をヴァイトからルルの方に向ける。

「貴様ーーー!」

「死ね!」

 放たれた風の槍が迫り来る中、咄嗟に標的にされ、動けないルルを庇う様にアルが前に出る。

 しかし、それよりも僅かに早くヴァイトが射線に入りった。

 風の槍はヴァイトによって軌道が逸らされアル達の横の壁に激突する。

「ヴァ、ヴァイト…さ…ん」

 震えながらヴァイトの名を呼ぶルルの目線の先を追うようにゆっくり振り返ると、そこにはレオンさんと同様お腹にぽっかりと穴の空いたヴァイトが立っていた。

「ハッハハハハーー!!吸血鬼は本当に仲間思いで泣けてくるなぁ!」

 声高らかに笑うケイターを横目に、目の前で起こったことが受け止められず呆然と立ち尽くす。

「嘘……嘘だよなヴァイ……ト、ヴァイトーー!!」

「こっちへ来るなアル!今すぐルルを連れてここから逃げろ!!」

 こちらに視線を送ることなくヴァイトが声を張り上げる。

「そ、そんなことでき、」

ヴァイトが僅かにこちらに振り返えりいつもの優しい笑顔をこちらに向ける。

「約束しただろアル、さあ行け」

「……!!」

 自分の唇を血が出るほど強く噛み締める。

 「おいおい、なに勝手なこと言ってんだ、逃すわけないだろ、お前らぼさっとしてないで捕まえろ!」

「「は!」」

 ケイターの声でこちらに一目散に兵隊が向かってくる。

「お前らの…相手は俺だろ…

 第六界樹木魔法 守護者の樹門

 第六界樹木魔法 樹海の番人」


 息も絶え代のヴァイトが唱えた魔法により洞窟にいたアル達と村を重厚な樹木の門で分断する。

「お、おい!ヴァイト!ここを開けてくれ!!おい!……頼むよ……」

 どれだけ叩いても鈍い音を響かせるだけの門は2人をただそこで立つことしか許さなかった。

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