第7話 呪われた排水
排水の中で、「悪役令嬢」達は過去世界で、重要な役目を担っていました。
めっきする前に、品物をきれいに洗浄しておかないと、「めっきがはがれて」しまいます。
はがれを防ぐ洗浄液には、脱脂液と酸洗液があります。それぞれ、役目を終えて水洗槽で、品物にまとわりついた液が薄められます。それらの水洗水も排水となり「妖術・呪い」がかけられ、「絶世の美女」クレオパトラのような「悪役令嬢」達となって、めっき排水に合流します。
中でも、「悪役令嬢」ソープは過去世界で脱脂成分のアルカリ、界面活性剤、キレート剤のほか素材に付着していた油や防錆成分が含まれて厚化粧しています。強力なマイナス電子を持っており、姉御肌の浸透力があって、プラスの金属の臭いをかぎ分けてすぐに声をかけ、仲良くなって絡み付き快楽に誘い込みます。転生して「スライムスラッジ」になるときも未練がましく、油分が多いと別れ際に浮上して分離するなどの悪さもします。
「悪役令嬢」レモンは一般的に、過去世界で酸洗成分の塩酸のほか、めっき素材に生じていた赤錆を溶かした鉄イオンを捕虜として抱えています。金属や酸化物は「悪役令嬢」レモンの妖気で、電子を身包み剥がされメロメロに溶かされてしまいます。捕虜として抱えられていた鉄イオンはアルカリ性に近づくと妖精となって、めっき液から垂れ落ちて落ちぶれた「ホームレス」キンタより先に、水酸化物になるか、周囲の「悪役令嬢」達と合体するなどして「ホームレス」キンタが政府規制値にならないようにするための良心的な働きをします。
過去世界の亜鉛めっきなどでは、耐食性を高めるため後処理が行われます。その工程も、水洗槽で品物を水洗します。品物にまとわりついた液が薄められます。それらの水洗水も排水となり「妖術・呪い」がかけられ、めっき排水に合流します。
過去世界のとき、その後処理がクロム酸だったものは、別途、還元処理されてから合流し「ホームレス」キンゾウに変身します。しかし、クロム酸は有害なため、ヨーロッパが決めたRoHS指令では六価のクロムの使用製品が規制されて、その対策として、三価クロム化成処理という方法が開発されました。
過去世界のとき、その三価クロム化成処理液は「妖術・呪い」がかけられて「悪役令嬢」ユズに変身します。その成分は企業秘密で、謎のベールに包まれていますが、三価クロムイオンのほか、無機系ではシリカ、セリウム、有機系ではキレート剤や酸化・還元剤など含まれていて、三価クロムイオンなどの一部は「ホームレス」キンゾウになるものもいますが、その他の多くはマイナス電荷を持っていて、プラス電荷の金属の臭いがすると誘惑して絡み付き快楽に誘い込むものや転生しても沈降分離を悪くさせる悪事を働いたり、酸化させたりするなど一癖も二癖も持っています。
このように、過去世界でめっき液は、「貴族」として金属析出やその光沢などの役割を受け持って羽振を利かせていたものの、水洗工程から流れ排水となって異世界にきた途端に、「ホームレス」に変身し、詐欺や欲望まみれの「悪役令嬢」など前・後処理の排水からやってきた妖怪達と合流することが原因で問題が発生します。
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