第9話 処理の手順
「錬金術掃除人」の中には、排水処理を勉強して、「悪役令嬢」達を誘惑できないようにする「金縛りの術」が使える人もいます。読書家の「錬金術掃除人」リョウは、最初に、排水のpHを酸性にすることで、触手を伸ばして誘惑している「悪役令嬢」達の持っているイオン状態を「失神・麻痺」させて手出しのできない分子の状態にさせ「金縛り」にします。そうすることで、「ホームレス」達は束縛から解放されます。次に、金縛りした「悪役令嬢」達の周囲に偽金のカルシウムやマグネシウムといった「政府規制」に影響のないイオンや鉄イオンで取り囲んでから、pHを上げて行き「悪役令嬢」達が触手を伸ばして再びイオンに変わる時、「ホームレス」達に触手が伸びる前に「政府規制」対象外の偽金イオンと合体させることで「悪役令嬢」達の触手を封じ込んでしまいます。
こうすることで、「錬金術掃除人」リョウは「ホームレス」キンタやキンゾウを水酸化物という名の「スライムスラッジ」に変身させることができるのです。この時、「悪役令嬢」レモンに捕虜として捉えられていた鉄イオンは妖精となり、水酸イオンと合体して、「スライムスラッジ」を重くさせながら合流することで、上澄の処理水を規制値以下の濃度にすることに一役買って出ます。
ところが、このように、せっかく「スライムスラッジ」を作っても、水ときれいに分離せず、「スラリー」のように微細になってスルリと抜け出し、乳化して水と混ざってしまうことがあります。そうすると規制値を越えてしまいます。それを防ぐため、細かな「スライムスラッジ」を引き寄せることの出来る長い鎖を持った高分子凝集剤「鎖撒菱(くさりまきびし)」を撒きます。
以上の「錬金術掃除人」リョウの用いる方法が一般的とされていますが、このやり方でも「政府規制」に対応できない伏兵が潜んでいて、裏切られるのが現実です。
「錬金術掃除人」ヨタと同様、「錬金術掃除人」リョウのところにも、たくさん買っている高価な排水処理薬剤の会社から盆暮れの付届けがやってきます。薬剤会社は、おもてなしの仕方を心得てるので、注文量が減ることを避けるため、誠意のこもったおもてなしを心掛けています。顧客へのおもてなしがほどほどで済めば良いのですが、経営黒字で税金を納めるより、使った方がマシとばかり、時として、忠臣蔵の吉良上野介も喜ぶような付け届けの振る舞いがまかり通ることも珍しくもなく、そうなると長いものには巻かれ、どっぷりと浸かってしまいます。処理がうまくいかなくなった時には、その会社の高価な処理薬剤をさらに買うことになります。
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