第5話うるさい小鳥たち

*****



「あら、ホフマン伯爵令嬢様じゃありませんか、アルマンド公爵令息様と一緒なんて珍しい。」


「本当ですわね。私なら、婚約者様に嫌がられていたら、傍にいられませんわ。はしたない。」


「お金しか誇るものがない人は、図太くできていますのよ、きっと」




来たわね小鳥たち。囀るならもっと美しい声で鳴けばいいのに

せっかく、ヴィクター様と学院でランチを楽しんでいたのに、楽しい気持ちが台無しだわ。




「まあ、せっかく話しかけていますのに無視だなんて。私たちの爵位が低いから馬鹿にしていらっしゃるのね。」


「品位はお金で買えませんから、仕方ありませんわ。心の狭さに神の罰が下らないよう祈って差し上げましょう。」


「お金持ちって言いますけど…いくつも持っているとはいえホフマン家が所有する商会は小さなものばかりなのでしょ?小さな宝石をいくつも持っていても大きな宝石の価値にはかなわないわ。私たちの家の商会が取引を取りやめたらどうなるかしら?」


誇れるものが無くなるわねと、笑い合う小鳥たち。




「いい加減にしないか!!」


おお、美形のヴィクター様が怒ると迫力があるわ。


「君たちはいったい誰にそんな言葉を言っている!私の婚約者だぞ?爵位の下の者がそんな風に…君たちも貴族だろう!」



そう、この人たち貴族ですの。

今まで注意などしてこなかったヴィクター様がお怒りだからか、男爵令嬢たちが、おびえているわ。周りもざわざわしだした。


「それになんだ。小さいとか大きいとか。どの商会だってそれぞれに価値がある!それにセレナへの態度にも、僕…私は怒りを感じているし、君たちの言動には目が余る。アルマンド公爵家として、これまでのことも含めてそれぞれの家に正式に抗議するから覚悟しておくんだ」



家に?困る…そんな…今まで何もおっしゃらなかったのに…学院は平等な場なのにと、顔を見合わせ青ざめさせている。



「しゃ、謝罪をさせてください」


男爵令嬢の一人が、震えながら訴える。




「セレナどうする?」

ヴィクター様が優しげな表情でお尋ねになる。ならば返答は一つ。




「謝罪を受け入れますわ。」



*****



「どうなさったのヴィクター様?」


うるさい小鳥たちがいなくなった後、ヴィクター様がいぶかしげな表情で何かを考えていらっしゃる。



「…なんだろう。思っていた『ざまぁ』と違う。これじゃあ、ただ注意して、謝られて許した…だ。セレナは優しすぎるよ、もっと怒ってよかったのに。」


「ふふ、ヴィクター様が私の代わりに怒ってくださったのですもの。嬉しいですわ。」



「セレナが嬉しいなら…うん、それでいいか!でも、ちゃんとそれぞれの家には抗議するよ。彼女たちもこれから態度を改めてくれるといいのだけれど。」


「そうですわね。」



ふふ、私に話しかける資格のない者たちが、私の前で口を開く。

度胸がある子たちだったわ。その大胆さは、残念ながら報われることはありませんけど。

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