第6話小鳥の末路①

*****


ーside男爵令嬢の1人ー




「…この抗議の文の内容に心当たりはあるのか?」


お父様に呼び出され執務室で話を聞く。やはり、アルマンド公爵家から抗議が届いたのね。



「そ、その、ホフマン伯爵令嬢には謝罪を受け取ってもらいました…」



謝罪を受け取ってもらえたのだもの、傷は浅いはずだわ。



「なんということだ。令嬢とは、言葉を交わす仲だと聞いていたのに。お前は、ホフマン家を敵に…ああ、我が男爵家は終わりだ…」



え?お父様は何をおっしゃっているの?男爵家が終わり?


「…なんだその顔は。知らないのか?あのホフマン家だぞ!」



成金の伯爵家…ではないの?お金の力で王太子殿下の婚約者候補を手に入れたとミレーナ様から聞いたわ。



コンコンコン 執務室のドアがノックされる。



「入れ」


「旦那様、ホフマン伯爵家から文が届きました」


「やはりか…寄越せ」


執事から手紙を奪い取るように受け取ったお父様。読み進めるうちにどんどん顔色が悪くなる。



「お前も読め」

お父様は文を投げつけるように渡した後、頭を抱えソファにどさりと座る。





『アルマンド公爵家からの文で大体把握していると思うが、まあ、その通りだ。貴殿の娘は我が娘に「金しか誇れるものがない」そう言っていたそうだ。ああ、それに、我が家の商会が小さなもの…だったかな。なに、その通りだからそれはかまわない。


ただ、そういうことなら、貴殿の娘が誇れるものとは何だろう?ああ、そうだ。貴殿の家系は子だくさんだったな。よいことではないか。若さと丈夫な体。


一つ提案がある。我が商会の取引相手に後妻を探しているものがいる。ヴェセリー子爵だ。貴殿の娘を後妻にどうかな?前妻との間に子供ができず、跡継ぎを欲しているそうだ。


学院での出来事を見た貴殿の娘の婚約者がお父上と一緒に『縁を切るから、取引はやめないでくれ』泣きながら頼み込んできた。だから、大丈夫だ。婚約者はそのうちいなくなるであろう。


セレナは謝罪を受け入れたのだから、無理にとはいわない。なに、ただの提案だ。


我が家の小さな商会に価値がないのなら取引はいらないだろうか。原材料が手に入らないと貴殿の商会、投資回収できないぞ?繰り返して申し訳ないが「誇れるものが金」だったか。その金がなくて男爵家が終わらないとよいがな。』



嘘、婚約が…破棄される?あの優しい婚約者が?ヴェセリー子爵なんて嫌よ。カエルみたいなお顔をしているじゃない。


「っ!お父様、まさか、私を後妻になど…」


「するに決まっているだろう!ホフマン家の商会は店舗が小さいだけだ。ただの下請けではない。拠点は隣国にあり、商品の原材料の確保量、横のつながり、扱っている商品、全て一流だ。つながりが無くなったら我が一族は終わりだ。…お前が次の夜会に着る予定のドレスもホフマン家の商会に注文していた。まあ、必要なくなったがな。」



そ、そんな。



「敵に回してはいけない家だ。知らなかったでは済まされない。いや、違うな。敵に回してはいけないとかそういう問題ではない。お前は、貴族としてあり得ないことをしたのだ。お前ひとり切ることで男爵家が救われるのなら、提案に乗る。…勘違いするなよ、お前のことはさっきまで娘として愛していた。」

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