第16話俎板の上の鯉
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「遅い時間に申し訳ない、いや、こういうことは早めに解決するのが我が家の方針でね」
「いや、大丈夫です。我々も真実とは違う噂に心を痛めているのです。さ、お掛けください。」
私とお父様、ホフマン伯爵家の親子と後ろに立っているもう一人は誰かしら?執事?
お父様、事実を話すなっておっしゃったけど…黙っていればいいのかしら…
どうしようと迷っていると、セレナ様がふわりと微笑みながら言った。
「王太子殿下の婚約者であるミレーナの実の妹があんなことをするなんて、私も本気で思っていないのです。」
…嘘よ…でも、まあいいわ。
「まあ、よかったですわ。セレナ様にそうおっしゃっていただいて…」
そうすると、何しに来たのか?思惑が全く読めないわ。
「でも、オレリア様?火のないところに煙は立たないっていうでしょ?だから、いつくかお聞きしようと思って。ほら最近学院に来ていらっしゃらなかったから聞く機会がなくて。」
白々しい
「新聞に”叶わぬ恋”と書かれていた件ですが…皆さんてっきり私という婚約者がいるヴィクター様に恋を?と勘違いしていらっしゃったように思うのです。私、実は叶わぬ恋とは、身分違いの恋かもしれないと思っていますの。どうかしら?」
話に乗れ!と、お父様が合図してくる。
「じ、実はそうですの?どうしてお分かりに?」
「そうなのですね!!ヴィクター様は隠れ蓑だと思ったの。よかったわ、勘が当たって」
見事に外れていますわよ…馬鹿な人
「でもそうなると私を貶める噂…あれは何かしら?と考えたの。もしかしたら、あなたの想い人が私のことを慕っていると勘違いして、あなたがやってしまった…ということでしたら納得ですわ」
お父様が、すかさず前のめりになる。
「すみません、ホフマン伯爵令嬢。娘は、実は…あなたのおっしゃる通り、勘違いをしていまして。想い人を取られたくないと…その…謝っても許していただけないと思うのですが、ここは恋をした愚かな娘とお許しください!!!」
頭がテーブルに着きそうな勢いで謝罪をする。私も頭を下げた方がいいのかしら。
「まぁ!また勘が当たったわ。そうでしたか、ヴィクター様じゃなければ…大丈夫ですわ。違っていたら名誉棄損で訴えようかと思っていましたけど…そうならば、ええ、私もそこまで狭量ではありませんから。許しますわ。」
優しい表情で許しを示す。はは、なんて簡単な女。
「いいのかい、セレナ。」
ホフマン伯爵がセレナ様に問いかける。
まとまりかけたのに、余計なことを言わないで!!
「ええ。それに、ここまで勘が当たったのですもの。最後の勘もきっと当たりますわ。」
えぇ…まだあるの…
「オレリア様、ずっと、あなた私たちの後ろを気にして見ていたわね。それはそうよね、この方、あなたの想い人ですもの!!」
…はぁ!?
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