第10話 処理設備会社
異世界で排水中の「政府規制物質」に含まれる、リン、ふっ素、ほう素などの「反逆イオン」マイナが潜んでいると、リンとふっ素はカルシウム化合物を使う方法があっても大量に使わないと処理が難しく、ほう素に至っては「錬金術掃除人」ヨタやリョウではお手上げで、太刀打ちできません。また、電荷を殆ど持たない有機物「悪役」オルガは活性炭を使う方法しかなく、電荷の弱いアミン化合物「悪役」アンモなどは歯が立ちません。
これらを退治することは難しいのです。この政府はこれらの規制基準を作っても、退治する方法は会社任せでどうすることもできないのです。
これらを処理するために、排水処理設備会社はめっき設備より高額なイオン交換という「最強の防衛設備」を備えれば安心して操業できると宣伝しています。「補助金を使えば安く買えますよ」これは設備会社が勧誘に使う殺し文句です。
一方、薬剤会社ではめっき製品を作るための「貴族用薬剤」を販売しているものの、異世界に流れ出た「政府規制対象」薬剤もあることはありますが、高額なものや悪臭を放つ危険なものです。「反逆イオン」や「悪役」オルガやアンモなどの「政府規制」に対処できる「魔術薬」は販売されていません。
そのため、高額の設備や薬剤を購入することが出来ない通常の「錬金術掃除人」では、お手上げの状況のため、政府は「暫定基準」として、ほう素、ふっ素、亜鉛など緩い基準にしています。
高度成長の頃、過去世界で誇っていた技術立国も、異世界では対処する安価な打開策を示すこともできず、嘆かわしい限りで、異世界に勢いよく転移した弾みで「ボンクラ国家」に転落してしまったようです。
芥川龍之介の侏儒(しゅじゅ)の言葉」の中にある“修身”の一説に述べられた”道徳”を“高額な技術”に置き直すと、
「“高額な技術”の与えたる恩恵は時間と労力との節約である。“高額な技術”の与える損害は完全なる良心の麻痺である。・・・“高額な技術”は便宜の異名である。“左側通行”と似たものである。・・・妄(みだり)に“高額な技術”に反する(挑戦する)ものは経済の念に乏しいものである。妄(みだり)に“高額な技術”に屈するものは臆病者か怠け者である。・・・我々を支配する“高額な技術”は資本主義に毒された封建時代(過去世界)の“高額な技術”である。我々はほとんど損害の外に、何の恩恵にも浴していない。」となります。
異世界の政府規制対応薬剤に挑戦することは経済の念に乏しいものがすることで、残念ながら、挑戦せずに屈する、臆病者か怠け者しか見当たらない世界に転移・転落してしまったようです。
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