第12話 攻撃手順

「諦めの悪い錬金術師」となった私は、異世界の政府規制に対応できる安価な魔法の処理剤「変身手榴弾」で処理しても、CODや亜鉛濃度が政府規制値ギリギリのときがあり、さらに「変身手榴弾」を投入しても濃度が下がらなかったことから、一部の「悪役」オルガや「悪役」アンモにしか対応できないためではないかと考え、さらに、取り逃がした残りの「悪役」オルガや「悪役」アンモを捕らえるために、静電力を働かすことのできる、安価な別の原子を使うことにしました。

 原子を合体させた分子の並び方を変えたゾルと呼ばれる液体を、少ない添加量で「悪役」を引き寄せ、固体のゲルに変える魔力を持った「投網ゾル」を開発しました。その性能はプラスの電荷を持った「悪役」オルガや「悪役」アンモにまとわりついて、あらかじめ「変身手榴弾」に入れて、ばらまいておいた「鎖撒菱(くさりまきびし)」と合体するとともに、「ホームレス」をアルカリ水酸化物にした「スライムスラッジ」にへばりつかせることができ、政府規制値のCODや亜鉛濃度の半分以下に出来ることが分析結果から分かりました。

「悪役」オルガや「悪役」アンモ以外に、アルカリ処理前の「ホームレス」達にもまとわりつきます。しかし、「ホームレス」達はこの魔法の処理剤「投網ゾル」より、アルカリで水酸化物にした方が安価で済みます。また、「投網ゾル」は添加量が少量なので、アルカリ水酸化物が存在していないとへばりつくところを失って、凝集する効果がなくなります。あらかじめ、「ホームレス」達をアルカリ処理した後で「投網ゾル」を使うことが「悪役」オルガや「悪役」アンモを安価に封じるために必要となります。


「諦めの悪い錬金術師」となった私の安価な攻撃手順は、次のようなものになりました。

 はじめに、排水のpHを酸性にすることで、触手を伸ばして誘惑している「悪役令嬢」ソープやユズ達の持っているイオンを「失神・麻痺」させて手出しのできない分子の状態にさせ「金縛り」にします。

 そうすることで、「ホームレス」達は束縛から解放されます。

 次に、金縛りした「悪役令嬢」達の周囲を偽金のカルシウム、マグネシウムや鉄イオンで取り囲んでから、pHを上げて行き「悪役令嬢」達が触手を伸ばしてイオンに変わる時、「ホームレス」達に触手が伸びる前に「政府規制」対象外の偽金イオンと合体させることで「悪役令嬢」達の触手を封じ込みます。

 こうして、「ホームレス」達をアルカリで水酸化物「スライムスラッジ」に変身させた後、「政府規制」に含まれる、りん、ほう素、ふっ素などの「反逆イオン」マイナを一網打尽に捕まえるため、マイクロカプセルに包み込んだ「変身手榴弾」を投じます。

 さらに、「投網ゾル」を投じます。「投網ゾル」は変身手榴弾に忍ばせておいた「鎖撒菱」と魔術で合体して、「ホームレス」キンタやキンゾウを閉じ込めた「スライムスラッジ」にへばり付かせるときに、「政府規制」の有機物「悪役」オルガやアンモニア化合物「悪役」アンモ達を巻き込み退治します。

 ところが、極道系薬剤会社では、めっき製品を作るための薬剤の中から、「諦めの悪い錬金術師」となった私の魔術でも退治できない、冷酷無慈悲な「魔物」になる薬剤をめっき工場に送り込んでいました。


 芥川龍之介の侏儒(しゅじゅ)の言葉」の中で、「光を失ったヘラクレス星群も無辺の天をさまよう内に、都合の好い機会を得さえすれば、一団の星雲と変化するであろう。そうすれば又新しい星は続々と其処に生まれるのである。」と言っています。


 これまで対戦して消滅させた妖怪とは別の魔術で攻めてくるようです。


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