第7話小鳥の末路②

*****



ヴェセリー子爵家に向かう馬車に乗る。見送りは誰もいない。


母は、あの日以来、体調を崩したままだ。兄弟もそれぞれの婚約者の家から婚約破棄され、父はその慰謝料の工面に寝る暇もない。兄弟にもだいぶ恨まれ、泣かれてしまった。   



ーまた、余計なことに巻き込まれるーと父に止められ、ミレーナ様に助けを求めることはできなかった。



『誇れるものはお金だけ』




イリック男爵家は一家で夜逃げをし、置いて行かれたマリーは娼館に行くという。

誇れるものは「豊満な体、口達者、化粧のうまさ」ということかしら。


ー私たちの家の商会が取引を取りやめたらどうなるかしら?ー


マリーが言った通りに取引を取りやめた…いや、伯爵家の商会が取引から手を引いた結果、破産したのはイリック男爵家の方だった。





ー品位はお金で買えませんからー

といったエイミーの家では、お金を払わずツケで買い物をしていたそうだ。伯爵家のいくつかの商会から一気に請求され、邸を売り、領地へ戻ることが決まったハサノフ男爵家。エイミーは、修道院に入るという。

誇れるものは「清貧さ」でしょうね。”祈りましょう”が口癖だったし、”男性に媚を売って”とハフマン伯爵令嬢様を馬鹿にしていたこともあったもの。だから修道院か…






私は「子だくさんの家系」若さと丈夫な体…



…今まで大丈夫だったのに急にどうして…

未来の王太子妃に気に入られようと振る舞っただけじゃない!それがいけないことだったなんて…


だとしたら、なぜ誰も教えてくれなかったの!教えてくれたら…教えてくれさえしたら、あんなことしなかったのに…。



ー本当ですわね。私なら、婚約者様に嫌がられていたら、傍にいられませんわ。ー



ああ、口は禍の元だわ。




*****



ーsideセレナー





「お父様、お手を煩わせてすみません」


「言われた通り書いたが、あれでよかったのか」



男爵家それぞれに『誇れるもの』に合った提案をした。



「ええ、どの男爵家も提案に乗ってくださり満足です」


「くくっ、そうか。お前の婚約者様は何と?」






それぞれの令嬢が、新たな道へと進んだあと、

ヴィクター様が『なんか、ざまぁっぽい展開になった』と、興奮した様子で私に熱心に話してくださった。



「…でも、私の抗議の文のせいで彼女たちの人生が狂ってしまったと思うと…なんだか、悲しくなる。」


「そんなことをおっしゃらないでください。私まで悲しくなりますわ。ヴィクター様が、私の扱いが謂れなき非難であったことを誰の目にもわかるように証明し、汚名を晴らしてくださったのです。彼女たちの処遇は、それぞれの家が決めたもの。報いを自分の身に受けただけ、処遇は然るべきものですわ。」



「うん、そうだね。くよくよしていられない。次も私に任せて、セレナ」

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